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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
天華天明篇

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第1話「天華天明」


天華天明てんかてんみょう——


ジョウの死後、新たな指導者である“フェン 赤馬チーマー”によって再編・発足した、天華連盟に次ぐ天華共和国の新たな軍事体制である。


ジョウの死、そして天華連盟本部の消滅。


それら、ファイによって引き起こされたものだった。


一連の出来事は、後に「ファイ事件」と呼ばれることになる。


しかし、その真相を知る者は、ごく一部に限られていた。


特に天華共和国の国民には、徹底した情報統制によって事実が伏せられている。


しかし、突然の軍事体制の変化に対し、不安や疑問を抱く国民は少なくなかった。


なぜ、これほど急激に軍事体制が変わったのか?


一部の国民は、政府の発表に疑問を抱き始めていた。


そして、その中には独自に調査を行い、隠された真相に迫ろうとする者たちもいた。



基本的な軍事思想こそ天華連盟時代のものを引き継いでいるが、その運用方針にはいくつか大きな変更が加えられていた。


その中でも最も大きな変更、それは「強化兵計画」の大幅な縮小だった。


これまで強化兵の開発に投入されていた予算は大幅に削減され、その分を他の軍事分野へ回している。


そして、他国と同じように、ブレインによるSD運用を主軸とした軍事体制への移行を進めていた。


これには、強化兵を巡って国際社会から長年指摘されてきた人道的な問題を、フェンが考慮したことも大きい。


しかし、それ以上にフェン自身が、強化兵という存在そのものを時代遅れだと考えていた。


これまで天華共和国では、軍事分野におけるUBの運用率は約2%に留まっていた。


しかし、新体制への移行に伴い、その割合は約5%まで引き上げられている。


強化兵への依存を減らし、無人機やUBを積極的に活用する。


それによって、より効率的で、人的損失の少ない軍事体制へ移行することがフェンの狙いだった。


しかし——


そんなフェンが、決して捨てていないものがある。


オルフェへの憎しみだった。


ジョウの死。


天華連盟本部の消滅。


全てを引き起こしたファイ。


そのファイを開発したオルフェ。


フェンは、あの日の出来事を決して忘れていない。


“必ず報復する”


“ジョウの仇を討つ”


その決意は、今も彼の胸の奥に強く刻まれていた。


現在、天華天明は複数の裏組織と水面下で接触し、強固な協力関係を築いている。


そして——


それらの組織と連携しながら、オルフェへの攻撃計画を着々と進めていた。



一方、オルフェでは、天華共和国が新たな軍事体制である天華天明の発足を発表して以降、その動向を注意深く監視していた。


天華天明の発足が公表されたのは、閃がエジプトへ発った後のこと。


そのため閃が、その存在を知ったのは、日本へ帰国してからだった。


そして、オルフェが把握している情報は、天華共和国から公式に発表されたものだけではない。


G.H.O.S.T.が独自に入手した情報によれば、オルフェへの報復を目的として、水面下で着々と準備を進めているという。


中でも、特に警戒されているのが日本支部だった。


現在、オルフェの事実上の中心として機能している日本支部。


その日本支部を主要な攻撃目標として狙っている可能性が高い。


今のところ、天華天明に目立った動きはない。


具体的な攻撃の兆候も確認されていなかった。


だからこそ、オルフェも迂闊には動けない。


警戒態勢を維持しながら情報収集を続け、その動向を静かに窺っていた。



朝。


食堂には、閃、烈、メルの姿があった。


3人はそれぞれ朝食を食べている。


食堂に設置されたテレビからは、天華天明に関するニュースが流れていた。


「“てんかてんめい”ねぇ……また厄介な……」


閃は肉うどんをすすりながら呟いた。


「“てんかてんみょう”な」


烈はみそ汁をすすりながら訂正した。


「もー!敵ってわかってるなら、先に攻めちゃえばいいのに!」


メルは朝からステーキを頬張りながら、不満そうに言った。


「気持ちは分かる」


閃は頷く。


「まぁな……」


烈も同意した。


実は、閃と烈も昔、同じようなことを考えたことがある。


そして、その疑問を松永へ直接ぶつけたこともあった。


だが、松永から返ってきた答えは明確だった。


オルフェは武装こそしているが、軍隊ではない。


あくまで研究機関である。


オルフェに武装や兵器開発が認められているのも、自らの施設や職員、何よりエーテルコードを守るため。


あくまで“防衛”を目的としたものだった。


だからこそ、明確な敵対組織だからという理由だけで、オルフェ側から一方的に攻撃を仕掛けることはできない。


その説明を聞いた当時、閃と烈も納得していた。


閃は、その話をメルにも簡単に説明した。


「ふ〜ん……」


メルはステーキをもぐもぐと食べながら聞いていた。


「なんか、めんどくさいね〜」


「……ま、今の天華にはΩクラスなんていないから、大して脅威でもないね」


メルはあっけらかんと言った。


「それは確かに」


閃は頷く。


烈も無言で同意した。


かつてΩチームと直接戦った2人は、その恐ろしさを身をもって知っている。


間違いなく、天華連盟における最強戦力の一角だった。


そして——


そのΩチームに所属していたメルは、今ではオルフェの仲間として、こうして一緒に朝食を食べている。


そう考えると、これほど心強い存在もいなかった。

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