輪球と翡翠と子供達
すみません。編集し終わり日程を見るともう1週間でびっくり。
慌てて投稿デスよ。
「……おいしかった」
羊羹を食べ終わった翡翠は満足げにそう言った。
「うむ」
満足そうに頷く長に反し俺は、
「……そうか。それは良かったな」
げんなりしていた。
あれから既に約1時間経過している。
いや、長えよ。たかだか15センチくらいの羊羹にだぞ?
どんだけ味わって食べているんだと…。
「ともかく、翡翠。どこまで聞いていた?」
お茶をずずっと啜っていた翡翠に長が聞く。
「全部聞いてたよ?」
嘘つけ。寝ていただろうが。
「寝てただろ」
思わずジト目になってしまう。
なに堂々と嘘吐いてんだよ…。
「本当に聞いてたよ?要するにスサノオ様に連れて来られて、ほっぽり出されて、地竜に追いかけられて倒れて、私に拾われたんでしょ?」
「……」
めっちゃ要約されたんだけど。
しかも合ってる。
どうやら本当に聞いていたらしい。
何か複雑だ……。
どうだ凄いでしょ!ってばかりに胸を張っている翡翠に長が続ける。
「なら、話は早いな。翡翠。今から諌は俺達の客だ。存分にもてなすぞ。これから俺は宴の準備を始めるから、その間はお前がこの里を案内してやれ。道中任せたぞ。それと―――諌…」
最後に長が俺を呼ぶ。
何だ?
「はい」
「頑張れよ!」
何を?
そう言った長は俺の肩を叩いて直ぐに奥に行ってしまった。
最後の言葉を聞く事が出来なかった俺が言葉の意味を考えていると、
「ん。じゃあ行こうか諌」
「え?」
翡翠は俺の手をひっぱって外に連れて行った。
手繋いでる…なんて今時の中学生でもしない様な事を考えてしまう俺は何なんだろうか。
そんな事を考えながら俺は―――俺達は長の家を後にした。
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「ここは万屋。日常雑貨から軽い道具の点検や整備まで割と何でもしてくれる店。で、あっちの―――」
里を歩きながら翡翠は説明をしてくれる。
凄く丁寧で分かりやすいんだが……
「なあ翡翠……」
「ん?何?」
説明を途中で遮ってしまった俺に嫌な顔一つせず、翡翠はこちらを見る。
「あのさ…」
取り敢えず一つ言いたい。
さっきから気になっていた事なんだが―――
「うん」
「この状態何とかならないか?」
「…諦めて。多分もうどうしようもないから」
「はあ……」
今の俺の状態…というより状況と言った方がいいのかな?
周りの視線が凄い。
俺達というより、勘違いじゃ無ければその視線のほとんどが俺に向けられている。
中でも子供っちらのキラキラしたあの視線を何とかしてほしい…。
「何でこうなった」
思わず頭を抱えてしまう。
長の家を出た俺達がそのまま歩いていると開けた場所に出た。
「ここは?」
「ここは広場かな。主に子供たちの遊び場だね」
見ると確かに小さい翼を生やした小学生ぐらいの子供たちがボールみたいな物を蹴って遊んでいた。
サッカーかな?
「あれはサッカーか?」
それにしてはゴールらしき物が無いんだが…。
「サッカー?…多分諌が考えているのとは違うと思う。簡単に言うと、あれは輪球って言ってあの輪っかに玉を蹴って得点を競い合う遊びだよ。…私も昔やったなあ」
そう言って懐かしそうに目を細める翡翠。
良く見るとちらほら女の子も混ざっているのが分かった。
どうやら男女共に楽しめるスポーツらしい。
「へえ。輪球ねえ」
しかし疑問に思うんだが…リングなんてどこにあるんだ?
そう思った俺だったが、ふと何かを視界に捉える。
「ん?あれは何だ?」
「どれ?」
「ほら、子供たちの周りを動き回っている奴」
「動き回って……ああ、あれが輪っかだよ。あれに玉を入れるの」
こともなげにそう答えた翡翠。
「…あれにか?」
なぜ疑問に思ったか気になるだろうが、理由は至ってシンプル。
輪っか自体は大体1.5メートルくらいあるのだが、問題はその輪っかが縦横無人に動き回っているのだ。
それもかなりの速度で。
目で追うのがやっとだ。
「そうだよ。最初は大変だけど慣れると簡単」
マジかよ…。
翡翠さんマジパねえッス。
そんな他愛もない会話をしているとボールがこっちに向かって転がって来た。
「あっ!すいませーん」
どうやらあの子が飛ばしてしまった子らしい。
俺はその子にボールを拾って渡す。
「はいこれ」
「兄ちゃんありがとう!」
「どういたしまして」
そう言った男の子はふと横を、翡翠を見て一瞬驚いた様な顔をして次になぜかキラキラした様な、それでいて何かを期待する目で見始めた。
「ん?どうしたの?」
視線に気が付いた翡翠が不思議そうに男の子に問い返す。すると―――
「あ、あのっ!もしかして翡翠さんですか?」
男の子が尊敬する人にあって本物かどうか尋ねる様な―――もしくはアイドルに声を掛ける様な―――そんな緊張した様な声音で話し掛けた。
「そうだけど―――」
それを聞いた瞬間、男の子は翡翠の言葉を遮って捲し立て始める。
「本物なんですね!?すっげえ!俺!ファンなんです!あっ握手してください!!」
そう言った男の子は真っ赤になって頭を下げながら手を差し出す。
その様はプロの選手にサインを下さいと強請る見る子供たちそのものだった。
どういう状況?
