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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
天華天明篇

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第2話「新型」


天華天明・仮設本部。


その一室には、代表であるフェンの姿があった。


そこへ、側近の1人が入ってくる。


フェンは静かに視線を向けた。


「フェン様、準備は万全です」


その報告を聞き、フェンはゆっくりと立ち上がる。


「うむ……」


そして、わずかに目を細めた。


「“新型”の性能——」


「とくと見せてもらおう……」


フェンは静かに言った。



オルフェ研究機関・イギリス本部。


突如、施設内にけたたましい警報が鳴り響いた。


『敵襲です!敵勢力は——天華です!!』


オーキュラムが捉えた反応を確認したオペレーターの声が、司令室に響き渡る。


「天華天明……!」


本部長のマークは、険しい表情を浮かべた。


(ついに来たな……!)


マークは足早に司令室へ向かう。


その間にも、施設内では次々と防衛態勢が整えられていた。


『防衛部隊、戦闘配置完了!』


『Pジャマー、展開!』


『各区画、隔壁閉鎖!』


慌ただしく職員たちが動く中、マークが司令室へ到着する。


「マーク本部長!」


オペレーターの1人が振り向いた。


「トルーパーはどうしますか?」


現在、イギリス本部には1人のファクターと、4人の訓練生が滞在している。


しかし、4人の訓練生には実戦経験がない。


マークは迷うことなく指示を出した。


「訓練生はトルーパー内で待機させろ」


「了解!」


オペレーターはすぐに指示を伝える。


もっとも、それは訓練生を戦わせるためではない。


万が一、本部の防衛線が突破された場合——


すぐに彼らを脱出させるためだった。


オルフェ研究機関にとって、最優先すべきはエーテルコードの保護。


その原則は、どのような状況でも変わらない。


そして、有事の際には施設内に留まるより、いつでも移動できるトルーパーの中にいた方が安全だった。



「ミラ、準備はできてるか?」


マークは通信を繋いだ。


『はい!いつでもいけます!』


ミラ・ヴェネット——


現在、イギリス本部に所属する唯一のエーテルファクター。


属性は“風”。


そして今、彼女は自身のED“エウリューラ”のコクピットにいた。


「よし。発進準備!」


マークの指示とともに、エウリューラの発進シークエンスが開始される。


「ミラ」


マークは改めて呼びかけた。


『はい』


「分かっていると思うが——」


「自分の身を最優先に守るんだ。いいな?」


ミラは一瞬だけ沈黙した。


『……了解』


マークは小さく頷く。


「よし、発進!!」


エウリューラが発進態勢に入る。


『エウリューラ!出ます!』


次の瞬間——


エウリューラは勢いよく飛び出し、風を切りながら、一気に大空へと舞い上がった。



天華のキャリアから、次々と機体が発進していく。


新型レギオン——“レギオンⅡ”。


複数のレギオンⅡがDキャリアーに乗り込み、次々と戦場へ向かっていく。


その光景を、キャリア内部から眺めている男がいた。


「よし、そろそろ俺も出るか」


γクラス強化兵——ゴズマン。


今回、彼が出撃する目的の一つは、レギオンⅡの実戦データを収集することだった。


レギオンⅡは、それまでのレギオンシリーズとは大きく異なる。


最大の違いは、完全無人機であること。


これまで蓄積されてきたレギオンシリーズの膨大な戦闘データをもとに開発され、搭乗する強化兵を必要としない。


それは、最高司令官であるフェンの意向でもあった。


強化兵の育成や維持に必要となる、莫大な人的・金銭的コスト。


それらを削減し、より効率的な軍事体制へ移行する。


レギオンⅡは、その新たな方針を象徴する機体でもあった。


(やれやれ……つまらん仕事だ)


ゴズマンは内心でぼやきながら、自身のレギオンγに乗り込んだ。


「——“鳥”の準備はできてるか?」


『もう少しで完了します』


オペレーターから返答が入る。


「準備でき次第、発進させろ」


『了解』


通信が切れる。


ゴズマンのレギオンγはDフライヤーに乗り、出撃準備に入った。


ふと、ゴズマンはキャリア内部の一角へ視線を向ける。


そこには、ある機体があった。


(せいぜい役に立てよ?)


