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冬季ロードレース 予想外な事態

このお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。



「いないだって!」


 俺の報告に大川部長が驚いていた。


「すいません! この人混みのせいで登坂を見失いました!」


 俺の報告に大川部長は慌てて後ろに振り返る。


「ま、まさか落車してるんじゃ!」

「バカ野郎!! 不安になるようなことを言うんじゃねえ!」


 俺の言葉をかき消すように松郷先輩が叫んでいた。


「俺、ここで待機して、山道を引っ張って来ます!」

「バカ野郎!! スプリンターが平坦な道を引っ張る役目があるだろうが放棄してどうする!」


 大川先輩の叱責にブレーキを握ろうとした手が止まる。

梁川先輩はスピードはあっても長続きしない。チームを長時間引っ張り続けるのは無理だ。松郷先輩はクライマーであって平地を引っ張って走るのは多分無理。大川先輩に佐渡は俺達が疲れた時、代わりに引いて足を休ませてくれる役割がある。この状況で俺が抜けたら、2人の負担が大きくなるはずだ。そう、思ったら佐渡が失速し始めた。メカトラブルかと思ったら、


「すみません。大川先輩。機材に異常が起きた模様です。先走っててください。

1人の御荷物抱えて走って来ますから。」

「何言ってる! お前だって抜けてもらうわけにはいかないんだ!」

「大川先輩。確かに今誰かが抜ける訳にはいかないでしょう。しかし、ラストが登り坂であるいじょう、あいつの力がどうしても必要です。お願いします。待たせてください。」

「大川。俺からも頼む。あいつに山道を引っ張って来させてくれ。」

「頼む。大川。オールラウンダーなら1人抜けても問題ないはずだ。」


 松郷先輩と梁川先輩が支援に回ってくれてる今しかない!


「頼みます! 部長! 佐渡に山道を引っ張らせてください!」

「ったく、しょうがない! だが、佐渡! 必ず引っ張って来いよ!」

「っ!! はい!!」


 大川先輩の言葉に答える佐渡を切り離して俺達は走る。



SIDE 山道


「…きろ! 起きろ! 挑戦者(チャレンジャー)!」


 聞き覚えのある声にボクは意識を覚醒させる。


「っ!!」


 身に起きた出来事を理解して跳ね起きる。

 レースで走る人達に押されて後ろの方に流されて追い付こうとペダルを回したら、前方の集団落車に巻き込まれたんだ。きっと白石君も同じ状況だろう。


「白石君! ボク達が気絶してからどのぐらいたった!」

「だいだい5分ぐらいのはずだ。」


 5分も! 白石君の答えにボクは驚いていた。


「急いで合流するつもりか?」

「うん! 急いで合流しないと!」

「無理だ。諦めろ。」

「やってみなかったらわからないよ!」


 思わず白石君に噛みつくけど、それにも白石君は冷静に答えた。


「無理だ。5分以上離されている。その上クライマーは平坦では、スブリンターには届かない。」


「…でも、ボク一人じゃ無理でも2人なら追いつけるんじゃないかな?」

「………無理だ。今の俺と協調しても追いづけない。途中でへばるだけだ。」


 白石君の予想外の答えにボクは心底驚いていた。


「まさか、さっきの落車のせいで自転車か体が故障を?」

「いや。そっちじゃない。ただ、ボトルが割れた。」


 白石君は答えながらボトルを抜いて見せた。確かにボトルに穴が開いて水が漏れていた。


「幸いにも今は冬だが、長距離を走行するロードレースには水は欠かせない。幸いにも横浜に給水所があるのは知っているが、どこにあるか知らない。」


 白石君の言葉にボクは自分のボトルを2つ取りだしほとんど空のボトルに片方のボトルを移して白石君に差し出す。


挑戦者(チャレンジャー)?」

「ボクも白石君も共にチームを追いかけなきゃならない。だから、チームと合流できる(ゴール)まで協調しよう。」


 ボクの言葉に白石君は笑みを浮かべながら言い放つ。


「俺の走りに少しでも遅れたら捨てるからな。挑戦者(チャレンジャー)登坂山道。」

「上等だよ。そっちこそ、ボクに捨てられないようにしなよ? 王者(おうじゃ)白石翔。」


 ロードバイクに跨がりながら答え、ボク達は走り出した。チームと合流するために。そして、その先にあるゴールへと誰よりも速く到達するために。

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