第1話 終わりの始まり
家に帰ってきたアドニスの表情は、いつものキラキラとしたものではなく、学校で過ごしているときのようなどんよりとしたものだった。
荷物をリビングに置く。
今日はテレビの電源もつけず、そのまま一目散に自室へ入った。
そして、帰り道で出会った銀髪の少年が言っていたことを思い出す。
「右手に意識を集中しろ」
その言葉を思い出し、銀髪の少年――サウザーの姿を頭に浮かべながら、右手を見つめて意識を集中する。
…………。
………………。
………………………………。
「……?」
何も起こらない。
アドニスは考えた。
もしかすると、極度のストレスから現実逃避をして、幻覚でも見ていたのではないか。
もう一度、銀髪の少年の言葉を思い出してみる。
『目を閉じて……意識を右手に……』
「……あっ」
目を閉じる。
大切なことを忘れていた。
右手を見ながらでは何も起こらなかったのだ。
改めて目を閉じ、右手に意識を集中する。
『お前、意外と頭悪いのか? さっき言ったことがなぜできない。俺は――』
「えっ!?」
驚いて目を開ける。
声が消えた。
もう一度目を閉じ、右手に意識を集中する。
『だから、意識を途切れさせないでくれよ。俺の姿は見えるか?』
サウザーの言っている意味が、よく分からない。
目を閉じているのに、どうやって姿を見るというのか。
再び目を開ける。
何も聞こえない。
何も感じない。
『だからぁ。目を閉じてないと俺のことは認識できないんだって。っていうか、本当にバカなのか? もう一度集中して、俺を見てみろ』
最初に会ったときの優しい口調ではなく、どこか鬱陶しそうな口調になっている。
アドニスは戸惑ったが、今度は目を開けなかった。
サウザーの言うとおり、その姿を見ようと意識を集中する。
すると――。
真っ暗な瞼の裏に、小さな光の点が現れた。
「……!」
思わず目を開けそうになる。
しかし、その小さな光だけに意識を集中する。
点だった光が、少しずつ大きくなる。
やがて周囲を照らすほどの明るさになっていった。
さらに深く意識を集中する。
……フリージアの香りがする。
帰り道で感じた、あの甘く清涼感のある香りだった。
『いい匂いだ……』
光の中心へ意識を向ける。
そこに、銀髪の少年が何かを持って立っていた。
「やっと来たな。おめでとう。ここがマキナの世界だ」
『マキナ……?』
何を言っているのか、さっぱり分からない。
声を出そうとする。
だが――声が出ない。
「……っ!」
一瞬パニックになり、目を開けようとする。
しかし、目も開かない。
瞬きすらできない。
何が起きているのか、まるで理解できなかった。
「おお? ちょっと焦ってるな。よしよし。今の状態を説明してやろう。今、お前は木の一部として俺を見てるんだ。わけ分からんと思うが、聞いてくれ」
『木の……一部?』
完全にパニックだった。
どうしようもない不安が身体を突き抜け、サウザーの話は右から左へ流れていく。
ほとんど頭に入ってこない。
「大丈夫か? んー……うまくいったと思ったんだがな。ちょっと意識が遠のいていってるな。とりあえず無理するな。また戻ってこい。俺はしばらくここにいるからさ」
先ほどまで眩しいほどだった光が、どんどん小さくなっていく。
フリージアの香りも薄れていった。
そして、完全に光が消えた瞬間――。
「だーーーーっ! 何なんだよ今の!? えっ? 夢? 僕、寝てた? ……って、汗だくになってる!」
アドニスは、いつの間にか眠っていたらしい。
しかし時計を見る。
「……あれ?」
先ほど確認した時間と、ほとんど変わっていない。
最低でも十五分ほどは眠っていた感覚があった。
だが、時計は一分も進んでいない。
「なんだよこれ……」
少し怖くなった。
考えないようにしよう。
アドニスはリビングへ行き、いつものロールプレイングゲームを始めた。
※
ゲームをしていても、先ほどの不思議な光景が何度も脳裏をよぎった。
理解不能な現象。
だが、それは確かに自分の身に起きた。
そう考えているうちに――。
好奇心が、不安を追い越した。
アドニスは立ち上がる。
『もう一回やってみよう。でも怖いな……動けないし、喋れないし。息もできなかった気がする。あの銀髪の人、サウザーって言ってたな。それに、時計の時間がまったく進んでなかったのも気になる……』
「んんん……よしっ!」
ゲームをセーブして終了する。
そして再び自室へ戻った。
『ふーー……落ち着け、アドニス。今、すごい不思議な体験をしてるんだ。これは現実だ。もう一度、あの人に会いに行こう。でも、さっき何か言ってたけど全然覚えてないや……』
時計を見る。
「今は四時五十分……。よし」
目を閉じ、右手へ意識を集中する。
今度は、前回とは比べものにならないほど速く光が広がった。
そして、フリージアの香りが漂ってくる。
パァ――――ッ!
