王者の走り
このお話をを読んでくださる皆様ありがとうございます。
「はぁ?」
「はぁ? じゃないわよ! 翔! この前サボった分の補習授業、今日なの忘れてないでしょうね!!」
戸惑った俺の声に幼なじみの冬月雪華が声を荒げる。
「い、いや、しかし、今日は大切な日なのだ。」
「しかしもかかしも無いわよ! 速く行かないと先生カンカンよ?」
俺の言葉を雪華はバッサリと一蹴する。
「雪華。」
「な、何よ?」
雪華の顔をジッと見つめると雪華は顔を紅くする。
「雪華が俺の為に色々してくれるのは嬉しく想う。」
「い、いや、べ、別にあたしは翔が留年して欲しくないし、来年も同じクラスになりたいなって。」
ボソボソと何か言っているが、聞き取れない。
「どのような言葉を弄ぼうとそれは本当だ。だがな、今の俺はロードバイクが全てなのだ。」
そう言いながら手をぐっと握って力説する。
「俺は王者の戦場を1位で走り抜け、赤和学園に玉座を座らせ続けたい。それこそが、俺の使命だ! 頼む! 見逃してくれとは言わん! せめて、選抜レースが終わるまで待ってくれ!」
「うん。無理。」
俺の頼みを雪華はキレイなまでに爽やかな笑みで拒否する。
「ほら、キリキリ歩く!」
雪華は俺のブレザーを引いて歩く。
クソ! このままだと、選抜レースに間に合わん!
意を決して、その場にブレザーを脱ぎ捨てる。
「さらばだ!!」
そう言い捨て部室まで逃走する。
「…お。来たか。おせーぞ!! 皆もう準備でき…て…んだ……。」
新部長の大野は俺の姿に硬直していた。確かに今の俺の姿を見れば普通はそうなる。
「じ、十国! 警察に通報してくれ!
校内に全裸の変態が現れたと!」
「はい。」
「待て待て!! トランクスは死守したから全裸じゃない!」
「内容変更だ! 下着姿の変態現れたと!」
「だから待ってくれ!俺の意志でこんな格好になったわけじゃないんだ!!」
「だろうね。で、どうしたの?」
からかわれた。その事実に気づいて肩を落とすが一応事情を説明する。
「雪華に襲われた。」
「雪華ちゃんに? 何でまた?」
「わからん。最初は俺を補習授業に連れて行こうと必死だったのに、何故か俺の服を脱がそうとしだしたんだ。」
ブレザー、Yシャツを脱いだあたりから変なスイッチが入ったらしい。
目に妖しい光が灯ってアンダーシャツとズボンを剥ぎ取ろうとする雪華がすごく怖かった。なんとか剥ぎ取られた物と自ら脱いだ物は取り返し、逃走したけと、着直すヒマが無かったのだ。
「お前も大変だな。とりあえず、着替えてくれ。この時期にその格好は見ているこっちまで風邪を引きそうだ。」
言われなくても。心の中でそう言って更衣室に入る。
「お前ら。準備は出来たな? ルートは事前に説明した通りのルートを通って正門に戻って来た順に参加者が決まる!」
俺はその言葉に納得しながら、ヘルメットをかぶりロードバイクに跨がる。そして、ビンディングシューズをペダルに押し込んでパチンと固定させる。
「位置について、よーい、どん!!」
大野の言葉とともに俺達、クライマー5人は同時に走り出した。正門の勾配の緩く短い坂を駆け下り平野に出る。しばらく走るが、俺は最後尾に立っていた。
「1番後ろになってんじゃねぇか!! 何やってるんだ!!」
「安心しろ。タダのハンデだ。このくらいの緊張感はあった方が面白い。」
サポートカーで追走している大野に向かってそう返した。もう少し走ると、斜度20%の坂が10キロ程あり、下り坂。そして、裏門前の短いが険しい登り坂がある。
「十分だ。余裕で追いつける。」
そう判断してペダルを回す。
しばらく走って坂に到達する。やはり、坂は良い。走れば走るほど、早く頂上まで駆け上がりたくなってしまう。その逸る気持ちを抑えきることができずにペダルを回す勢いを早めてしまう。
さして走らぬうちに1人目をとらえる。
少し先に走る2人目を追い抜き、3人目を抜き去る。しかし、最後の1人が見えない。
「どうやら、それなりに距離が離されたようだな。」
呟きながらシフトレバーを操作する。ガシャンと音がなり1段重くなる。それまでよりも速く走り、4人目捕らえる事が出来た。
「やるではないか! 思わずギアを上げてしまったぞ!」
驚愕の表情を浮かべる2年の男を横目にペダルを2段階重くしてサドルから腰を上げる。何か口にしていた男を置き去りにして、加速する。
あっという間に登り坂を越え、下り坂に到達する。
落車を防ぐためサドルに腰をおろしてペダルを回す。
下り坂を駆け降り、そして、登り坂を登り、赤和学園の裏門に到達する。
そして、登り坂を登り、赤和学園の裏門に到達する。
「お疲れ様。」
ロードバイクを上下逆さまに置き一息つけようとしたところで歩が水の入ったボトルを差し出す。
「ふん。たいした相手ではなかった。
やはり、3年が抜けた穴は大きい。」
「翔君のところもそうですか。スプリンターも悪くはないけど、岸川君に見劣りするんだよね。」
ボトルの水を飲みながら答えると歩も苦い表情で答える。しかし、何故か、俺と歩が一緒にいると女子どもが顔を赤くして俺達を見ているが何かあるのだろうか? というか、ときどき漏れ聞こえる俺が受けとはいったい? そんな事を考えていたら2位以下が戻ってきた。




