第5話 2回目の船旅
飛び込んできたのは、セレーネだった。強烈な閃光と銃声に気が付き、とっさに駆けつけてくれたらしい。
そして、テオドーレたちがやらかそうとしていた事がバレ、さらに彼らの危険な思想も発覚。全員捕縛され、警備隊に引き渡されたという。その際、テオドーレ側に目立った抵抗はなかった。と言うのも、セレーネは火の異能使いなのだが、その能力は高く、その気になれば岩を簡単に溶かしてしまうのだ。
その恐ろしさを知っているが故、抵抗しなかったのだ。
その後の取り調べにより、事件の全貌が明らかになった。そもそも、賊の侵入事態がウソにまみれた架空の物で、ルッツ達をテオドーレの仲間が待ち伏せしている場所までおびき出すとともに、セレーネらをはじめとするルッツを好意的にみている一派から引き離す目的だったらしい。
しかし、結果を見ればわかる通り、相手を無能力や低能力だからと甘く見ていた事が災いし、全員逮捕されてしまったのだ。
◇◆◇◆◇◆
後日、ルッツとペトラはお詫びにとセレーネに誘われ、入浴料は全てセレーネ持ちで温泉に入りに行くことになった。どうやら、セレーネお気に入りの温泉があるらしい。
一行は男女に分かれ、温泉施設に入った。
だが、脱衣所を出た時、それは起こった。
「ルッツ!? なんであんたがここに!?」
「それはこっちのセリフだ、ペトラ! ……まさか」
そう、この温泉は、ルッツとペトラが最初に入った温泉同様、脱衣所だけ男女別で、中は混浴という構造の温泉だったのだ。
そしてルッツは、こうなる事を知っててここに来させた犯人に気付き、その人物を凝視した。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
その犯人、つまりセレーナは、どこからどう見ても変態としか思えないほど、顔を紅潮させて息を荒くしていた。
どうやらセレーネは、男性の裸体を眺めるという趣味があったらしい。
普段見せていた、毅然とした振る舞いからかけ離れた様子に、ルッツとペトラはため息を吐くしかなかった。
◇◆◇◆◇◆
数日後、ルッツとペトラは、オット・スプリント・ミラーノの港に来ていた。休暇を終え、次の街へ向かうためである。
「……本当に行くんだな?」
セレーネが心配そうに聞いた。それもそのはず。ルッツ達がこれから向かおうとしているのは、自分達を取り込み、利用しようとしたルレアラス王国なのだから。
「ああ。行くぞ」
「大丈夫。何の作戦立てないまま、あたしたちは期間な場所には向かわないわ」
ルッツとペトラは、覚悟に満ちた表情で言い切った。
「……そうか。そこまで言うなら、私は止める事はできないな。気を付けてな」
「そっちこそ、無茶するんじゃないぞ」
「早めに人員補充、しときなさいよ」
それぞれ別れの言葉を交わすと、ルッツとペトラは船に乗った。そして陸が見えなくなるまで、セレーネに手を振り続けたのである。