一気に視界が明るくなり、サウザーが立っているのが見えた。
今回は落ち着いている。
だが、やはり声は出せない。
ため息をつこうとしても、息を吐くことすらできない。
『やっぱり息できない……でも、苦しくない』
不思議な感覚だった。
そして今度は、サウザーが手にしている物もはっきり見える。
鏡だった。
「おお! 帰ってきたか。意外と早かったな」
そう言って、サウザーは鏡をアドニスの方へ向けた。
そこに映っていたのは――。
少し色の変わった、木の幹だけだった。
「これが今のお前の姿さ。ちょっと特殊な木に宿ってるんだ。今の状況が呑み込めないのは分かる。でも信じてくれ。ここからお前を出してやる」
サウザーは地面に置いていた袋から、小さな瓶を取り出した。
その中には、白く艶めかしく光る液体が入っている。
「これは、思念体を物質化したものなんだ。よく分からないと思うが、魂を移すための素材だよ。お前の魂をこの思念体へ移して、身体を構築してみる。危険はない。信じてくれ」
アドニスはただ聞いていた。
自分から何かを伝えることはできない。
そうするしかなかった。
不思議なことに、今度はあまり恐怖を感じなかった。
先ほどは、自分が置かれている状況すら理解できずパニックになった。
だが今回は、少なくともサウザーがここにいる。
サウザーは瓶を木の根元へ置く。
そして、腰に差していた剣を抜き――。
木の幹へ突き刺した。
「さっ、これで準備完了だ。あとはお前次第だ。ここからは自分で選択しろ」
サウザーは木を見上げる。
「嫌なら、元いた世界に帰ればいい。そして、この世界のことは忘れるんだ。元の生活に戻れる」
少し間を置く。
「でも、その先を見たいなら――俺を信じてそこから出てこい。ただ『出たい』と念じろ」
その言葉を聞いた瞬間。
アドニスの中で、好奇心が大爆発した。
『元いた世界?』
『その先を見たいか?』
言っている意味は、まだよく分からない。
ただ――。
元の生活に戻る。
それだけは勘弁してほしかった。
あの最悪の日々へ戻るなど、耐えられない。
『死ぬよりはまし……』
一瞬、その言葉が頭をよぎる。
確かにそうだ。
どんな状況であれ、死ぬよりはまし。
しかし――。
『本当に死なない保証なんてあるのか?』
『こんな得体の知れない奴の言葉を信じるのか?』
『そもそも怪しすぎるだろ……』
言葉にはならない自問自答が、頭の中を駆け巡る。
「……あれ? 来ないな」
サウザーが首を傾げる。
「あっちに帰ったわけじゃなさそうだけど……。もしかしてビビってるのか?」
カチン。
アドニスの中で何かが鳴った。
――ビビってるのか。
それは、アドニスに言ってはいけない言葉だった。
『ビビってるんじゃない! アンタが怪しいから言うことを聞きたくないだけだ!』
言葉には出ない。
だが、怒りははっきりと膨れ上がった。
すると――。
それまで穏やかだった風が、突然強くなる。
空には黒い雲が広がり始めた。
「おお? おおおっ!?」
サウザーが空を見る。
「まさか、その状態で天候を操れるのか!? 実体も持たずに!? こんなの教団に見つかったら大変なことになるって! 静まれ! 静まれって! 頼むから!」
先ほどまでの偉そうな態度はどこへやら。
サウザーは木の周りを慌ててウロウロしている。
『なんだよ、教団って』
アドニスは少しおかしくなった。
『アンタの方がビビってるじゃないか。変な奴……』
そして――。
『……選択してみるか』
木に刺さった剣の周辺へ意識を集中する。
ぐぐぐぐぐっ――。
シュポン!
