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God knows  作者: 紅亜
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昔語り

「すまんの。あの場で語れぬ話が多くあった故、こうして来てもらった」


「それは別に……。それより、シスターと姫様の関係は?」


「それこそ追々分かること故、先に妾の話を聞いてくれぬか?」


姫の話にこれといって興味はなかったが、とりあえず渋々ルークは首を縦に振った。


「まずは、いくつかの質問をするぞ。そなた、イシュア神より与えられし【鍵】と【門】の話は知っているか?」


「【求めよ、そうすれば、与えられるだろう。捜せ、そうすれば、見い出せるだろう。鍵をもち、門を叩け、そうすれば、開けてもらえるだろう】……でしたっけ」


「ほお……暗唱しているとは、流石じゃの。では、その聖書に書かれている巫女は、どこにおったと思う?」


姫の質問に、ルークは固まった。


……は? どこにいたかって……あれは聖書の中の話だろう? と疑問に思いつつ。


「さあ……」


悩んだ末、結局そんな気のない返事で彼は返した。


けれども、姫は特に気を害した素振りは見せず話を続ける。


「 では、質問を変えようかの。当時あった国とはどこか、知っておるか?」


「当時は戦乱の最中だった為、多数の国が生まれては消えていったと文献にありました。今尚ある国という意味でしたら、ここアルケディアと教国ですが」


歴史書を紐解くと、まず始めにここアルケディア王国が人類史上始めて、国として形作られた……とある。


この大陸唯一の巨大国家であり、又、イスト教を国教とする宗教国家でもあった。


けれどもやがて各地で争いが起こり、国は分裂。


またそれと同時期に、政教分離という政治と宗教を分立させる動きが起こり、聖地を擁する北の離島でイスト教国として独立した。


数多の国が起こり、消えゆく中で現在も残っているのはその教国とアルケディアのみである。


「ほお……実に良く勉強しておるな。流石シスターの息子じゃ」


「恐れ入ります」


「では、そろそろ本題に移ろうかの。……鍵と門を与えられし巫女は、スメラ教を擁護しておった国。ここまで言えば分かるかの?」


「つまり、教国。それと、最初に興った国であり、イスト教を国教としたアルケディア王国…ということですか?」


「その通りじゃ。そして、その巫女とは……妾のことなのじゃ」


姫の言葉に、ヴァンは本日何度目か分からないが固まる。


冗談にしては、笑えない。


何せ、巫女が鍵と門を与えられたのは数百年前の話。


けれども、目の前にいる姫はどう見繕っても十数才……自分と同じ年か少し年下にしか見えなかった。


「……頭、大丈夫か?」


思わず、真顔で思った事をそのまま口に出してしまった。


「む……。そなた、失礼過ぎはせんか? のお? シスター」


言葉とは裏腹に、何処か彼女は面白そうに笑う。


そんな2人のやり取りに、シスターは溜息を吐いていた。


「いきなりそんな事を言われたら、誰だってそう思いますよ。姫様」


「むむむ……」


「ですが、ルーク。姫様が仰ることは全て真実です」


「そうじゃぞ? だからこそ、あの閉鎖的な教国が、態々護衛を寄越して来るのじゃからな」


ルークはシスターに、問いかけるような目線を向ける。


向けられた側の彼女は、苦笑しつつも首を縦に振り、肯定の意を示した。


「姫様は、イスト教にとって至宝ですから」


「つまりシスターは、姫を護衛する為に教国から来たってことか? 前に言ってた役目っていうのは、そのことなのか?」


「そうですよ」


「そなた、信じておらんな? シスターが護衛を務めておることに」


「そりゃあ、なあ……」


シスターの見た目や雰囲気は、好々爺もとい…人の良さそうな老女なのだ。


そんな彼女が護衛などという血生臭い役目を背負っているなど、誰が信じられるだろうか?


そもそも戦う姿すら想像がつかない。


「シスターはこれでも、大陸指折りの魔 術師なのじゃよ? 結界に関して言えば、並ぶものはいないと言われるほど。……先の魔物の一件も、彼女の魔法があったからこそ、そなたの家族は生き残ることができたのじゃ」


その言葉に、ヴァンの疑心はぐらついた。


……一応、筋は通っている。


寧ろ、それぐらいの力がなければ、あの奇跡的な生還の説明がつかない。



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