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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
天華天明篇

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第5話「本部へ①」


翌日。


「閃くん、烈くん。頼んだよ」


トーマスは、出発を控えた2人に声をかけた。


用意されたキャリアには、すでにバサラヲとレンゴクが積み込まれている。


「はい、行ってきます!」


閃は元気よく答えた。


「行ってきます」


烈も続いて言った。


「気をつけて」


トーマスは笑みを浮かべ、2人を送り出す。


閃と烈はキャリアへ乗り込んだ。


やがて、発進準備が整う。


そして、2人を乗せたキャリアは、イギリス本部へ向けて飛び立っていった。



キャリア内。


「俺らってさ」


不意に、閃が口を開いた。


「ん?」


烈が閃を見る。


「オルフェに来て、もうすぐ3年くらいだよな」


「もうそんなに経つんか?」


烈は少し驚いたように言った。


「でもさ、他のオルフェに行くのって、今回が初めてだなーって思って」


閃は座席にもたれながら続ける。


「あぁ……確かにそうだな」


烈も頷いた。


現在、オルフェ研究機関の研究施設は、日本、イギリス、アメリカ、イタリアの4ヶ国に存在している。


日本とイタリアには、それぞれ1つ。


イギリスには本部のほか、第1支部と第2支部。


アメリカには第1支部から第4支部まで存在していた。


しかし、アメリカ第4支部はファイによって消滅。


そのため現在、オルフェが有する研究施設は全部で8ヶ所となっている。


もっとも、閃と烈が知っているのは、日本支部だけだった。


それは怜と音も同じである。


「他の施設にも、ファクターっているんだよなー」


「俺ら含めて、何人くらいいるんだろうな?」


烈が言った。


「かなり前に黒須博士に聞いた時は、22人って言ってた」


「今は30人くらいはいるんじゃない?多分」


もちろん、この30人という数には、ハーフファクターも含まれている。


そして、これから2人が向かうイギリス本部には、ファクターが5人いると聞いていた。


その5人がどんな人物なのか、2人は何も知らない。


何より、同じオルフェに所属しながら、日本支部以外のファクターと会うのは、今回が初めてだった。



やがて、キャリアはイギリス本部へ到着した。


「うおー!でけー!」


キャリアから見えるイギリス本部の姿に、閃は思わず声を上げた。


「さすが本部……」


烈も、その巨大な施設を見上げながら言った。


日本支部と比べても、明らかに規模が違う。


日本支部が地下を中心とした構造になっているのに対し、イギリス本部は巨大なビルを中心に構成されている。


さらに、地上部分だけではなく地下にも広大な施設が存在している。


ぱっと見ただけでも、その規模は日本支部の4倍以上は優にある。


やがてキャリアが着陸する。


閃と烈が外へ降りると、そこには数人のスタッフと、1人の男性が待っていた。


「初めまして」


男性が2人の前へ歩み出る。


「私は本部長のマーク・コールだ」


「日本からの支援、誠に感謝する」


「上矢 閃です。よろしくお願いします」


閃は挨拶をする。


「新井 烈です。お願いします」


烈も続いた。


2人は、マークとそれぞれ握手を交わした。


「キャリアと君たちのEDはこちらで移動させてもらうが、いいか?」


マークが尋ねる。


「ええ。構いません」


閃は答えた。


マークは頷くと、施設の方へ身体を向けた。


「では、案内しよう」


「はい」


閃と烈は、マークの後についてイギリス本部へと入っていった。



本部内。


中へ入ると、日本支部との規模の違いはさらに明らかになった。


広大なフロアを、大勢のスタッフやUBが行き交っている。


しかも、ここはまだ施設に入ってすぐのフロアに過ぎない。


「…………」


閃と烈は、その光景を前にぽかんとしていた。


そんな2人の様子に気づき、マークが口を開く。


「君たちは、本部に来るのは初めてか?」


「初めてです。日本支部しか知らなかったので、びっくりしてます」


閃は素直に答えた。


「そうか」


その反応に、マークは少し口元を緩める。


「所詮、“名ばかり本部”だがね……」


マークは自嘲気味に呟いた。


かつて発生した、オルフェ襲撃事件。


オルフェ各地の施設が襲撃され、その被害は甚大なものだった。


当然、イギリス本部も例外ではない。


そんな中、唯一ほぼ無傷だったのが日本支部。


事件後、当時の総帥エドワードと、副総帥であり現在の総帥であるトーマスは日本支部へ移り、そこを実質的な活動拠点として使用するようになった。


当初は、あくまで一時的な措置だった。


しかし、その後——


ファクターズの存在、それに伴う専用EDの開発。


日本という国そのものの安全性。


様々な要因が重なり、現在に至るまで日本支部がオルフェの“実質的な本部”として機能している。


そのため、正式な本部であるイギリス本部は、“名ばかり本部”と揶揄されることも少なくなかった。


それでも、オルフェ全体で見ても、ここが重要拠点であることに変わりはない。


施設の規模も、所属する人員も最大級。


そして、それだけ重要な場所だからこそ、オルフェでも最大級の防衛戦力が備えられていた。



しばらく、閃と烈はマークと話をしていた。


「では、私はそろそろ仕事に戻るよ」


「この後の案内は、係の者に任せてある」


そう言うと、1人の女性スタッフがやってきた。


「お2人のお部屋まで、私がご案内させていただきます」


案内係の女性は丁寧に頭を下げた。


「何か困ったことがあれば、遠慮なく頼ってくれ」


「では、私はここで失礼するよ」


閃と烈は揃って頭を下げた。


マークは軽く手を上げて応えると、その場を後にした。


「それでは、こちらへどうぞ」


閃と烈は、案内係の女性について歩き出した。



「こちらでございます」


案内係の女性に連れられ、閃と烈は用意された部屋へと案内された。


部屋は、それぞれに個室が用意されている。


「では、ごゆっくりお過ごしください」


案内係が扉を開ける。


部屋に入った閃は、思わず目を丸くした。


かなり広い。


内装も豪華で、まるで高級ホテルの一室だった。


(え、個室でこれ?)


1人で使うには、明らかに持て余す広さ。


なんなら2人で使っても、まだ持て余しそうだ。


ふと隣を見ると、烈も同じような顔で部屋を見渡している。


(多分、考えてること同じだな……)


閃は思った。


2人は案内係に礼を言うと、それぞれの部屋に荷物を置いた。


そして、一旦閃の部屋に集まることにした。


「高級ホテルじゃねーか」


部屋に入って早々、烈が言った。


「ルームサービスまである……」


閃は案内表を見ながら言った。


「逆に落ち着かねーわ……」


「わかる」


閃も頷いた。


2人とも、これまでこういった豪華な場所で過ごした経験はほとんどない。


広すぎる部屋の中で、なんとなく所在なさげに立ち尽くす。


「これが“カルチャーショック”ってやつか……」


烈が真顔で言った。


(それはちょっと意味が違うような……)


閃は内心でツッコんだ。

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