突然、目の前が真っ暗になった。
身体全体に、初めて重力を感じる。
「おお! 来たか! よしよし! そのままそこに入ってろよ!」
サウザーが瓶へ手をかざす。
状況が理解できず、アドニスはまた少しパニックになる。
パァ――――ッ!
青白い光が瓶を包み込んだ。
瓶の中から何かが浮かび上がる。
それは徐々に、人の形を作っていく。
そして――。
「うぅ……うわーーーー! なんなんだこれーーー! 僕はいったいどうな……うわーーーーっ!」
そこに現れたのは、十分の一ほどの大きさになったアドニスだった。
瓶の縁に引っかかり、ぶら下がった状態で顔を上げる。
目の前には――。
自分の何倍も大きな、銀髪の巨人。
「うわああああああっ!」
驚きすぎた。
そのまま、アドニスの意識は遠のいていった。
「……あれ?」
サウザーがミニサイズのアドニスを覗き込む。
「おーーい。また帰っちゃったのか? いや……思念体が身体を形成してるから、魂は定着してるのか」
首を傾げる。
「んん……とりあえず連れて帰るか」
瓶を持ち上げる。
「ん? んんん?? 瓶に引っかかって抜けないな……まあ、いっか」
そう言って、ミニアドニスが引っかかったままの瓶を袋へ放り込み、サウザーは丘を駆けていった。
※
ぼんやりと意識が戻ってくる。
「……?」
目を開ける。
レンガ造りの狭い部屋だった。
辺りを見渡す。
状況が呑み込めない。
自分の手を見る。
「……普通だ」
五歳の頃、海で切った右手のひらの傷もある。
だが――。
もう一度辺りを見渡す。
すべての物が、大きい。
「……え?」
意識がはっきりするにつれて、身体の奥から強烈な不安が込み上げてきた。
「これは……いったいどうしたっていうんだ……」
思わず声に出る。
すると、遠くで何かが動いた。
「やっと目が覚めたか。あっちの世界に帰ったのかと思ったよ」
「……!」
銀髪の巨人。
アドニスは、とっさに身を守るため武器になりそうな物を探した。
「何してんだよ。取って食ったりしないって。ははは」
サウザーが笑う。
「今は、そのサイズが限界なんだよ。思念体って素材は貴重なんだ。なかなか手に入るようなもんじゃない。……あれ? 俺の言葉、伝わってるよな?」
もちろん分かる。
だが、なぜ異世界の人間が流暢な日本語を話しているのかは、まったく理解できない。
アドニスは目をぱちぱちさせながらサウザーを見つめ、武器を探すのをやめた。
「ちゃんとした自己紹介がまだだったな。名前は言ったから覚えてるよな?」
サウザーは、アドニスがいるベッドの横の椅子へ腰掛けた。
「ここはサングンタイ星っていう惑星だ。お前のいた世界とは違う次元にある。ここは――マキナの世界っていうところだ」
アドニスを見下ろす。
「とりあえず、お前の名前を教えてもらえないか?」
「僕は、アドニス・アトキンス。一体何がどうなってるのか、訳が分からないんだけど……」
「アドニスだな。よろしく」
サウザーは腕を組んだ。
「一体どうなってるのか……か。んーーー。何をどう説明したらいいのやら。まず、ここへ呼んだ理由は――」
「理由は?」
アドニスも身を乗り出す。
「なんていうか……アドニスがいる世界へ行って、お前から不思議な力を感じたからさ。この世界へ来るには適応が必要なんだ。滅多に来られるもんじゃない」
「……?」
まったく理由になっていない。
アドニスが求めている答えではなかった。
