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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
エジプト篇

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第25話「仲間」


朝6時。


閃は、音が運んできてくれた朝食を食べ終えると、もう一度立ち上がってみた。


音に肩を支えてもらいながらではあるが、今度は何とか立つことができた。


「よし」


閃は小さく頷く。


「行けそう?」


音は心配そうに支えながら言った。


「うん」


2人はゆっくりと歩き始める。


目指すのはシャワー室だった。


その時——


「閃じゃない!」


後ろから声が響いた。


振り返ると、クレアが立っていた。


「おはよー」

「おはよ!クレアちゃん!」


閃と音が笑顔で挨拶を返す。


「おはよう——って、それより!」


クレアは慌てて閃のもとへ駆け寄った。


「もう大丈夫なの!?」


「見ての通り!もうピンッピン!」


閃は親指を立てた。


「……全然そうは見えないんだけど」


クレアは呆れたようにため息をついた。


全身に包帯を巻き、音に肩を借りて歩いている姿では、どう見てもピンッピンではない。


「それに、音だって昨日からずっと看病してたんでしょ?」


クレアは音へ視線を向ける。


「大丈夫?代わろうか?」


「ありがとう、クレアちゃん」


「でも、大丈夫だよ」


音は優しく微笑んだ。


その笑顔を見て、クレアも少し安心したように息をつく。


「そう……でも、何かあったらすぐ言いなさいよ?」


「うぃ」


閃は頷くと、再びゆっくりと歩き出す。


クレアは、その後ろ姿を少し心配そうに見送り続けていた。



「スッキリしたー!」


シャワーを浴び終えた閃は、大きく伸びをした。


「ありがと、音」


音が用意してくれた病衣に袖を通し、さっぱりした表情を浮かべる。


「ううん!」


音は嬉しそうに首を横へ振った。


「司令室に連絡入れてみようかな」


閃は近くのソファへ腰を下ろしながら言う。


「閃くん!?」


その時、廊下の向こうから松永がやって来た。


どうやら、クレアから閃が目を覚ましたことを聞いたらしい。


「あ、主任!ちょうど良かった!」


閃が立ち上がろうとすると、松永はそのまま閃を優しく抱きしめた。


「本当に……」


「本当に良かった……」


その声には、心からの安堵が滲んでいた。


「主任、大げさですよぉ」


閃は照れ笑いを浮かべる。


「うふふ」


松永もようやく笑顔を見せた。


そして音へ向き直る。


「音ちゃんも、本当にありがとうね」


「いえいえ!」


音も笑顔で答えた。


松永は改めて閃の顔を見る。


「本当に、もう大丈夫なの?」


「はい!」


閃は力強く頷く。


「それより——」


表情が少し真剣になる。


「その後の状況を、早く知りたくて……」


「……そうよね」


松永は静かに頷いた。


「分かったわ」


「もうすぐ総帥も来るはずだから、司令室で待ってる?」


「はい。そうします」


閃は迷いなく答えた。


すると音が遠慮がちに口を開く。


「わたしは、戻った方がいいですか?」


「音ちゃんも一緒に来てくれる?」


「怜と烈くんにも声をかけるから」


松永は優しく微笑んだ。


「はいっ!」


音は嬉しそうに頷いた。



閃と音が司令室へ入ると、そこにはカリンがいた。


「閃、おかえりなさい」


カリンは優しく微笑んだ。


「カリンさん、ただいま!」


閃も笑顔で返す。


そのやり取りの直後、司令室のドアが開いた。


入ってきたのは、烈と怜だった。


「よぉ!閃!!」


烈は満面の笑みを浮かべ、一直線に駆け寄ってくる。


「烈!怜!」


2人の顔を見た瞬間、閃の表情も自然とほころんだ。


やはり、このいつもの顔ぶれを見ると、心から安心できる。


「おかえり」


怜は口元を少し緩め、静かに言った。


「ただいま!」


閃は嬉しそうに頷く。


その場にいた全員が、閃の無事な姿を見て安堵していた。


そして——


再び司令室の扉が開く。


トーマスが姿を現した。


「閃くん……」


「本当によくやってくれた」


穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと閃の前まで歩いてくる。


