24話 日の出
外に出ると、東の山々の稜線がその後ろから登ろうとしている太陽によって照らし出されていた。鳥たちはさえずり、濃紺から淡い青に染まり始めた空を気持ちよさそうに飛んでいる。一日が、始まったのだ。
ルナとハインツは出てきたばかりの洞窟を振り返る。もう、一生訪れることがないであろう、その洞窟。初めて入った時は闇から冷気が流れ出していたように感じたが、もうそんな気配はない。
ハインツは、背負った一人の男をもう一度背負いなおした。今回の戦いで最も傷つき、最も活躍した、その男、寛人はいまだ眠ったままだ。その体にはブルートから受けた刺し傷はない。安らかな寝顔を見る限り、言葉を発したことで傷ついた体の内部も、元通りになっているのだろう。
ルナの手には寛人のホワイトボード、背中には紐で肩にかけれるようにしたナイトソード。寛人が身に着けていたものだが、目覚めない寛人をハインツが背負って帰る代わりに、ルナが寛人の持ち物を持つことになったのだ。
ルナは洞窟に別れを告げる。三人の冒険者が吸血鬼に殺され、そして最後にその吸血鬼が自分の命をある一人の男に託して死んだ、この洞窟に。
ハインツの声で、ルナも振り返る。ハインツはすでに歩き始めて、数メートル先で待っている。
朝日が昇り、一日が、今日もつつがなく、当たり前のように始まろうとしている。新たな一日を迎えることなく死んでいったものたちがいても、家族を失い壊れてしまったものが誕生しても、仲間のために命を懸けた男が死にかけたとしても、呪縛から解き放たれたものがいたとしても、その日は多くの者たちにとってはただの日常。誰が死のうが、傷つこうが、解放されようが、それは世界にとってほんの小さなことなのだろう。
ルナは仲間のもとに駆ける。ハインツの背で眠る青年は小さな寝息を立てている。思えば、まだ出会って二日目の朝だ。なのに、ずいぶんと長い間ともに過ごしてきた気がする。
「――俺さ、お前らと一緒に冒険するわ」
ハインツが前を見たまま、どちらにかけたということもない声を出す。それは宣誓の意だったのだろう。
「私も」
ルナも明るく言う。
「ヒロトはどう思うかな?」
「なに、こいつのことだ。黙って受け入れてくれるさ」
「――そうだね」
東の山影から日が顔を出す。角度が小さい日の光は、三人の冒険者の影を長く映し出す。新たな英雄たちの、船出の時だ。
――――一生と呼んでもいいだろう、長い付き合いをする者たちは、こうして出会った。
一章完結です。幕間を少し挟んでから二章を書きたいと思っています。
いつも読んでくださっている皆さん、はじめて読んでくれた皆さん、ありがとうございます!
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