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異世界旅行記 メイクワールド  作者: 芥4653
第2章:力を手に入れろ!第1部:始まり
20/47

癒し

セ――――――――フ!!!

1週間以内ですよ!まだ!


今回は状況整理?みたいな展開です。ではどうぞ。



 あれから直ぐに俺達は老人宅に着いて今はその家の中に居る。

 家には俺達3人しか居ない。

 一応奥さんと娘さんが居るらしいのだが、今は奥さんと2人暮らしでその奥さんは留守中らしい。


 因みに娘さんは既に結婚しているとの事で旦那さんとその間に生まれた娘さんと三人で仲良く暮らしているらしい。

 この情報は道中に翡翠から聞いた。

 さっきのあの格好は恥ずかしかったが、男としてもうちょっとだけあの状態を楽しんでいたかったのも事実だ。


 口には出さないが。


「すまなかったな。客なんぞここしばらく居なかったからな。つい、いつもの癖で」

 そう言って謝る老人。


「それはもう良いですから。気にしていませんし」

 この問答は着いた時から既に何回もやっている。

 何時までやるんだよ…。そう辟易していた俺の横から助け舟が入った。


「長、何時まで謝ってるの?」


「しかし、こういう事はしっかりとしないとな」


「言いたい事は分かるけど、そういった事は何回も繰り返せばいいってものじゃないでしょ?」


「だが―――」


「本人も納得してるんだからその話はもう終わり。話が進まないから」

 翡翠はうんざりとした顔をして長と呼ばれた人―――俺が老人と呼んでいた人をジト目で睨む。

 やっぱり長なのか。薄々そうじゃないかなーとは思っていた。


 何はともあれ翡翠ナイスだ。


「……分かった。では話を戻そう」

 渋った顔をしつつもそう言った老人―――長はこほんと咳払いをして話し始めた。


「お主は……そういえば名前を聞いていなかったな。まずはそこからか」

 そう言って老人は続ける。


「では、先ずは俺から言おうか。俺は一応ここの長をやっている。名前は御影《みかげ》だ。御《おん》の字に影と書いて御影だ。皆からは長と呼ばれている為か俺の本名を知っている奴は案外いない…」

 そう言って若干いじけ始める御影もとい長。


 なんか、さっきとのギャップが凄いな。

 誰かに似ている。


「はいはい。長はいつもの事なんだから、そんなどうでもいい事気にしないで大丈夫。…私も今思い出したし」

 そう言って翡翠が長に追い打ちを掛けた。

 なんか長が目に見えて落ち込んでいるんだけど…。


 フォローした方がいいのか?

 長の状態を見て戸惑(とまど)っていた俺に翡翠が告げる。


「長の事なんか心配しなくて平気。いつもの事だから」

 いつもの事なの!?


「じゃあ次は私だね」

 何事も無かったかの様に話を進める翡翠。本当に放置だ。


「私の名前は、翡翠《ひすい》。色で言うと翡翠色の翡翠だよ。よろしくね」

 そういえば正式な紹介は今が初めてだったな。

 あの時の俺はタヌキ寝入り中だったし。


「よろしく。えーと翡翠さん」


「さんは要らない。呼び捨てで」

 そう言ってくる翡翠。

 前回で学習した俺はここは素直に従う。

 こういう要望は素直に受け入れた方が良いみたいだし。 


「分かった。よろしく翡翠」


「ん」

 そう言って翡翠は満足そうに頷く。


「じゃあ、最後は俺だな。俺の名前は幸多岐諌《さちたきいさ》だ。幸せが多いに分岐の岐の字。それと諌めると書く。諌って呼んでくれ。よろしく」


「分かった。よろしく諌」

 そう言った翡翠は手を差し出して来た。

 なので俺も手を出して握る。所謂《いわゆる》握手だ―――をした。


 未だに落ち込んでいる長を何とか復活させ(これは翡翠がした。弄り慣れている様でフォローが上手かった)話を続ける。


「それでは諌、お主は何故あんな場所に居たんだ?」


「それはですね―――」

 そう言って俺はこれまでの―――ここに至るまでの経緯を話す。

 内容が凄い筈なのに説明が直ぐに終わってしまい、ちょっとショックだったのは心の内に仕舞う。

 

 そんな薄い出来事では無い筈なのに……俺の説明が問題だったのかな?


 その間に翡翠がお茶を淹れてくれていた。

 そしてこのお茶がめちゃくちゃ美味い。

 市販で割引で売っているお茶ばかり飲んでいた俺からすると衝撃を受けるほどに。


 何より美少女が淹れてくれているお茶は格別にうまいな。

 いやそこは気分の問題で。


 実際には変わらないのだろうがそう考えた方がテンション上がるし。

 淹れ方も手慣れているのか様になっており、その所作は見た目通り大和撫子を体現している。

 ただ屈んだ時に着崩している胸元にかかる黒い前髪が何とも色っぽくて目に毒だけど、だがそこがまた最高だ!