「何より、生きて戻ってきてくれた」


そう言って、閃へ手を差し出した。


閃もその手をしっかりと握り返す。


「僕だけでは、何もできませんでした」


閃は静かに首を横へ振った。


「現地の皆さんの協力があって……」


「エージェントがいてくれたから……」


「僕は——生きて帰ってくることができました」


その言葉を聞き、トーマスは静かに頷く。


その表情には、閃の成長を誇りに思う気持ちと、無事に帰還したことへの安堵が浮かんでいた。



トーマスは席に着くと、一同を見渡して静かに口を開いた。


「それでは、現時点で判明しているソランティス王国の状況を報告する」


「まず——戦いは、エレシャ王女の勝利で終わった」


その一言に、閃は静かに息を吐いた。


心のどこかで信じてはいた。


それでも、実際にその報告を聞き、ようやく胸のつかえが下りる。


さらにトーマスは続ける。


「もちろん、エレシャ王女も無事だ」


「さらに、親衛隊やエレシャ派の全員の生存も確認している」


「そうですか……良かった……」


閃のその声には、心からの安堵が滲んでいた。


トーマスも穏やかな表情を浮かべる。


「向こうも、閃くんの容態を非常に心配していたよ」


その言葉を聞いた閃は、少し考えてから口を開く。


「もし可能なら……僕から直接、連絡してもいいですか?」


「もちろんだ」


トーマスは笑顔で頷く。


「ソランティスの皆さんも、きっと喜ぶはずだよ」


閃も安心したように微笑んだ。


そしてトーマスは、もう一つの報告を続ける。


「なお、エレシャ王女の正式な王位継承式は、およそ1ヶ月後に執り行われる予定だ」


閃は静かに頷く。


脳裏には、エレシャの姿が浮かんでいた。


(エレシャなら、大丈夫だ)


そう心の中で呟く。


現時点で判明している情報は、そこまでだった。



4人は一度、司令室を後にした。


閃は相変わらず、音に肩を借りながら歩いている。


「音、代わるぜ?」


烈が声をかけた。


「ありがとう、烈くん!」


音は笑顔で頷き、閃を烈へ預ける。


すると、烈は閃をひょいと軽々持ち上げ、そのまま肩へ担いだ。


「ちょっ!何でだよ!」


閃はジタバタともがきながら、大笑いしていた。


「まぁまぁ、いーじゃねーか」


烈は悪戯っぽく笑い、閃の尻をパンパンと叩いた。


その様子を見て、怜と音も思わず笑みをこぼす。


「それで——もう、大丈夫なの?」


怜が静かに口を開いた。


「うん!」


烈に担がれたまま、閃は笑顔で答えた。


「音のおかげで、かなり楽になった!」


「そう」


怜は小さく頷くと、今度は音へ視線を向けた。


「音も、お疲れ様」


「ヘヘン(⸝⸝¯ᵕ¯⸝⸝)!」


音は少し誇らしげな表情を浮かべる。


その頭を、怜は優しく撫でた。


「はふぅ……」


音は気持ちよさそうに目を細める。


「ソランティスでの話、聞かせてくれよ!」


烈が楽しそうに言った。


「私も、聞きたい」


怜も静かに頷く。


閃は3人の顔を見回し、嬉しそうに微笑んだ。



4人は談話室へ移動し、ソファに腰を下ろした。


閃は、ソランティス王国で起きた出来事を、順を追って話していく。


ギシャ、ラ・オーマ、新たな魔獣、そして——エレシャたちとの戦い。


3人は途中で口を挟むことなく、静かに耳を傾けていた。


閃はふっと笑った。


「てか、エジプトにいたの、2週間くらいだったんだ……」


「なんか……もっと長くいた気がする」


それだけ、濃密な日々だった。


命を懸けた戦いも、エレシャたちと過ごした時間も、そのどれもが、何ヶ月も過ごしたような濃さだった。


「魔獣もどきか……」


烈は腕を組みながら呟く。


「それが閃くんを、こんなにしたんだね……」


音は閃の包帯を見て、小さく眉を下げた。


「でも、俺たちなら——間違いなく倒せる」


その言葉に、3人も真剣な表情になる。


「改めて思ったよ」


閃は穏やかに笑った。


「この4人なら、怖いものなんてないって」


「当たり前だろ?」


烈は笑って拳を突き出した。


「そうだね!」


音は嬉しそうに微笑んだ。


怜も静かに頷く。


ソランティスでの出来事を通して、閃は改めて仲間の大切さを思い知らされた。


1人では乗り越えられなかった。


でも、仲間がいたから前へ進めた。


その想いは、今まで以上に強く胸へ刻まれていた。

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