「違うって。そうじゃないんだって。僕をここへ呼んだ理由だよ。不思議な力? そんなの持ってないよ。持ってたら、あんな最悪な状況になんてならないよ……」
そう言って、アドニスは俯く。
「最悪な状況? どんな?」
「いいって。もう……言いたくないこともあるんだ。それよりちゃんとした理由だよ」
話が進まない。
今の状況そのものにも苛立っているアドニスは、胡坐をかき、太ももをパンパンと叩く。
「ふーー……やっぱりそっちの世界の人間も、マキナの人間と同じ気質なんだな。まさに『先急ぐ者』か」
「……?」
「先急ぐ者? 人間の気質?」
アドニスは首を傾げ――。
「えええっ!? あんた、人間じゃないのか!!?」
驚いて立ち上がる。
「……っ!」
全裸だった。
慌てて股間を隠し、再び座り込む。
胡坐をかいていたため、まったく気づいていなかった。
ミニサイズの全裸人間である。
「恥ずかしいのか? ははは。あとで服を作ってやるよ。とりあえず、これでも巻いてろ」
サウザーが青い布を渡す。
アドニスはいそいそと腰へ巻き、再び胡坐をかいた。
「ちゃんと説明してくれって。あんた、人間じゃないのか?」
サウザーは目を丸くし、またケラケラと笑った。
「そうだよ。俺は人間じゃない。マジカルヒューマノイドだ。アドニスの世界には存在しない人種なんだろ?」
少し首を傾げる。
「お前たちの世界って、魔法を使ったりできないんだったよな?」
「…………」
言っていることは理解できる。
だが、頭がそれを現実として受け入れることを拒んでいる。
アドニスは首を左右へブンブン振った。
「ままままま……魔法!? あんた、魔法使えるの!?」
再び身を乗り出す。
目は完全にキラキラしていた。
「そりゃね。そういう人種だからな。ちょっと見せてやろうか?」
サウザーは立ち上がり、先ほど思念体が入っていたと思われる瓶へ片手を突っ込む。
「よーーーく見てろよ。……はっ!」
一瞬、掌が青く光った。
次の瞬間――。
瓶の中が真っ白な物質で満たされていく。
「ほら。これが魔法だよ。今のは氷結魔法だ。大気の魔素を凝縮して――」
「すげーーーーーー!! 何今の!? 今のが魔法!? 本物じゃん! ええっ!? マジか! マジかーーー! かっけーーー!」
サウザーの説明など、もう聞いていない。
「ちょっと貸して! ……うわっ、冷たい!! 雪!? 氷!? どうやったの!? 僕にもできる!?」
好奇心、大爆発。
矢継ぎ早に質問を浴びせる。
サウザーは目をぱちぱちさせた。
「ちょっと待てって。今説明してるから。これは氷結魔法。大気中の魔素を使って、水分を凍らせてるんだ。そうすれば氷ができる」
瓶を見る。
「ただ、ここは地下室だから、あまり大きな力を使えない。だから今はこんなもんだ」
アドニスは瓶から雪を取り出し、一生懸命固めている。
完全に雪だった。
アドニスの住んでいる地域では、冬でもほとんど雪が降らない。
十歳の少年が雪を見ただけでテンションが最高潮になるのも、無理はない。
「まあ、こんなの誰でもできるよ――と言いたいところだけど、人間には魔素を扱えないんだ」
「えっ?」
「俺たちとは、そもそもの身体構造が違う。もし魔法を使いたいなら、身体を改造して……最終的にはマジカルヒューマノイドに転生するしかないかな」
「改造……?」
「でも、人間の寿命って短いよな? 百年くらいだろ? まずはサイバネティックオーラで寿命を延ばさないと、それも難しいけどな」
「…………」
まったく意味が分からない。
百年近く生きる。
アドニスにとって、それは十分に長い。
