番外編 鳥と山の会合
感想頂きましたレフェル様。ならびにこのお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
なおこのお話を書くにあたりレフェル様には許可をとっておりますレフェル様。ありがとうございます。
料金所で通行料を払い通り抜ける。
「………さて、と。」
ボクはそう言いながらビンディングシューズをペダルに固定して富士山五号目を目指し、スバルラインを登り始めた。夏のインターハイから半年以上も前の事なのについ昨日のようだよ。…あ、ここで、岸川君が倒れたんだ。あの時は、思わずブレーキを握りそうになって佐渡君に怒られたっけ。佐渡君も助けたかったのにボク達を先に行かせる為だけに必死になってペダルを回してくれたんだよね。
しばらく走って、ボクが白石君に追いついた所に行きついた。ボクと白石君の争いは白石峠から始まって、この富士山での争いは単なるその中のひとつに過ぎないんだよね。きっと、これから先もボクと白石君は玉座をかけて争いあうんだろうな。
そんなことを考えていたら、早く富士山五合目に行きたくなり、立ち漕ぎしようとしたそのとき、
「みゅー♪」
鳴き声と共に獣耳と尻尾の生えた幼女が進路に割り込んできた。
「にぎゃあ!」
とっさにブレーキを握る。滑り止めの溝がないタイヤはするすると氷の上を走っているかのように滑り、そして幼女の眼前でなんとか止まれた。
「大丈夫?」
「みゅ?」
ボクの問いに幼女はこくこくと首を縦にふる。
「よかった。お父さんかお母さんか家族の人がどこにいるかわかる?」
幼女は首をかしげて道の先を指差していた。どうやら、富士山五合目にいるらしい。幼女を胸元に入れる。
「しばらくそうしてて。」
幼女に忠告してからロードバイクに跨がる。辺りを見ながらペダルを回す。
しばらく景色を見ながら走る。
「ねえ、よければボクの話を聞いてくれる?」
「みゅ?」
唐突なボクの言葉に幼女は首をかしげながらも耳を傾ける気になったらしい。
「ボクにはライバルとも言うべき人がいるけど、未だに勝てたためしがない。皆のためにも勝ちたいのに、もしかしたら一生勝てないって気がして不安になるんだ。」
そこまで話してボクは首を横に振る。
「ゴメン。変なことを言ったね?
さぁ。登りは終わった。後もう少しだからね?」
ボクはそう言ってサドルに座り直した。しばらく木々がない平坦な道を走っていると、
「あ、ねえ。その子、うちの子なんだ。」
ボクに胸元に入れた幼女と同じ顔のちっちゃな女の子がボクに声をかける。
「そうなんだ。見つかって良かったよ。」
そう言って、サイクルジャージのファスナーを下ろし幼女をちっちゃな女の子に渡した。
「みゅ。」
「え? うん。諦めないで。頑張ればきっと届くよ。だって。」
幼女の言葉の翻訳にボクは笑みを浮かべながら頷いた。
「ありがとう。ボクは登坂山道。」
「私は雨宮つぐみ。この子はつぐぴょん。」
ボクが差し出した右手をつぐみちゃんが優しく握り返していた。




