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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第9章 同甘共苦
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第69話 勧誘

 演劇は無事成功した。


 生徒達は校庭でキャンプファイアをしていた。


 僕は一人屋上でそれを眺めながら、頭を冷やしていた。


 先程の温もりを思い出して口元に手をやる。

 ソーニャさんの時も思ったけど、女性同士のキスはこの世界では案外普通なのかな……?

 彼女達の貞操を護るためにも、僕は一層気を引き締める必要がありそうだ……。


「何か、嫌なことでもありましたか?」


 急に横から声がして振り向くと、アナベラ学園長がいた。


「学園長……」


 いつも戦闘狂の学園長しか見たことがなかったから、こんなに澄ました顔をしている学園長なんて初めてだ。


「そうしていると、ライラ様の叔母さんって感じがするんですけどね……」

「ライラちゃんは、迷惑かけていませんか?」

「……少なくとも、学園長より迷惑だと思ったことはないですよ……。むしろこちらがお世話になりっぱなしなくらいです。()()()()()()()はあまり似ていらっしゃらないようで良かったです……」


 前科があるので警戒しつつちくちくしておく。


「あら?まだあの子とそんなに仲良くないのですね」


 えっ、なにその不穏な言葉……。

 まさかライラ様も戦闘狂だったりするの……?


「今度ソラ様にもお茶会でご挨拶させていただきますとお伝えくださいな」

「は、はい……」


 そう言うと、学園長も僕と屋上の柵からキャンプファイアを楽しむ生徒達を見下ろす。




「先程の演劇、とても素晴らしいものでしたよ」

「ありがとうございます……」

「何か、ございましたか?」

「…………」


 僕はソラのことを知っている学園長ならいいかと思い、話をすることにした。


「向こうの世界で、私は中学2年のときにクラスメイトにお願いされて文化祭の演劇部のヘルプをしたことがあるんです。演劇の役を決めていたとき、ある人が誰もやりたがらない役を、一年の子に押し付けようとしたんです。」


 もう3年も前の話になるのか……。


「私は部長に進言して、その子の代わりにその役をやることにしたんです。そして文化祭の本番で、周りの子がみんな緊張していたせいかは分かりませんが私はその役で一番目立ってしまいました。」

「……」


 学園長はなにも言わず、聞きに徹してくれた。


「私がいじめられるようになったのはそれからでした。まあ結局今になってみると、演劇はきっかけにすぎなかったんですけどね……。それでも記憶というものは曖昧なもので、私は演劇そのものがトラウマになってしまっていました。」


 そこまで話すとふぅと息をついた。

 柵の下の生徒達を見るのをやめ、学園長の方を向く。


「でも聖徒会の皆さんとやった演劇のお陰で、私は立ち直ることができました。演劇の楽しさを知れたのも、学校の魅力を知れたのも、ここに来てからでした。」


 学園長も正面を向く。

 それに合わせて、僕は頭を下げた。


「お祖母ちゃんが(のこ)したこの聖女学園を、素晴らしい学園にしてくれてありがとうございます。」


「ふふ、()()()にそう言われるのでしたら、今日まで頑張ってきた甲斐はあったみたいですね……」


 目を細める学園長に、少しだけかつてのお祖母ちゃんの面影を感じた。


「私も、在学中に返せるだけの恩返しはするつもりです」

「在学中と言わず、どうでしょう?私の後釜になってみる気はありませんか?初代学園長でもあらせられる楓様がお聞きすれば、とてもお喜びになるかと思いますよ。」


 ここでも高校教師をやっていたんだ、お祖母ちゃんは。

 また英語でも教えてたのかな?


「……それもいいかもしれませんね。ですが、学園長が引退する理由に利用しようとしていませんか……?」

「……バレてしまいましたか。うまく言ったつもりだったのですが……」

「……日頃の行いを振り返ってから言ってくださいよ……」


 そういうところが締まらないんだよ……。

 まあそれも学園長の個性なのかもしれない。


「まああと2年ありますから、じっくり考えていただければと思いますよ」


 僕が卒業したら即学園長にするつもり……?


 というか男が女の花園の学園長になるのは大丈夫なんだろうか……?

 いや、それ以前に男バレしたらこの学園にいられないから、そもそも卒業できるかすらわからない……。




「では、()()()()()の積もる話に華を咲かせてください」


 ふと何かに気付いた学園長はそう言い残して屋上を去った。


「シエラさん、ここにいたんですね」

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