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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
エピソードEX.2

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「烈の修行」


閃がエジプトにいる頃。


烈と怜は、トレーニングルームにいた。


「怜、頼む」


烈が静かに言う。


怜は小さく頷くと、《アイスフィールド》を発動する。


トレーニングルームの空気が一気に冷え込む。


床には薄く氷が広がり、周囲の温度は急激に低下した。


続いて、怜は複数の《氷弾》を生み出す。


「今日はどれくらいにする?」


怜が尋ねる。


「“レベル5”で頼む」


烈は迷いなく答えた。


「分かった」


怜は小さく頷く。


《氷弾》は烈を取り囲むように配置される。


そして、一斉に高速で動き始めた。


烈は静かに目を閉じる。


視覚を完全に捨て、意識を極限まで研ぎ澄ませる。


《氷弾》は烈の周囲を高速で旋回し、不規則な軌道を描く。


次の瞬間、1つの《氷弾》が、烈の死角から一気に襲いかかった。


だが、烈は微動だにしない。


《氷弾》は一瞬で蒸発した。


さらに前方、側面、斜め後方。


変則的なタイミングで次々と襲い掛かる。


それでも烈は目を閉じたまま、一切迷うことなく迎撃していく。


やがて最後の《氷弾》も蒸発、トレーニングルームに静寂が戻った。


烈はゆっくりと目を開く。


「終わったか?」


怜は小さく微笑みながら頷いた。



「レベル5は、もう余裕じゃない?」


怜は言った。


「そうだな」


烈は静かに頷く。


烈が今行っているのは、単なる反射神経を鍛える訓練ではない。


エーテルそのもののコントロールの精度を高めるための訓練だった。


通常、エーテルスキルは、ファクターの体内にあるエーテルを属性へ変換し、具現化・放出する。


つまり、体内エーテル → 属性変換 → エーテルスキルという流れになる。


そして、一度体外へ放出された属性エーテルは、周囲の環境の影響を受ける。


それは自然界の炎や氷などと同じだった。


烈の炎属性で例えるなら、水中や真空空間のように、本来なら炎が存在できない環境では、スキル自体は発動できても威力や精度が大きく低下してしまう。


烈は、以前のフレアⅢでの戦いを思い返していた。


(もし、あの時……いつもどおりスキルを扱えていたら……)


もちろん、レンゴクには高火力兵装であるビーストキャノンが搭載されている。


だが、烈が求めているのはそれではなかった。


あの時のように、仲間全員が追い詰められた状況。


そんな極限状態でこそ、自分自身の力でビーストキャノンを超える威力のスキルを放てるようになりたい。


その想いが、烈をさらに鍛錬へと駆り立てていた。



烈は、ある仮説へたどり着く。


(属性に変換する前のエーテルを、そのまま広げられたら……)


通常、ファクターが扱うのは、属性へ変換された後のエーテルだ。


だが、その前段階——


体内を巡る純粋なエーテルそのものを操作できれば、属性エーテルが環境の影響を受ける前に対象を捉えられるかもしれない。


理論上は可能。


しかし、誰も試したことはない。


誰もが、属性へ変換した後のエーテルだけを操作してきた。


体内エーテルを直接扱うという発想そのものが存在しなかった。


烈は、その考えを怜へ相談した。


怜も興味を示し、訓練へ協力することになる。


まず最初は、静止した《氷弾》を目視しながら、エーテルだけを飛ばして捉える訓練。


次に、その飛ばしたエーテルを炎へ変換する。


さらに、今度は動いている《氷弾》をエーテルで捉える。


そして、そのエーテルを炎へ変換し、《氷弾》を消滅させる。


最後は、それらすべてを、目を閉じた状態で行う。


段階を踏みながら、少しずつ難易度を上げていった。


もちろん、最初から上手くいくはずもない。


烈は何度も失敗し、そのたびに怜の《氷弾》が容赦なく命中した。


「いてっ!」


「また外した」


怜は淡々と次の《氷弾》を作り出す。


烈は苦笑しながらも立ち上がる。


怜もまた、烈の頑丈さを理解している。


それは、2人の間にある信頼の証でもあった。



そして、現在。


烈は、エーテルのコントロールをかなり掴み始めていた。


まだ完全ではない。


それでも、以前とは比べものにならないほど精度は向上している。


もっとも、この訓練には大きな欠点があった。


体内エーテルを直接制御する行為は、通常のスキル発動よりも遥かに神経を消耗する。


短時間の訓練だけでも、烈はすぐに疲労してしまうのだ。


だが、その弱点を補えるだけの回復力を、烈は持っていた。


少し休めば再び訓練を続けられる。


その身体能力もまた、烈の強みだった。


烈は腕を組みながら、小さく呟く。


「あとは……」


「エーテルで捉えた瞬間に、一気に火力を最大まで引き上げられれば」


「一応、形にはなる」


その言葉を聞いた怜は静かに頷く。


まだ理論段階だが、烈の頭の中には新たなスキルの姿が、少しずつ形になり始めていた。

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