第4話 妬み
「では、ピエトラ・リノチェローンテを無事討伐できたことを祝して――」
『乾杯!!』
その夜、セレーネが主催した、ピエトラ・リノチェローンテ討伐祝賀会が催された。祝賀会と言っても、身内だけが集まるこじんまりとしたパーティーだ。
もちろん、今回の立役者であるルッツとペトラも招待されている。
「しかし、あの兵器はすごかったなぁ。ぜひ、うちも導入してみたいものだ」
「それは無理だな。あれは自分達のつてで特別に制作してもらったものだし、それに購入費はもちろん、維持費もバカにならない。僕たちはスポンサーがいるから何とかなってるだけだからな」
セレーナがティーガーⅡを遠回しに欲しいと言ってきたが、ルッツは費用的側面から無理だと断じた。
「そうか、それは残念だ。しかし、スポンサーか……。我々はギルドからのクエスト達成量と住人からの寄付金が収入源だからな。大口スポンサーがいるのはうらやましい」
「だったら、この国の貴族とかに依頼してみたら? 街の安全を守ってるのは事実だし、この街は貴族の別荘がたくさんあるんだから、何人か見つかるわよ。何あったら、あたしが一筆書いてもいいし」
ペトラは、セレーナのスポンサー探しに協力してもいいらしい。この辺りは、グーベルク王国の王女である彼女にしかできないだろう。
「ああ、すまない」
その後、宴会は徐々に盛り上がりを見せた。
◇◆◇◆◇◆
宴もたけなわとなった頃、楽しい時間に水を差す出来事が、突如として起こった。
「大変です、隊長! 賊が侵入した模様です!!」
外で警備に立っていた隊員が、セレーネに焦った様子で報告したのだ。
「何っ!? すぐに捜索しろ!」
「隊長、お客様を安全な場所へご案内いたします。よろしいですね?」
警備の責任者であったテオドーレが、冷静な様子でセレーネに提言した。
「そうか。なら、客人はお前に任せた。私は、賊の方を片付ける」
「わかりました。ではお二方、こちらへどうぞ」
テオドーレの案内に従い、ルッツとペトラは付いて行った。
◇◆◇◆◇◆
ルッツ達は、ある一室に着いた。だが、ルッツとペトラは部屋に入った瞬間、異様な空気を感じ、警戒を強めた。
「ここまで来れば、もう安全です」
安心させるようなセリフをテオドーレは言ったが、彼から放たれている雰囲気は、全く逆であった。
「賊がどういう連中かわかりませんが、とにかく大丈夫です。あなた方が無能力者と、異能の能力が低いとはいえ、ここの防御は完璧ですから」
『無能力者』と『能力が低い』という言葉に、妙な力がこもっている。
そしてとうとう、テオドーレの本性が現れた。
「全く……無能力者と、低能力者のコンビなのに、名を上げやがって……。無能は無能らしく、地味~に暮らしていればいいものを……。目障りなんだよ、お前ら!!」
そう叫ぶと、突然、水の異能をルッツ達に放った。二人は間一髪で避けたが、後ろにあった壁がきれいに真っ二つに切れる。
それもそのはず。テオドーレの水の異能は、岩を簡単に切る事ができる。
「逃がすか! お前ら、出番だ!!」
テオドーレの号令で、部屋に潜んでいたテオドーレの仲間たちが数十人現れた。そして間髪入れず、異能による攻撃を放とうとする。
「ペトラ、目くらましだ」
「了解」
部屋に入った時に感じた空気からこうなる事を予測していたルッツとペトラは、取り乱すことなく対処する。
ペトラが光弾を上げ、強烈なフラッシュをたく。
『うあっ!?』
その場にいる全員が、強烈なフラッシュで目を一時的にやられ、動きを止める。その隙に、ルッツとペトラはアスカと連絡を取り、M870ショットガンを取り寄せる。そして、鎮圧用のゴム弾を装填する。
今回は人数が多いので、前回使ったような十字に開くタイプはなく、普通の銃弾を模したゴム弾だ。
目くらましの発光が終わった瞬間、ルッツとペトラはショットガンをぶっ放した。しかも一発や二発ではなく、何発も。
そのせいで、ルッツとペトラを襲おうとした集団は、一人、また一人と倒れていく。
「クソ……調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
再び水の異能を発射しようとするテオドーレ。だが、それは闖入者によって止められてしまう。
「どうした!? 何の騒ぎだ!?」