ゴズマンはニヤリと笑う。


(——“小鳥ちゃん”よォ)



「新型ですね」


モニターを確認しながら、オペレーターが言った。


画面には、Dフライヤーに乗って接近してくる複数の機体が映し出されている。


「新たなレギオンか……」


マークは険しい表情で呟いた。


「エウリューラ、新型との接触まで、約2分!」


オペレーターの声が司令室に響く。


ミラのエウリューラは、上空を飛行していた。


エウリューラは、空中戦に特化したEDである。


同じ空中特化型である音のツムギと分類上は同じだが、その外見は大きく異なる。


白を基調とした細身の機体。


そして、全体のバランスから見ても長い両腕。


独特なシルエットを持っていた。


『敵機、捕捉!』


ミラは正面から迫るレギオンⅡの部隊を捉える。


『迎撃します!』


エウリューラが両腕を前へ突き出した。


指先に内蔵された兵装——“フィンガーファランクス”。


小型の砲身から無数のエーテル弾がマシンガンのように連射された。


迫る弾幕に、Dフライヤーに乗ったレギオンⅡたちは即座に散開する。


次々とエーテル弾をかわしていくが、1機が避けきれなかった。


エーテル弾が機体へ立て続けに直撃する。


Dフライヤーもろとも制御を失ったレギオンⅡは、そのまま真っ逆さまに墜落していった。


その下に広がるのは海。


レギオンⅡは激しい水しぶきを上げ、海面へ叩きつけられた。


その様子を、部隊後方からゴズマンが眺めていた。


(おっとォ~……)


(あんまりソイツら壊されたら困るんだよなァ)


今回、レギオンⅡに与えられている目標はエウリューラではない。


狙いは、イギリス本部のSD部隊。


レギオンⅡの性能を実戦で測るには、そちらの方が都合がいい。


(そろそろ来いよ……)


(小鳥ちゃんよォ……)


その瞬間——


後方から、凄まじい速度で接近する機影をレーダーが捉えた。


「やっと来やがったか……」


遥か後方から、“何か”が猛烈な速度で戦場へ迫っていた。



「これは……こいつも新型!?」


凄まじい速度で接近してくる機影を見て、オペレーターが声を上げた。


「この反応……!」


「レギオンΩに近い……!?」


別のオペレーターがモニターを凝視する。


「レギオンΩだと……!?」


マークの表情が険しくなる。


マーク自身、レギオンΩを直接目にしたことはない。


見たことがあるのは、記録映像やデータだけ。


しかし、その脅威については、嫌というほど聞かされていた。


天華連盟が誇った最高戦力。


Ωクラス強化兵によって構成された、Ωチーム。


だが、トーマスからの報告によれば、Ωチームはすでに解散している。


その後、Ωチームの1人は、ファイとの戦闘に敗れて死亡。


そして、もう1人は現在、日本支部の防衛隊として正式に所属している。


(新しいΩクラスを造ったのか……?)


(それとも——)


マークの脳裏に、ある人物が浮かんだ。


Ωチームには、もう1人いる。


その消息は、未だ完全には掴めていない。


麗鳥——サキ。


(もし、そうだとしたら……!!)


マークの額に、冷たい汗が滲んだ。


モニター上の機影は、なおも凄まじい速度でエウリューラへと接近していた。



エウリューラのモニターにも、超高速で接近する機影が映し出されていた。


(このスピード……!新手ね!?)


ミラは即座に標的を切り替える。


「あれは……?」


モニターに映し出されたのは、こちらへ単独で飛行してくる“紫色”の機体だった。


その姿に、ミラは見覚えがあった。


かつて、日本支部のファクターズと戦っていたレギオンΩの戦闘データ。


その中に、よく似た紫色の機体が存在していた。


しかし——


(違う……?)


ミラの記憶にあるレギオンΩは、ブロックスのような重厚な外見をしていた。


だが、今こちらへ迫っている機体は明らかに違う。


全体的に細身で、鋭いシルエット。


さらに背部には、大きなウイングまで備わっている。


同じ紫色。


そして、レギオンΩを思わせる反応。


それでも、外見はまるで別物だった。


(似てるだけ……?)


一瞬、そんな考えが頭をよぎる。


だが——


(いや、今はそんなことどうでもいい!!)


敵であることに変わりはない。


ミラは思考を切り替えた。


エウリューラの両腕を前方へ向ける。


照準が紫色の機体を追う。


ミラは、迫り来る機体へ狙いを定めた。

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