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God knows  作者: 紅亜
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信じる者に不可能はない

昔、昔の夢を見ていた。


…これが所謂、走馬灯というものだろうか?


彼は昔の場面を、まるで第三者として見るように思い出しながら、苦笑いを浮かべた。


胸を張れるような、人生ではなかった。けれども今、彼は満足し…感謝していた。


そしてそれと同時に、今はシスターがあの時言っていた言葉を実感したような気がした。


在るか在らざるか、ではない。結局のところ、当人が信じるか信じないか。信じていればその人物の中で在るのだし、信じていなければその逆。それは、心や愛と言ったものと同じ。


目に見えないからこそ、己の選択でしか判断することができない。先ほどの戦いだとて、神に願いを叶えてもらえたと思えばそうだし、ただの偶然で片付けることだってできる。


けれども…いや、だからこそ。今の彼は、感謝していた。何故なら、仇を討たせて貰えたから。


例え…それが実際は神様のオカゲではなかったにしても、“あの時”に“あの場”で“あの力”を手に入れたことが【奇跡】だった。

だから彼の心は今、全く信じてもいなかった神に対して感謝の気持ちていっぱいたった。


我ながら調子の良いやつだと思い、ルークは苦笑した。


…ま、今更だよな。そんな事を思いつつ。


遠に死んだ身。今更気づいたところで、今更感じたところで…何も変わらない。

何故なら、もう彼には【この先がない】のだから。

未来に活かすことも、誰かに伝えることもない。


…これから、どうなるんだろうか…?


ふと、ルークはそんなことを考え始めた。


死後どうなるか、勿論彼は知らない。


…ただ。できる事ならば、シスターや子ども達にもう一度会いたい…というのが、偽りざらなる彼の本音だった。とはいえ、彼らが行くのは天国だろうけど、俺はなあ…なんて思ったりもする。


もし、天国があったとして…果たして自分が天国に行くことができるのか甚だ疑問だというのが彼の見解だった。


否、この場合諦めているというのが正しいのだろうか。


一点の曇りのない、間違いのない人生を送ることができるのなら…そうしたかった。傷つかない、誰も傷つけない人生を送れるのなら…そうしたかった。


でも、できなかった。



地べたを這いずり周り、騙し奪い合い、それでも生きて。生き て、生きて、生き残ったからこそ…大切なものができた。

大切なものを、大切だと感じることができた。

だからやはり、何度同じ岐路に立たされていても…自分は同じ路を辿り、ここにいるだろうと思う。


そう考えると、その結果が例え地獄行きだとしても…悔いはない。

ただ、その大切な者達にもう会えないというのが、この上なく悲しかった。

ぼんやりと、暫くその空間に漂っていた。


…どのくらい、そうしていただろうか。


突然、眩い光が空間を埋める。まるで…さっきの不思議な刀と同じような、白色のその光。


柔らかくて温かい…そんな光。


その眩しさに目を閉じ、自然とそれに身を任せたていた。


そして次に目を開けた時…そこにいたのは、シスターと子供達だった。


「…ルークっ!」


始めに耳に入ってきたのは、シスターの心配したような声。ぼんやりとした視界ながらそちらに向けると、涙を目一杯溜めた彼女がそこにいた。


「シスター…」


「良かった…気がついたのですね」


彼女のその言葉を皮切りに、次々と声が挙がる。


「ルーク、目を覚ましたのー?」


「大丈夫か?」


「良かったー!」


わらわらと彼に寄っては、顔を覗き込んでくる。


「どうしたの?ルーク…」


そのうちの1人が、彼の顔を見るなり心配そうに問いかけてきた。


「…え?」


「どこか、痛いの?」


そう言いながら、彼の頬を指差す。


ルークは怪訝そうにしながらも、自分の頬に手を当てた。…そこで始めて、自分が涙を流していることを知った。

知らぬうちに、涙が溢れては零れていく。

彼の心の中は、色々な気持ちが混ざり合っていた。守れなかったことの、申し訳なさ。哀しみ。怒り。けれども何より…再び出逢えたことへの喜び。そして、感謝。様々な気持ちが混ざり合って、心に収まり切らない感情が、涙として溢れ出てきているようだった。


ただ1つ、確かなことは…ここが死後の世界でも、皆に会えただけで逆に彼は死んで良かったと思うことだった。


「ルーク、どっか痛いの?」


そう再度問いかけてきた子どもの方が、何故か痛みに耐えているかのように泣きそうだった。


「…っ。大丈夫だ」


彼は涙を堪えつつ、その子どもの頭を撫でる。その子は、泣きそうな顔から一変、気持ち良さそうに目を細めていた。


「ルーク、本当に大丈夫なのですか?どこか、痛いところなどはないですか?」


少し間を置いてから、シスターは心配するように覗き込んで言った。


「え?あ…大丈夫」


「なら良いのですが…傷は痛みませんか?」


「…傷?」


シスターの質問に、ルークは首を傾げる。先ほどから痛いとかどうこう聞いてくるが、死んでからも、生きていた頃の傷って残るものなのか?…という、頓珍漢な疑問を内心呟きつつ。


死んだと思っている彼にとっては、至極当然の疑問であるが。疑問が解決されぬまま、身体を少しその場で動かして確認した。


「傷は大丈夫だけど、なんだか身体が怠いな」


「そうですか…。身体の怠さは、傷と筋肉の損傷を治したことによるものでしょう。今日はゆっくりと休んでいて下さい」


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


ルークは彼女の言葉を遮るように、慌てて言った。


何せ、シスターの言葉は死んだ者に対するそれにしてはオカシイものなのだから。


「治療だとか食事だとか…俺は死んだんじゃないのか?」


あまりに直球な言葉に、今度はシスターが驚いたように目を丸めていた。


俺の反応って、おかしくないよな?…と思わずルークが自身の言葉を擁護してしまうほど。


再度、彼は頭の中でこれまでの出来事をなぞる。教会が炎に覆われて崩れ落ち、そこにいて死んだハズのシスターと子供達が目の前にいて。そして、あの巨大な魔物と無謀な戦いをした自分。


死んだからこそ、今こうして再会できたハズで…。


やっぱり、自分の質問はおかしくないと結論づけた。


「落ち着いて下さい、ルーク。貴方は死んでいませんし、私たちも死んではいませんよ」


「え?…は?はあああぁぁ?!」


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