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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第3章 同甘共苦

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第68話 接吻

 多目的ホールの舞台袖。

 本番を前にし、僕は徐々にトラウマを思い出し震えていた。


「大丈夫ですか、シエラさん」


「は、はい……」


 その震えを押さえるように、リリエラさんが手を取った。


「私達は今日のために頑張ってきました。 ですから、きっと大丈夫です」


「リリエラさん……」


「共に乗り越えましょう!」


 あのときとは違う。

 今の僕にはみんながいる。


 自然と震えは止まっていた。


「ありがとうございます。 行きましょう!」


 仲間ともう一度立ち上がる。

 前世の男子校に全て置いてきた青春を、僕は華の女学園で取り戻していた。



 ◆◆◆◆◆



 舞台にはサクラさんや王妃、たくさんの人達が見ていた。


「くっ……」


「奥方様っ!?」


 物語は終盤、ソラが魔王の毒にやられるシーンだ。


『――現世(うつしよ)の……万物を覆滅(ふくめつ)せし神よっ……今ひと度、(われ)に力を……貸し与えたまえ――』


 支えてくれる涼花様(シルヴィアさん)に、僕は魔法陣を展開する。


『――ホーリー・デリート――』


 それと共に逆側に持っていたミニチュアステッキで中級魔法の『光の壁(ライトウォール)』を築き上げ、立体的に見なければソーニャさん(魔王)と重なっているように見える構図だ。

 僕が貫通を気にせずに魔法を放てるのも、事前に多目的ホールを極限まで強化しておいたからできる芸当だ。


 そして魔力切れの演技と共にふらっと倒れる僕に、駆けつけるソフィア王女。


「ソラ様!!」


「お祖母ちゃん……仇は、取ったからね……」


 僕は脱力してソフィア王女に支えられる。


「そんな……ソラ様……!!」


 突如時間が止まったようにみんなの動きが止まり、僕とソフィア王女にカッと灰色の照明があたる。


 すると天からリリエラさん(エリス様)が舞い降りて来る。


「ああ、(わたくし)の愛し子ソラよ……」


 エリス様は基本的には聖女くらいしか見ることも声を聞くこともないので、大分美化されているようだ……。

 そう考えると、僕とエルーちゃんは相当貴重な体験をしたんだな……。


 無言で空中から近付くリリエラさん(エリス様)


 目をつむっているが、照明が遮られる感覚を覚える。

 いよいよキスシーンかと思い、右目の半目を少しだけ開く。


 すると、正面にリリエラさんの顔がぼやけて見えた。


 あれ……?

 唇は、()()()よね……?


 心配になってきた僕はそのまま半目のまま近付くリリエラさんを見ていたが、僕の顔の正面に来ると目が合った。


 えっ、ちょっと!?

 ()()()()()()の!?


 リリエラさんは目をつむりそのまま僕の正面から覆い被さる。


 ちょっ、そんなの駄目だよっ!?

 リリエラさんには、ルークさんという大事な人がいるんだからっ!!


「っ……」


 でも演技中だから、声が出せない。

 僕はなんとか抵抗すべく自分の口を覆うようにミニ障壁を張った。


 そのすぐあとに、唇に熱さを感じた。


「んっ……」


「んぅ……っ!」


 押されたところから、じわりと温もりを感じた。


 その熱を間接的に交換してしまう行為が、僕の背徳感を駆り立てていく。


「「きゃーーっ!」」


 僕の動揺も、手の震えも、すべて歓声に掻き消されていく。


 やがてそれが鳥肌となって僕の肌に現れ出したとき、唇はゆっくりと離れていった。


 障壁に気付いたリリエラさんは、他の誰にも聞こえない声でぼそりと呟いた。


  (「別に、直にしても)  (よかったのに……」)

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