継承
感想頂きましたレフェル様。並びにこのお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
トレーニングが終了して、みんなと一緒に学校に戻った時ヘトヘトになっていた。
「お疲れサマデス。やー君♪ ボク特製の疲労回復ドリンクをどウゾ♪」
「山道。お疲れ様。ホラ、飲みなさい。」
ともみちゃんとふーちゃんが同時にボトルを渡そうとした瞬間、互いに相手を見る。
「…何やってるのよ?」
「やー君が疲レているカなと思って疲労回復ドリンクを上げヨウと思っただけデスよ?」
ともみちゃんの問いにふーちゃんが答えるとともみちゃんに青筋が浮かぶ。
「あのね。トレーニングでヘトヘトに疲れきってるのはまだいるのよ? 他の人達に配ってきなさい。」
「やデス。最初ニやー君に飲ンで欲しいデス。」
何故か2人の間で火花が散っているように見える気がする。
そして、
「サンクス。」
松郷先輩がふーちゃんのボトルを取り上げ、飲みながらボクの隣に腰を下ろす。
「最初ニやー君に飲んで欲しカったノニ。」
涙を流しながらボトルが置いてあるところまでいくふーちゃん。その様を横目にともみちゃんがボクにボトルを渡す。
「松郷先輩。お疲れ様です。」
「おう。お疲れさん。…山道。明日は暇か?」
急な問いに首を傾げる。
「イベントはまだ1週間はありますから、部活動に参加するしかないですが。」
「じゃあ、俺と一緒にロードバイク持って、森林公園まで来てくれ。」
唐突であるが拒否する理由は無い。
「んじゃ電車使うから輪行袋忘れるなよ?」
「リンコウ?」
聞き覚えのない単語に首を傾げるとともみちゃんが補足する。
「自転車はそのままじゃ電車に乗せられないから、フレームとホイールにバラして専用の袋に入れなきゃならないのよ。その専用の袋が輪行袋よ。輪行袋なら、うちでもいくつか扱っているから来なさい。」
ともみちゃんの言葉に、松郷先輩は満足そうに頷いた。
「んじゃ、明日の7時に戸田公園駅に来てくれ。」
「…で、何でお前達まで来てやがる!」
この場にいるハズのない2人を見て松郷先輩を不機嫌そうに顔をしかめた。
「気にナって来ちゃイマした。」
「まあ、どんな話なのか気になるから。」
ふーちゃんとともみちゃんはニコニコと笑みを浮かべている。その笑みを見て松郷先輩は溜め息を吐いた。
「…まあいい。邪魔はするなよ?」
松郷先輩の言葉に2人は頷いた。
意外だったのはふーちゃんがロードバイクを持ってた事。乗車してからその事を聞いてみたら向こうで自転車にハマってたらしい。
川越で埼京線から東武東上線に乗り換えしばらく揺さぶられてついた森林公園駅はどこかのどかな雰囲気のする町だ。ときがわ町といい、こんな町に来ると温かい気持ちになるよ。
森林公園駅の改札を抜けてエレベーターを降りた先でボク達はロードバイクを組み立てる。
「んじゃ、行くか?」
組み上がったロードバイクのサドルに跨がった先輩の言葉にボク達はペダルを回した。
のどかな町並みを走り出してしばらく走った先の光景に眉をしかめる。何でだかわからないけど、どこかで見た気がする。
その正体もわからぬままペダルを回して橋にさしかかった。
「あ…。」
ようやく、正体に思いいたり声を上げる。ここはときがわ町の白石峠に行くときに通った道だ。
「やっとわかったか。」「ええ。白石峠に行くんですね?」
「いや、その前にちょっと寄り道だ。」
そう言いながらT字路の角を曲がる。
「あっちは松郷峠よ。」
「まつごう?」
「白石峠に比べて緩やかで短い坂だから、ヒルクライム初心者が練習に来るのよ。」
ともみちゃんが言った通り緩やかな坂を上りT字路で止まる。
「山道。俺がロードバイクに興味を持ち始めたのはここなんだ。
俺と同じ名前の峠ってどんな所だろうって興味を持ち始めて、ママチャリで上り始めたんだ。当時は小学生だったし、ママチャリで登るのはかなり無茶だったのか、ここにたどり着く事が出来なかったんだ。それが悔しくてな、八神の家に事情話して見せてもらったのがロードバイクなんだ。
それで、必死にペダルを回して、ここにたどり着いたら疲れ果ててたのに、嬉しさで疲れなんてきれいさっぱり忘れたよ。」
松郷先輩が喋る言葉を静かに聞いていた。
「さて、休憩もすんだろ? 行くぞ。」
松郷先輩の言葉にボク達はペダルを回した。
下り坂を降り、のどかな町並みを通り白石峠に行くための坂の手前でブレーキを握る。
「山道。ここから先は競走だ。先に白石峠にたどり着くかのな。」
「じゃあ、アタシが合図するわよ?」
ともみちゃんの言葉にボク達は首を縦に振る。
「位置について、よーい、ドン!」
ともみちゃんの言葉にボク達は同時に登り始めた。
松郷先輩と一緒に木々だらけの坂道を登り、互いに相手より先にゴール目指して走る。
「おああぁぁぁぁっ!!!!」
「ぬあぁぁぁっ!!!!」
互いに抜いて抜かれてのシーソーゲームを繰り返す。そして、
「松郷先輩。ボクの勝ちですね?」
「ああ。そうだな。」
ボクの問いに松郷先輩は頷きながら停車させる。
「山道。星宮学園自転車競技部を頼んだぞ。
俺は来年卒業する。新しい星宮学園自転車競技部を支えることは出来ない。だから頼んだぞ。」
「はい!!」
松郷先輩の言葉にそう返し、握手した。




