第491話 浴場
久々に動いたことで少しお腹がすいていた僕は、お義父さん達と夕飯をいただく。
「ソラ様。はい、あーん♪」
「んむっ……」
……何故かメルヴィナさんに食事のお世話をされている。
お粥を口に運ぶメルヴィナさんはいきいきしている。
「ずるい、私もしたいのにっ!」
「抜け駆けなんて……」
え、なんでお義母さんもエルーちゃんもそっち側なの……?
「ふっふっふ、これはお姉ちゃんの特権なのです!」
「そんなわけないわよね?お義母さんでもいいでしょう?私からも食べさせてあげるわ!」
「わ、私も……」
「そ、そんなにいっぱい……!食べられないですよ……」
僕がそう言うと、何故か三人とも押し黙った。
「「「……」」」
「皆さん、どうしたんですか?」
メルヴィナさんが、影でもついたように真剣な面持ちになる。
「今のは、とてもえっちですね……」
え、急に何……?
「わ、私もそう思います……」
「ソラ君は、もう少し自分の魅力に気付いておかないと、将来痛い目を見るわよ」
え、なんで僕が怒られてるの……?
「ははは、ソラ君は人気者だね」
「むっ、お義父さんだって、もっと食べるべきですよ。私が食べさせてあげます!」
「い、いや私は……」
ウインナーをフォークで取ると、隣にいたお義父さんの口に運んだ。
「はい、あーん」
お義父さんも最初は恥ずかしそうな顔をしていたが、僕の押しに負けたのか受け入れてくれた。
「マーク、ずるいわ!私だって……」
「女性にするのは恥ずかしいですから、勘弁してください……」
「ソラ様のウインナーを、旦那様が……」
「誤解を招く発言しないでくださいよ」
食事中にする話じゃないでしょ。
「わ、わあっ……!」
お義父さんに一緒にお風呂に入ろうと提案され、お風呂場に移動すると……。
なんか、広くなってる……!
いや、これはお風呂というより……。
「ど、どうしたんですか、これ!?」
「梛の国に赴いたときに向こうの公爵にお勧めされたんだ。セレーナも気に入ったし、ソラ君としても懐かしいかなと思って。温泉技師を招いてね、最近改装したんだよ。どうだい?」
これは紛うごとなき温泉、大浴場だ。
石畳を基調としており、梛の神流ちゃんの家で見たヒノキの浴場とは違うタイプの香りがしてくる。
「流石に源泉はないから、魔道具頼りだけどね。雰囲気だけでも楽しみたくて」
「すごい……!」
「さ、背中洗うよ。まだ本調子じゃないのだろう?」
「じゃあ、あらいっこしませんか?」
お義父さんと背中を交互に洗う。
背中の大きさが倍くらい違う気がする。
「なんだか、懐かしいな。ルークが子供の頃を思い出すよ」
「ルークさんは、どんな子だったんですか?」
「よく外に出て、泥んこになって帰ってきていたよ」
「えっ……?意外ですね」
ルークさんがそんな活発な男の子だったなんて……。
「ここは田舎であまり娯楽がないからね。セレーナからよく怒られていたよ」
「お義母さん、怒ると怖いんですか?」
「……怒る姿も可愛いんだけどね、強かではあるかな。理詰めで追い詰めるタイプで、いつも言い負かされてしまうんだ」
お義母さん、怒らせないようにしよう……。
「私はもう上がるけど、ソラ君はもう少し入っているといいよ。いつも寮でシャワーだけだと疲れが取れないだろう?」
「ありがとうございます」
お言葉に甘えて石風呂を堪能する。
水の流れる音だけがこの空間を支配する。
この空間が好きだ。
「ふん、ふ、ふ~ん♪」
誰もいないこの空間で元気を取り戻した僕は、鼻唄を奏でていた。
「あら、いい声ね」
「へ……!?」
あれ、なんかデジャヴが……。
ガラガラと開けた音と同時に、三人がバスタオル姿でやってくる。
「お義母さん、メルヴィナさん、それに、エルーちゃんまで……!?」




