第6話:鏡の向こうの世界
#ヤンデレ #執着 #ダークロマンス #ホラー #創作
その変化は、些細なことから始まった。
エドの母親がそれに気づいたのは、朝食の準備をしていた時だった。ふとした拍子にエドの手に触れた彼女は、思わず飛び上がった。息子の肌は、生きている人間のような温かさを失っていた。それはまるで、冷凍庫から取り出したばかりの氷のように冷たかった。
「エド、どこか具合が悪いの? 体がすごく冷たいわよ」母は不安げに尋ねた。
エドは無関心に皿を見つめるだけだった。彼の顔はますます青白く、透き通るようになり、目の周りの隈は花子のスカートの汚れのように赤みを帯びていた。「大丈夫だよ、お母さん。ただ……前よりずっと、心が穏やかなんだ」
エドはもう、食事をほとんど口にしなくなった。彼の胃袋は人間の食べ物を拒絶しているようだった。彼はただ、あの息苦しい個室の中で、塩素と埃の香りを吸い込んでいる時だけ「満たされる」と感じていた。今の彼にとって、それはどんな香水よりも甘美な香りだった。
【学校・午前10時】
教室の中で、エドはまるで透明人間のような存在になっていた。避けられているからではなく、彼の「存在感」そのものが希薄になり始めていたからだ。クラスメートたちは、エドが動き出すまで、彼が席に座っていることにさえ気づかないことが多くなった。
何より恐ろしかったのは、彼が食堂の洗面台の鏡の前に立った時だった。通り過ぎる他の生徒たちの姿ははっきりと映っているのに、鏡の中のエドの影だけは、まるで現実の彼が鏡の向こう側に吸い込まれていくかのように、ぼやけ始めていたのだ。
エドは自分の胸に手を当てた。もう、心臓の鼓動を感じることはできなかった。ただ、冷たい振動が一定のリズムで刻まれている。それは、花子の囁きと同じリズムだった。
【旧校舎・放課後】
エドは三階トイレの大きな鏡の前に立っていた。花子はすでに鏡の中で待っていた。戦場から帰ってきた恋人を迎えるかのように、両手を大きく広げて立っている。
「自分を見て、エドくん」花子が囁いた。その声は今や、まるで次元の壁など存在しないかのように、はっきりと澄んで聞こえた。「あなたは私に似てきたわ。美しくて……青白くて……そして、永遠の存在に」
「あっち側に行きたいんだ、花子ちゃん」エドの声は平坦で、どこか反響していた。「こっちの世界は痛すぎる。眩しすぎるんだ。君の暗闇が欲しい」
花子は鏡の表面に顔を押し当てるほど近づいた。「いらっしゃい……でも、条件は分かっているわね? あなたの『呼吸』を外に置いてこなきゃいけない。その騒がしい心臓の音を捨ててくるのよ」
エドは鏡の中の自分の手を見た。今や反射の中の指先は、伝説の花子と同じように赤く染まり始めていた。この身体的な変容は、まるで行進する何千本もの氷の針に肌を引き裂かれるような痛みを伴った。しかし、エドはその痛みさえも心地よく感じていた。この痛みこそが、彼の愛の証だったから。
「どうすればいい?」エドが問う。
花子は三番目の個室を指さした。そこには、底なしの穴のような黒い影が床に現れ始めていた。「今夜、月が雲に隠れる頃、あの個室の床で眠りなさい。あなたの夢の中まで迎えに行くわ。そして目が覚めた時、あなたは二度と太陽を見ることはない。私だけを見るのよ」
エドは微笑んだ。小学5年生の顔にはあまりにも不釣り合いな、恐ろしくも純粋な微笑みだった。「行くよ。待っていて」
エドはもう一度、鏡に口づけをした。今回、ガラスはもう硬くはなかった。それは水面のように柔らかく、彼は鏡の向こう側から、死のように冷たい花子の舌が口づけに応えるのを感じた。
【職員室】
山田先生はコーヒーカップを握ったまま、震えて座っていた。窓の外、遠くの方でエドが下校していくのが見えた。その姿を見た瞬間、彼はあまりの衝撃にカップを床に落とし、粉々に砕いた。
西日に照らされながら歩くエドの足元には……影がなかった。




