魔法
しばらく歩き続け、3人は外へと出た。王宮から見て、丁度裏庭の位地だろうか。
道は綺麗に整えられ、花壇には色とりどりの花が咲き誇っていた。
そこを突っ切り、更に奥へと進む。そして見えてきたのは、丸い形をしたコロッセオのような建物だった。
中に入ると、正にコロッセオのままの景色が広がっていて、中央の闘技場を囲むように観客席が列を連なっている。
「ここは、第三闘技場。王族や、特別な許可をした者しか入れぬ場所じゃ」
「…ああ、だからか」
姫は彼の言葉に、首を傾げた。
「いや…戦時中なのに、人がいないことが変だと思ったんだ」
このような立派な闘技場ならば、平時であっても真っ先に利用されて然るべきである……そう、ルークは思った。要するに、屈強の兵士が訓練に勤しんでいるイメージだった……というわけだ。
「ああ…それなら、残念なことにどこもこの様なあり様じゃよ」
今度は姫の言葉に、彼が首を傾げた。
「何せ、この間の魔物騒ぎで一部大連隊が全滅、魔道師団も壊滅状態じゃ。訓練しようにも、訓練する者がおらぬからの」
「そうだったな…」
「その話はここまでじゃ。…さあ、ルーク。授業を始めようぞ」
「あ、ああ…」
姫が、ルークと向き合った。
シスターは、それを見守るように両者の間で佇む。
「まずは 、確認からじゃ。ルーク。魔法はどのようなものか、またどのように扱うものか、答えてみよ」
「世界の生命エネルギー、マナを操って起こす現象だろ?で、魔法の形は人によって千差万別。マナを氷に変換する者や、炎に変換する者、またマナで協力者を召喚したりってところで良いか?」
「うむ。では、何故人は生まれた時から扱えるか、知っておろうか?」
「……確か、マナを感知できるかどうかじゃなかったか?」
「うむ、それも正解じゃ。マナを感知できるかどうか…これが魔術師とそうでないものの違いじゃ」
マナを感知できる者は、300人に1人いるかいないか。それ故、魔術師が貴重なのだ。
「さて、マナを感じ取れるのが魔術師。では、魔術師ごとに魔法の形が異なるのは何故か?」
「それは…何でだ?」
「答えはの…“環境”じゃ」
「…“環境”?」
「そうじゃ。ようは、魔法はイメージの力。じゃから、例えば血統によって輩出される魔法使いは、親から子へと幼き頃より確固たるイメージを伝える。また、周りもその家の出だと言う目で見る故、自分がその魔法を使えるのだとイメージがし易い」
「ふーん。じゃ、魔法使いの家系じゃない場合は?」
「それこそ、環境じゃ。寒い地方に住んでおれば、氷か…はたまた暖を取るための炎をイメージする者が多い。逆に暑い地方なら、渇きに耐えれるよう水を扱うという者が多いの」
「なるほどな…。つまり、魔法を使えるっつう奴は、その場に置かれた環境に適合する為に魔法を扱えるようになる…っていうことか?」
「そうじゃ。最も…マナを操る才があることが、前提であるがの」
「へえ…」
「さて、ここまでは理解したかの?」
「ああ…」
「では、そなたの話に戻るぞ。そなたは、生まれた時から魔法が使えたワケではなければ、魔法を使える血族の出かも定かではない。妾も長く生きてきたが…正直、そんなのこと聞いたことがないぞ」
そう言われても…と、彼は自分は内心困惑していた。
「じゃが…考えられる可能性が1つある。そなた…魔物を前にして何を思った?」
「…は?」
「言い方を変えよう。その時、そなたは何を願った?」
姫の質問に、彼は彼女から目を逸らして遠い目をしていた。
まるで、その時のことを思い出しているかのように。
あの時…確かに願った。無力な自分を恨みながら。
叫ぶように…祈るように。
「…力を」
ポツリと呟いた。
その言葉を、姫だけだはなくシスターも一字一句逃さないかのように真剣に聞いていた。




