↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の異世界攻略日記  作者: サメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/38

第36話 王国の事情

「それじゃ、改めて聞かせてもらおうかの」


エミリアの部屋。


昨日まで牢屋に入れられていたとは思えないほど、穏やかな空気が流れていた。


優馬とルシアは、用意された椅子に座っている。


向かいにはエミリア。


その隣にはグスタフ大臣と、ロイドとエマの兄妹。


ハクはというと、再び小さくなって、エマの膝で気持ちよさそうに眠っていた。


「そういえば、まだ名乗っておらんかったな」


エミリアが優馬を見る。


「我の名は、エミリア・フォン・アルヴェリア。アルヴェリア王国の第一王女じゃ」


「ああ、そうだったのか」


優馬は素直に頷いた。


昨日まで、ずっと「王女」としか呼んでいなかった。


「俺は田中優馬。こっちはルシア」


「よろしくお願いします」


ルシアも軽く頭を下げる。


優馬は、少し離れたところにいる二人の子供を見る。


「それと、こっちの二人はロイドとエマ。兄妹だ」


「よろしくお願いします」


ロイドが少し緊張した様子で頭を下げる。


「よろしく……お願いします」


エマも小さく頭を下げた。


「そして、こちらはグスタフ。我が国の大臣じゃ」


紹介されたグスタフが、優馬をじろりと見る。


「グスタフだ。貴様のことは、二人からも色々と聞いている」


「ああ、よろしくお願いします」


優馬は、すでにこの大臣が見た目や話し方通りではない人柄であることに好感を持っていた。


「ぐふふ、ずいぶんと気楽な男だな」


「そうですか?」


「まあよい。それよりも、話を進めるぞ」


グスタフは腕を組んだ。


「改めて聞きたい。貴様らが何者なのか。まずはそこからだ」


「ああ」


優馬は少し考える。


当然、本当のことを話すわけにはいかない。


「俺たちは、すごく遠くから来たんです」


「すごく遠く?」


「ああ。もう、びっくりするくらい遠く。もう帰れないほど。正直、途中でハク、その馬……天馬か。そのハクに乗せてもらわなかったら、もっと時間がかかってた」


(うん、嘘は言ってない)


