表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
エジプト篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/31

第19話「聖なる闘争②」


閃は迫り来るナックの軍団を、次々と戦闘不能にしていく。


敵の数は依然として多い。


しかし、その猛攻を受けながらも、バサラヲは一歩も引かなかった。


その時、通信が入る。


『こちらA班。目標地点へ到達しました』


下水道から王宮へ潜入した部隊だった。


「了解です!」


閃はナックの攻撃をさばきながら短く返答する。


その直後、別の通信が入る。


『こちらB班!目標地点へ到達!A班と合流しました!』


配管通路から潜入していたB班も、予定どおりA班との合流に成功した。


「了解!」


閃は力強く答える。


敵の戦力を正面へ引きつけている間に、潜入部隊は予定どおり王宮内部への侵入を果たした。


作戦は、予定どおり次の段階へと移る。



「カイバさん!あとよろしく!」


閃はバサラヲをオートモードへ切り替えながら、エレシャを優しく抱き上げた。


『閃サマ、エレシャサマ、ゴ武運ヲ』


カイバが静かに告げる。


「うん!」

「そっちもね!」


閃とエレシャは、それぞれ笑顔で応えた。


「あ、閃!待って」


エレシャが小さく呼び止める。


そして、そっと閃へ口づけをした。


わずかなエーテルを分け与え、閃の力を回復させるためだった。


しかし、それだけではない。


互いの無事を願う気持ち。


必ず生きて帰るという約束。


さまざまな想いが、その口づけに込められていた。


唇を離すと、エレシャは閃を見つめる。


閃も何も言わず、小さく頷いた。


その瞳だけで、お互いの意思は十分に伝わっていた。


やがて、バサラヲのコクピットハッチが開く。


閃はエレシャを抱えたまま、勢いよく飛び降りた。


閃は《電空》を発生させ、落下の衝撃を大きく和らげる。


安全に着地すると、閃はエレシャをゆっくりと地面へ降ろした。


周囲には、切断されたナックの腕や脚、武器の残骸が至るところに散らばっている。


2人の次の目的は、王宮内部へ潜入したA班、B班との合流だった。


2人はすぐに駆け出す。


その背後では、オートモードへ移行したバサラヲが、なおもナック部隊との戦闘を続けていた。



地下牢。


そこは、外の情報を一切遮断するため、完全防音構造になっていた。


それでも、地響きのような振動だけは床を伝って届いてくる。


王宮周辺、あるいは王宮内で戦闘が始まっていることは明らかだった。


戦闘開始からしばらくした頃。


カカロが囚われている牢の前に、1人の男が姿を現す。


ソランティスの人間ではない。


男は鍵を取り出し、牢の扉を開いた。


さらに特殊な拘束具の構造を確認すると、慣れた手つきで次々と解除していく。


あっという間だった。


拘束から解放されたカカロは、ゆっくりと立ち上がる。


「大丈夫かい?」


男が気遣うように声をかけた。


「……問題ない」


カカロは短く答え、男を見つめる。


「……礼を言う」


「気にすんな」


男は軽く手を振って笑った。


「オルフェの者か?」


カカロが尋ねる。


「ああ」


男は頷く。


「あんたの仲間は、俺のツレが助けに向かってる」


リビアのことだった。


カカロは静かに頷く。


2人はすぐに牢を後にし、リビアが囚われている場所へと急いだ。



リビアは、カカロとは別の地下牢へ囚われていた。


その牢へ向かう途中、看守や見張りの兵士たちは、すでに全員倒れていた。


いずれも急所だけを的確に制圧され、無駄な戦闘の跡はない。


オルフェのエージェントによるものだった。


「おっ」


先を歩いていた男性が足を止める。


通路の向こうから、女性とリビアがこちらへ向かってくるのが見えた。


「カカロ!」


リビアが安堵したように声を上げる。


リビアの身体に目立った外傷はなかった。


拘束こそされていたものの、カカロのような拷問は受けていなかったようだ。


「……無事で良かった」


カカロは短く言った。


「ああ。お互いにな」


リビアは小さく笑みを浮かべる。


そして、隣に立つ男へ視線を向けた。


「ナオミから聞いたよ」


「オルフェのエージェントなんだな?」


ナオミ——リビアを救出した女性エージェントだった。


「助けてくれて感謝する。ありがとう」


リビアは真っ直ぐ頭を下げる。


「礼なら全部終わってから聞くよ」


男は肩をすくめながら笑う。


「そうだな」


リビアは頷く。


「差し支えなければ、名を聞かせてほしい」


「ロックだ」


ロックは短く答えた。


「そうか、ロック」


リビアは静かに頷く。


「これまでの経緯を聞かせてくれ」


ロックは歩きながら、これまでの状況を簡潔に説明した。


閃とエレシャがC拠点へ到着したこと。


そこで戦力を立て直し、エレシャがギシャへ決戦を宣言したこと。


そして現在、王宮で戦闘が始まっていること。


ロックとナオミは、他の協力者と共に王都近郊で待機していた。


その後、ベセルとやり取りをしていたギャッツから情報を受け取り、作戦内容を共有。


王宮での戦闘に敵の注意が向いている隙を突き、カカロとリビアを救出する作戦へ移行していた。


なお、2人が囚われている場所については、以前、生存確認のため王宮へ潜入した際に、すでに正確な位置を把握していた。



「エレシャ姫……」


リビアは静かに呟いた。


その瞳には、王女への信頼が宿っている。


ロックはそんなリビアを横目に、小さく笑った。


「うちのファクターくんと王女様は、それぞれの目的を果たしに行ってる」


「だったら俺たちの役目は一つだ」


ロックは肩を鳴らしながら続ける。


「邪魔になる連中を片っ端から片付ける」


「……シンプルだろ?」


不敵な笑みが浮かんでいた。


「ああ」


リビアも口元を緩める。


カカロも無言で頷いた。


「それじゃ、行こうか」


4人は頷き合うと、王宮中央部を目指して駆け出した。



その頃、閃とエレシャは、王宮へ潜入していた兵士たちと無事に合流した。


次の作戦——それはいよいよ、ギシャの討伐。


もちろん、ギシャのもとには数多くの兵士が配置されているはずだ。


そして何より、ラ・オーマがいる。


それぞれの役割は、すでに決まっていた。


兵士たちは敵兵の足止めを担当する。


閃はラ・オーマを討つ。


そして——


エレシャがギシャと決着をつける。


ギシャが王宮内にいることは間違いない。


しかし、ラ・オーマの《インビジブル》を使われれば、その姿を見失う可能性がある。


そうなれば、その隙に逃げられてしまう恐れもあった。


だからこそ、エレシャはあえて王都中へ響き渡る形で決戦を宣言した。


あの宣言は、単なる開戦の合図ではない。


ギシャを逃がさないための挑発だった。


エレシャは兄と直接言葉を交わしたことはほとんどない。


それでも、兄の性格だけは理解していた。


あれほどの宣言を受けてなお、ギシャが逃げることはない。


その確信があった。


そして実際、その思惑は成功している。


さらに、エレシャには、ギシャがいるであろう場所に一つだけ心当たりがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