何時までも男の子が戻って来なくてゲームを再開出来ない状態の子供たちが何だ何だとこっちに集まって来た。
その内の一人が皆の声を代弁するかの様に話し出す。
「おいカイ!さっさと来いよ。玉が無いと再開出来ないんだけど……」
どうやらこの子はカイと言うらしい。
カイと呼んだ女の子は、カイの状態と俺達を見て首を傾げた。
「ええとカイ?お前何しているんだよ…?」
「ナギサ。見て分からねえのか?お前の目は飾りか?あ?」
カイはナギサと呼んだ子に平坦な声音で返す。
「…あ?喧嘩売ってんのかコラ」
段々険悪になって行く両者に俺と翡翠はたじたじである。
「なあ、翡翠。この状況何だ?」
「ええっと…」
翡翠が言葉に詰まる。
どうやら翡翠にも分からないらしい。
いや、俺の疑問の中にはカイがお前に握手を求めた理由も含まれているんだけども。
そこまでは察してくれなかったらしい。
それはともかくこの急展開はどうすればいいんだ?
そんな時、一緒に来た子達の中から一人の女の子が慌ててこちらに駆け寄って来た。
「二人ともいい加減にしなさい!!」
「だってナギサが…」
「だってカイが…」
お互い指を指しあってまた睨み合いが始まる。
「今回はカイの聞き方悪いと思うよ?誰でも自分が考えている事を理解しているなんて思わないの」
「なっ!」
「そうだぞ。ばーかばーか」
「ナギサ!あんたも直ぐに喧嘩しようとしない!」
これが俗に言う喧嘩両成敗って奴か?
「だって!こいつが―――」
「言い訳無用!ったく。あんたたちは直ぐそうやって喧嘩する。もっと仲良くしなさいよ…」
そう言って女の子がはあっとため息を吐いた。
凄いな。手慣れている。
「ほら、仲直りは?」
「「ふんっ!」」
同時に顔を逸らした二人。息がぴったりだな。
「あんたたち…」
そこで女の子はっとしたようにこちらを向いた。
「ごめんなさい。見苦しい所をお見せしてしまって……」
そう言って女の子は俺達にぺこりと頭を下げた。
「ほら!あんたたちも…!」
そう言って女の子が二人の頭を無理やり下げさせる。
二人はぶすっとしながらもされるがままだ。
なんかこの二人の保護者みたいだな。
駄目な弟と妹に叱るみたいな感じっていうのか?
「い、いや気にしてないから大丈夫だよ」
「うん」
俺達がそう言うと女の子はホッとしたように最後にまたご迷惑をお掛けしましたと頭を下げる。
何かしっかりした子だな。
見た目は小学校高学年から中学生の間くらいの見た目なのに。
学級委員長でいそうなタイプだ。
「それでカイ。あんたはどうしたの?」
「え?…あっ!そうだった。シズク、聞いて驚くなよ。この横にいる方は翡翠さんだぜ!!」
カイがそう言った瞬間場が一気に静まりかえった。
「…カイ、それってあの翡翠さん……?」
学級…シズクと呼ばれた女の子がごくりと唾を飲み込みながらカイに確認をする。
周りの子供たちも緊張の面持ちでカイの言葉を待つ。
「ああ。というか他に誰がいるんだよ?」
「他人の空似じゃなくて…?」
「しつけーな。そうだよ。本物だよ」
また一瞬の静寂。
しかし次の瞬間、子供たちから歓声が上がり皆が一斉に翡翠に群がリ始めた。
さながら地元に来た芸能人に群がる一般人の如く。
その様子に当の本人、翡翠が困惑していた。
………。
取り敢えず言いたい。
「どういう状況?」
しかし俺の声は子供達の歓声に遮られて誰にも届く事は無かった。
今回は分けますね。
え?終わらなくて逃げてる?
…ははっ。気のせいですよ!
では、また次回で!
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