 きっと将来良いお嫁さんになるな。


 旦那さんになる人は鼻が高いだろうな。


 羨ましいな畜生。


 というか勝手に判断していたが既に結婚とは行かずとも好い人くらいは居るんだろうな。

 だってこんなに美人なんだし。


 俺の説明が終わり、その内容を長が吟味している間、沈黙が続いていて暇だった俺がそんな事を考えていた時、長がやっと口を開き話し出した。

 その為思考が引き戻される。


「ふむ。なるほどな。俄《にわ》かには信じがたいがあの方ならやりかねないな」 

 やられたんだよ実際。というより―――


「スサノオ…様と知り合い何ですか?」

 

「知り合いも何もここはあの方―――というより神様達が良く来る場所だからな。最近はあまり見かけないが」

 そうなのか。

 そういえばそんな事も言ってたな。

 それどころじゃ無かったからすっかり忘れてた。


「そういえばそうでしたね」


「しかし、お主も色々と大変だったな。具体的な説明もされずに何もない草原の真っただ中に飛ばされるんだからな」

 そりゃあもう。

 今回の事でスサノオに対する敬いって物が無くなったな。

 一応会話するときには様を付けているが、めっちゃ抵抗がある。


「だがまあ、一般人のお主が異世界に行く為には、それくらい出来なければやっていけない―――ってのはあの方の言う通りではあるぞ。やり方が雑だが」


「そうなんですかね」


「ああ。お主も言われてみて薄々自覚はしていただろ?」

 まあ言い分は分かるけど、その前に死んだら元も子もないだろ

 その事を言ってみたら、


「言いたい事は分かるが、スサノオ様に言われなかったか?……いや、あの方は事《こと》戦《いくさ》に関する事は例え言い方が遠回しでも絶対になにかしら言うぞ。あの方との会話を思い出してみろ」

 そう返された。


「言われた……」

 あの時の会話を思い出してみる。

 

 確か―――


 力ってどうやって手に入れるんですか?って聞いたら


『それは自分で探せ』

 って言われたな。

 ……あれ?この時点でもう終わりだと思うんだけど。

 いや、長がそうやって言うんだ。

 もっと思い出せ。


 えーと、確かその後に草原に言ったんだよな。

 それであいつに追っかけれて―――― 

 そうだ!!スサノオから電話?いや、あれは寧ろ念話だろ―――があって、俺はスサノオに―――


 助けて下さいよ!!って言って


『あん?助けるー?何で?』

 って言われたんだ。

 ……あれ?何だろうこの理不尽。

 段々イライラして来たんだけど。


 駄目だな。

 なんか怒りでそういう部分ばっかピンポイントで出してしまう。


 もっと冷静になって全体を思い出せ―――

 そこで俺は部分部分で大事な個所をを思い出した。

 それに伴い疑問も浮上したが、それは関係無い為に今は(・・)脳内から除外する。

 その部分で今必要だと思う個所を引き出す。

 スサノオは何て言っていた?


 確か―――


『助けたら力何て手に入らねえだろ。自分で何とかしろよ』

 これだ。あの時はそんな事に対して深く考える余裕なんてなかったし。


 しかしどういう意味なんだ?


「気になる個所を見つけたようだな」

 そう言ってお茶を啜る長。

 どうでもいいが縁側で啜って居たら似合うだろうな。


「ええ。助けたら力なんて手に入らねえだろって言われました」


「ほう。……なるほどな」

 何やら一人納得してくっくっと笑っている。

 どうやらこの意味が理解出来ているらしい。


「分かるんですか?」


「ああ。しかし、それだけじゃ伝わらないだろうに。…良いだろう。教えてやろう」

 そう言って長が話し出した。


「ここは…いや、その前にお主は今の現状を理解しているだろうから、そこの説明はある程度省くぞ。そして、お主から聞いた話に補足をしようか」


「補足?」


「ああ。お主の魂の記憶は全てを―――良い事も悪い事も全て覚えてしまい、忘れたくても忘れられない。それは本能に刻み込むのと同義だからだ。簡単に言うと、心の傷ってのはなかなか治らないって表現するだろ?あれは気の持ちよう…つまり根本…魂が関わって来るからな。つまりはそういう事だ。…ここまでで何か質問は?」

 前者である程度理解出来たけど最後の例えは何となく理解出来たって感じだな。


「大丈夫です」

  

「うむ。では続けよう」

 そう言って続きを再開した長。


「さっきのスサノオ様が言った事だがな、この世界では自分で乗り越える事によってその時に自分の中で必要だと心の底から思った力……能力が顕現するんだ」

 ……なんかファンタジーな言葉が出たな。


 能力が権限?


「能力……ですか?」


「そうだ。それは生半可な事では顕現しない。極限状態じゃないとな。例えば―――」

 そこまで言われて理解する。

 長の言葉を遮って俺はその先を言った。


「死にかけたりとか…ですか?」


「そういう事だ。理解出来ただろ?あの方の言葉」

 

「はい」

 説明が足りなさすぎんだろ!