それを「短い」という。
「じゃあ……あんたらマジカルヒューマノイドの寿命って何年なんだよ」
「んーー。そんなくだらないこと、考えたこともないな」
サウザーは少し考える。
「ちなみに俺は今、千五百歳くらいだ。ちゃんとした年齢は……分からない」
「…………」
「…………」
「千五百歳!?」
なんとなく想像はしていた。
それでも桁が違いすぎた。
「どう考えても、僕より少し年上くらいにしか見えないよ!」
「そりゃそうさ。人間と俺たちじゃ、流れてる時間の感覚がまったく違うからな。だから人間は『先急ぐ者』なんだよ」
「…………」
なんとなく状況は分かり始めた。
しかし、話の三割程度しか頭へ入ってこない。
驚くことが多すぎるのだ。
アドニスは落ち着こうと、大きく息を吸い込んだ。
「すーーーーー……!?」
『息が吸えない!!!』
慌ててじたばたする。
「おいおい、何やってるんだよ」
サウザーが呆れた顔をする。
「思念体が呼吸なんてできるわけないだろ? 結局、仮初の身体なんだからな」
「それを先に言ってよ!」
アドニスは声を荒らげる。
「一体何がどうなってるのか、全然理解できないって! それと、ちゃんとした『連れてきた理由』をまだ聞いてない!」
また振り出しに戻った。
何度このやり取りをしているのか。
アドニスにも、なんとなく分かってきた。
サウザーは――かなりマイペースだ。
なかなか話が噛み合わない。
それに焦る自分を、サウザーはまた「先急ぐ者」と呼ぶのだろう。
アドニスは少し考え、質問の仕方を変えることにした。
「じゃあさ」
「ん?」
「どうして、あんたは僕と一緒にいてくれるんだ? ここへ来たのも、何かするためなんだろ?」
『うまい』
アドニスは内心、自分を褒めた。
かなり上手な質問だと思った。
しかし――。
「そんなの、友達が欲しかったからに決まってるじゃないか」
「……は?」
「俺は今、トレジャーハンターをしてるんだ。ここは倉庫兼研究室」
サウザーは楽しそうに話し始める。
「最近発見された地下遺跡の古文書に、アドニスのいた世界――人間界への行き方が書いてあったんだ。それをいただいて、今研究してる真っ最中ってわけ」
そして、にっと笑った。
「その第一の集大成がお前なんだよ、アドニス!」
「…………」
度肝を抜くようなことを、さらりと言う。
アドニスは、出ないはずのため息をつきたくなった。
「じゃあ結局、誰でもよかったんじゃないか」
「いや――」
「なんで僕なんだよって聞いたら、『不思議な感じがした』って言うんだろ? 答えになってないよ」
俯く。
「友達って……わけ分かんないよ」
涙が溢れそうになる。
だが、思念体の身体では涙も出ないらしい。
そんなアドニスへ、サウザーがそっと手をかざした。
今度は青ではなく、暖かな黄色い光が灯る。
その光が、アドニスを包んだ。
「別に、誰でもよかったわけじゃない」
サウザーの声が少し変わる。
「俺は、お前をずっと見てきた」
「……」
「『死ぬよりまし』なんて思ってる奴を、放っておけるかよ」
アドニスが顔を上げる。
「俺と一緒にマキナで暮らそう。沢山遊ぼう」
サウザーは笑った。
「力尽きるまで。そして――また来い」
黄色い光が消える。
同時に、アドニスの身体から力が抜けた。
そのまま横になり、眠るように意識を失う。
※
「……っ!」
すぐに目が覚めた。
自室だった。
アドニスは慌てて時計を見る。
「四時……五十分?」
一分も経っていなかった。




