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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
天華天明篇

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第4話「鳥籠」


戦闘を終えたレギオンⅡ部隊は、次々とキャリアへ帰還していた。


ゴズマンのレギオンγも、それに続いてキャリア内へ戻る。


格納庫には、すでに帰還したワイバーンレギオンの姿があった。


サキはコクピットから降り、機体のそばで技術スタッフと何やら話している。


その様子を、ゴズマンはレギオンγのコクピット内から眺めていた。



ゴズマンがコクピットから降りると、整備スタッフの1人が近づいてきた。


「おつかれっス、隊長」


そう言いながら、ゴズマンにドリンクを手渡す。


「おう」


ゴズマンはそれを受け取ると、喉を潤すように一気に飲んだ。


「レギオンⅡ、実際どうっすか?」


整備スタッフが尋ねる。


「可もなく不可もなく、ってとこだな。今んとこ」


ゴズマンはあっさりと答えた。


「それより……」


ゴズマンは、少し離れた場所にいるサキへ視線を向ける。


「“鳥”は?」


「あぁ、Ω……やっぱ、さすがっすよ」


整備スタッフもサキの方を見る。


「イギリスのED、撃墜してました」


「ほぉ……」


ゴズマンは少し感心したように眉を上げる。


「で、トドメは?」


「刺してないみたいっすね」


「チッ……」


その答えを聞いた瞬間、ゴズマンは露骨に舌打ちした。


撃墜しておきながら、仕留めなかった。


どうやら、それが気に入らないらしい。


ゴズマンはドリンクをもう一口飲みながら、サキをじっと見つめていた。



サキが廊下を歩き、自室へ戻ろうとしていた時だった。


「小鳥ちゃんよォ」


背後から、ゴズマンの声がした。


しかし、サキは振り返らない。


そのまま無視して歩き続ける。


「おい」


ゴズマンは歩み寄ると、サキの肩を掴んだ。


そして、強引に振り向かせ、その顎を掴む。


「無視すんなよォ……」


顔を近づけ、威圧するように凄むゴズマン。


だが、サキに怯えた様子はない。


鋭い目で、真っ直ぐゴズマンを睨み返した。


「お前、トドメ刺さなかったらしいな?」


ゴズマンが言った。


「……任務はあくまで足止め」


サキは淡々と答える。


「目的は十分に果たしたはずだが?」


実際、サキの言う通りだった。


今回の目的は、エウリューラの撃破ではない。


レギオンⅡ部隊が戦闘データを収集する間、その介入を防ぐこと。


つまり、足止め。


それどころか、サキはエウリューラを撃墜している。


任務として見れば、十分すぎるほどの戦果を上げていた。


「そんなにトドメを刺したいなら、お前がやれ」


サキは冷たい目でゴズマンを見る。


「できるものならな……」


サキはゴズマンの手を払いのけた。


そして、それ以上何も言わず、その場を立ち去っていく。


ゴズマンは追いかけようとはしなかった。


ただ、その後ろ姿を睨みつける。


(調子に乗るなよ……サキ)



天華天明によるイギリス本部への襲撃は、即座にオルフェの全拠点へ通達された。


新型のレギオンⅡ。


そして、ワイバーンレギオン。


総帥のトーマス、副総帥の松永、イギリス本部長のマーク、そして各支部の代表による緊急リモート会議が開かれた。


会議では、当時の戦闘状況を交えながら、マークが襲撃の詳細を説明していく。


そして——


やはり議題の中心となったのは、エウリューラを撃墜した紫色のレギオンだった。



会議終了後。


トーマスはファクターズ、そしてメルを司令室に呼び出した。


本部で起きた襲撃について一通り説明した後、エウリューラに記録されていた戦闘ログを見せる。


映像には、空中を高速で飛び回るワイバーンレギオンの姿が映っていた。


メルは、その動きを眺める。


「うん。間違いなくサキだ」


迷いのない答えだった。


「んで、この機体……サキのやつの改修機かな?」


メルは映像を見ながら続ける。


「メル達が使ってたレギオンΩって、ヴァルキリー・ギアとベルセルク・ギアって2つあってさ」


「前、せっちゃん達と戦った時に、メルがベルセルク・ギア使ったの覚えてる?」


「あの、見た目が変わったやつ?」


閃が言った。


「そうそう」


メルは頷く。


「多分だけど、この機体はそのベルセルク・ギアを外して、ヴァルキリー・ギア特化にしてると思う」


メルは画面に映るワイバーンレギオンを指さした。


「だから、あんなにダイエットしたみたいに細くなってる」


「なるほど……」


「レギオンΩを、完全な空中戦仕様にしたというわけか」


トーマスは改めて映像を見る。


「そゆこと」


メルは頷いた。



「しっかし——」


メルは戦闘ログを眺めながら、腕を組んだ。


「あの“痩せレギオン”に、よりによってあのサキが乗ってるなら……」


「こりゃ、簡単にはいかないよ?」


「だろうな……」


烈が低い声で呟いた。


かつて、唯一サキと1対1で戦った経験がある烈は、その恐ろしさをよく分かっている。


「それにさ」


メルは映像を見ながら続ける。


「これ、結構手加減してるし」


「……!」


その言葉に、トーマスは息を飲んだ。


ファクターズも口にこそ出さなかったが、そのことには気づいていた。


つまり——


サキの実力は、この戦闘ログで見せたものが全てではない。


実際は、さらに強いということだった。


「でも——」


「手加減してるってことは、サキさん……何か事情がありそう……」


音はメルを見る。


「あー……そうかも」


メルも否定しなかった。



「イギリス本部のことだが——」


全員の視線がトーマスへ向く。


「現在、4人の訓練生がいる。しかし、いずれも実戦経験はない」


「そして、唯一いるファクターも、先ほどの戦闘で負傷している」


トーマスの表情が険しくなる。


「つまり——今のイギリス本部には、戦えるファクターがいないんだ」


閃たちは黙って話を聞く。


「天華が次にどこを攻撃してくるのか、それは分からない」


「それに——攻めてくるのが天華だけとも限らない」


「もし、この状況で再び本部が襲撃を受ければ……非常にまずい」


ファクターズは頷いた。


「そこで——」


「日本支部から2名、イギリス本部へ一時的に派遣することになった」


「行ってもらうのは、閃くん、烈くん」


「お願いできるかな?」


「もちろんです」


閃はすぐに答えた。


「了解です」


烈も頷く。


「ありがとう、2人とも」


トーマスは2人を見て言った。


「色々と急で申し訳ないが、明日の朝8時に出発してもらう」


「了解!」


閃と烈は揃って返事をした。


続いて、トーマスは残る3人を見る。


「怜くん、音くん、メルくんは日本支部で待機」


「もし天華がここへ来た場合、3人には防衛を頼む」


「了解」

「はいっ!」

「はいよ〜」


怜、音、メルがそれぞれ返事をする。


こうして話はまとまり、5人は司令室を後にした。

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