「それで、お主は地竜《ちりゅう》に追いかけられてどうだった?」

 

「地竜?…ああ、恐竜の事ですか?あれって地竜って言うんですか。それと…どうとは?」

 

「うん?きょうりゅう?…いや、お主は死にかけたんだろ?何か目覚めたりしなかったのか?」

 目覚める……ねえ。


「聞き方を変えようか。何か普段なら出せない様な力が出たとかそういう事は無かったか?」

 そう言われてみると疑問に思った事があるな。

 

「そういえば、あれに追いかけらている時全力で長距離走れたり、突然足が速くなったり―――」

 走馬灯とかじゃなくて、あれも含めるなら―――


「相手の動きがほぼ止まって見えたりしましたね」


「それだと思うぞ?」

 いや、だけどあれって火事場の馬鹿力みたいなもんじゃないの?

 その事を聞いたら、


「いや、よく考えてみろ。息が切れたとはいえ、お主の話だと1キロくらい全力疾走したんだろ?普通ペース配分も考えずに鍛えてすらいない普通の人が(・・)そんなに走ったら何と言ったか…そう、心拍数?が上がり過ぎて死ぬだろう。足が早くなったのも、お主の言い分も分かるがそこまで顕著に出る事は無いぞ。人体とはそういうもんだ。相手の動きが云々は上手く説明出来んがそれも何かしらの力だと思うぞ?」


 なるほどな。

 それなら、今の俺はそういった力を持っていると?

 自分の体を改めて見てみるが、特にこれといった変化は無い。


 …本当にあるのか?


「まあ、そこら辺は後で試すとしてだ、まずは―――おい翡翠。…翡翠!!」

 横を見てみると横で翡翠が寝ていた。

 パッチリした目を閉じて気持ち良さそうに寝息を立てている。


 その無防備な状態に思わずごくりと唾を飲み込む。


 いやいや、それは不味い。

 具体的には何がとは言うまい。 

 

 …どうりで静かだと思った。

 長の呼びかけにも反応する気配が無い。 


「諌。すまないがこいつをこれで起こしてくれ」

 そう言って棚から羊羹《ようかん》を取りだして俺に渡す長。


 ……これで俺にどうしろと?


「これは?」


「羊羹だが?」

 知らないのか?って目で見てくる長。


「いや、それは見れば分かりますが。…これを俺にどうしろと?」

 食べろと?


「ああ。そいつを翡翠の鼻元に近づけて耳元で羊羹があるぞ~って言えばいい。」

 は?


「それはどういう…?」


「やれば分かる」

 まあやってみろと笑いながら言う長。なんだ?


「はあ」

 このままでは話が進まないので取り敢えず従ってやってみる。

 羊羹を鼻先に近づけ耳元で、


「羊羹がありま―――!?」

 俺の言葉は最後まで言えず、翡翠は目をカッと開くなりきょろきょろと辺りを見渡し、目の前で俺が持っていた羊羹《もくひょう》を見つけた翡翠は、俺が視認できないくらいの速度で羊羹《ぶつ》を引っ手繰ると、もきゅもきゅと幸せそうに羊羹を食べだした。

 事実俺の手から羊羹が消えたように見えたし。


 ……何だこれ。

 

 疑問の視線を長に向けると、


「翡翠は昔から三度の飯より羊羹が大好きでな。例え寝ていても羊羹があれば絶対に飛び起きてそれを食べるんだ」

 両手で大事そうに羊羹を握りしめ、ゆっくりと味わうように食べている翡翠を見ながらそう答える長。


 その目は可愛い孫を見るお爺さんその者だった。


 ……何だこれ。


「いや、羊羹好き過ぎでしょう!?」

 そうツッコンでしまった俺を責めないで欲しい。

 

「まあ、取り敢えずあいつが食べ終わるまで待ってくれ」

 そう言って眺めだした長。

 

 え?これ待たないといけないの?

 

 翡翠を眺めて動かなくなってしまった長を横目に見ながら、仕方なく翡翠が食べ終わるのを眺める俺。

 その視線に気づいたのか翡翠がこっちを向いて、


「そんなに見ても羊羹は上げないよ?」

 何て口の周りに羊羹のカスを付けながら言う。

 ああ可愛いな畜生。

 さっきの美人!って感じとギャップがあって凄い。


 何というか…食べている姿が小動物の様で癒されるな。


「いや、食べないから心配するな」

 そう答えた俺に、


「……本当?」

 小首を傾げながら聞いてくる翡翠。

 その動作一つ一つがまた可愛くて反射的に顔を逸らす。

 顔が赤くなっているのを自覚しながらも、ついその食べている姿をまた見てしまう。

 なんか見ていて飽きないなこれ。


「ああ」


「良かった」

 そう言って心底安心したのかまた大事そうに羊羹を食べる作業を開始した翡翠。


 ……なんかもう、どうでもいいや。


 それからしばらくの間、俺と長は翡翠が羊羹を食べる所を見ながら癒され続けていた。









羊羹!おいしいですよね!

自分は和菓子全般が大好きです。



誤字脱字の指摘、ご意見ご感想お待ちしています。



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