優馬は心の中で呟いた。


「私は優馬さんのお目付け役みたいなものです。まあ、簡単に言うと友人です」


ルシアも当たり障りのない答えを返す。


「ふむ……」


エミリアは二人をじっと見る。


「では、なぜこの国へ来たのじゃ?」


「冒険者になるため」


「冒険者?」


「ああ」


優馬は少し照れくさそうに笑った。


「地元にいた頃、冒険者の話を聞いたことがあってさ。いろんな場所に行って、見たこともないものを見たり、知らない人に会ったりするんだろ?」


「うむ」


「それが面白そうだなって思って。せっかくだし、世界を見て回ろうと思ったんだ」


エミリアはしばらく黙っていた。


「……ずいぶんと変わった理由じゃな」


「そうか?」


「国を出て、わざわざ戦争が起きているこの国へ旅をする者など、そう多くはおらん」


「まあ……そう言われると、そうかもしれないな。でも、知らなかったよ。戦争してるなんて」


グスタフが鼻を鳴らす。


「まあ、そうだとしたら、話としては筋が通っているな。よくある普通の話だ。少なくとも、貴様が我が国に害をなすために来たという証拠はない」


「まあ、それなら俺としても助かります」


「ただし、完全に信用したわけではないぞ、貴様」


「分かってますって」


グスタフは少し不満そうに顔をしかめた。


だが、それ以上追及することはなかった。


「それよりも、ユーマ」


エミリアの表情が少し真剣になる。


「今、この国はグライス帝国と戦っておる」


「帝国?」


「うむ」


グスタフが説明を引き継ぐ。


「現在は大規模な戦闘こそ起きていないが、国境付近では小競り合いが続いている」


「なるほど……」


「アルヴェリアには、戦略級の強さを誇る大将軍がいる。そして、それに並ぶほどの強さを持つ、王国冒険者ギルド所属のSランク冒険者が三人いる」


「Sランクが三人……」


優馬は思わず呟いた。


「ってか、四人だけですか? その強いって言われる人たちは」


「ぐふふふふ、『だけ』ではなく、四人『も』いるのだ」


グスタフは不敵に笑う。


「その一人一人が一軍に相当するほどの強さを持つのだ。彼らの力があるから、兵力で劣る我が国が帝国と渡り合えている」


「そんなに?」


「ああ」


グスタフは続ける。


「グライス帝国の兵力は、我が国のおよそ十倍だ」


「十倍?」


優馬は目を丸くした。


「それ、かなりヤバくないか?」


「だからこそ、今の均衡が保たれていること自体が奇跡なのじゃ」


エミリアが胸を張る。


「我が国の大将軍と、三人のSランク冒険者。その力が圧倒的なのじゃ」


「なるほどなぁ……」


優馬は腕を組んだ。


兵士の数は十倍。


それでも戦線を維持できている。


つまり、それだけ一部の強者が突出しているということだ。


「そこでじゃ」


エミリアが優馬を見る。


「お主にも協力してもらえぬか?」


「俺に?」


「うむ」


「何をすればいいんだ?」


エミリアは、優馬の隣で眠っているハクを見る。


「お主は神獣を従えておる」


「従えてるっていうか……まあ、一緒にいるだけなんだけどな」


「それでもじゃ」


エミリアは真剣な顔で言った。


「お主ほどの力を持つ者が我が国に加われば、停滞しておる戦線を押し返せる可能性がある。いや、押し返せる」


「……」


優馬は黙り込んだ。


正直に言えば、戦争なんて関わりたくない。


自分は冒険者になりたいだけなのだ。


異世界に来てまで、戦争に巻き込まれるつもりはない。


「まあ……その話は、ちょっと考えさせてくれ」


「うむ。無理にすぐ答えを出せとは言わぬ」


エミリアは素直に頷いた。


すると、グスタフが口を開いた。


「それと、貴様らには別の話がある」


「別の話?」


「今回の件については、我々にも非があった」


グスタフは腕を組んだまま、偉そうに言う。


「貴様らを疑い、牢に入れ、挙げ句の果てには姫様自ら攻撃までしているからな」


「……まあ、そうですね」


「だから詫びとして、しばらく王城に滞在することを許そう」


「城に?」


「ああ。もちろん、そこの娘と兄妹も一緒で構わん」


「それは……ありがたいけど。あ、ロイドとエマは……」


「ぐふふふふ、事情は聞いておる。ウーノをしながらな。二人は城で雇ってやろう。仮にお主が我が国専属になろうがなるまいがな」


「あ、ほんとですか?」


「ぐふふふふ、城で働いていれば、二人のロクでもない叔父とやらも手を出せん。いや、すでに貴様が処分したのだったか?」


「いや、処分って。ちょっとビンタで分かってもらっただけですよ」


エミリアがポカンとした顔でグスタフを見る。


「何の話じゃ?」


グスタフは、優馬たちに兄妹二人が同行している理由を話した。


「けしからんな。その叔父とやらは。衛兵は何をしておるのじゃ」


「エミリア様。街では、このような事はざらにございます。残念ですが。もちろん我々も、そういった貧困対策、そして子供たちが健やかに過ごせる国作りを行っておりますが、なにぶん戦時中なもので、人手も足りず、全てを解決することまでは……」


「そうか……あぁ、戦さえ終われば国内の治安回復に力を注いで、このようなことはなくせるのじゃがなぁ……チラッ」


「ぐふふふふ、そうですな。この状況を覆せるような強者が我が国に味方してくれれば……チラッ」


「うぉい、いきなり寸劇が始まった!」


「私も白馬に乗った王子様に迎えにきて欲しいです……チラッ」


「お前はベクトルが違うっ!」


調子に乗るルシアをチョップでツッコむ。

いたたたた、と頭を撫でるルシアを横目に優馬は、答える。


「期待してもらえるのは、ありがたいけど、戦争なんて俺がいたところではなかったし、俺一人がいたところでさ、どうにもならないよ」


「でもさ、ほんとにユーマ兄ちゃんが将軍になってくれたら、戦争なんて終わらせられるんだろ。めちゃくちゃ強いし」


「ハクちゃんもすごかったよ」


「お前らは直球だな。ちょっと待ってくれよ。俺、ただのサラリーマンだったんだぜ。しかも経理」


「なんじゃ、そのさらりーまんとは?」


「あっ、えーと、なんて言うかな。サラリーマンってのは、俺のいた村では大半の男性がやる職業のことで……」


「確か、サラリーマンって、24時間戦えるんですよね?」


「24時間も戦えるのか!?」


「二つくらい上の世代はね。でも、あれは栄養ドリンクの例えだから。そもそも、俺はギリギリゆとりだから、そんなことなかったよ。ってか、よく知ってるな」


「勉強しましたから」


「とにかくさ、ちょっと待ってくれ。俺にはそんな力はないし、戦争も行きたくないよ。冒険者になって、この世界を見て回りたいんだ」


優馬は思わず、元の世界の話をしてしまったが、話を戻す。


「はは、冗談じゃ。無理にとは言わん。とはいえ、この国にいる間は、城に滞在するがよい。お主のような強者がいれば、それこそ本当に帝国からの刺客が来ても安心じゃ」


「ああ、それはマジで助かるよ。お金もないから、宿屋にも泊まれなかったからな」


「ぐふふふふ、貴様、そんな状態でよくロイドたちを連れていこうとしてたのか」


「教会に行こうとしたら、ここに連れてこられたんです」


「ぐふふふふ、であれば、教会よりも城の方が良かろう。仕事は、そうだな。姫様の従者はどうですかな?」


「うむ」


「そうしてくれたら助かるよ。俺たちだと、この国、ってか街のルールとかも分からないことが多いし、仕事もなかったから、二人にちゃんとご飯を食べさせられるか分からなかったし」


「なんじゃ、お主、無職か?」


「職に就く前に連れてこられたの! でも、まあ、頼むよ。お前らもそれでいいか?」


「俺たち、このお城で働けるの?」


「ぐふふふふ、とはいえ、まだ若すぎるからな。しばらくは、城で暮らしながら基礎教育だな」


「勉強できるの?」


「うむ。姫様に仕えるためにもな」


「やったー!」


優馬は、勉強できることが喜びになるということに驚きつつも、兄妹の生活が保証されて、城に泊まれて、食事も出る。


そして何より――。


「ちなみに、俺たちはここにいる間、何か仕事をしたほうがいいのか?」


「ぐふふふふ、貴様、自分から仕事を求めるとは殊勝な心掛けだな」


「いや、そういうわけじゃ……」


「まあよい」


グスタフは口元を少しだけ歪める。


「貴様には、兵士たちの訓練を見てもらいたい」


「兵士の訓練?」


「そうだ」


「俺、兵士の訓練とかしたことないぞ?」


「構わん」


グスタフは平然と言った。


「昨日、貴様は姫様とその騎士を相手に、圧倒的な動きを見せた。ならば、貴様にしか見えないものもあるだろう」


「いや、あれは……」


優馬は苦笑する。


自分には軍事知識なんてない。


兵士をどう鍛えればいいのかなんて、さっぱり分からない。


「正式な軍事指南を頼むわけではない」


グスタフは続けた。


「貴様が訓練を見て、何か気づいたことがあれば教えろ。それだけでいい」


「……それだけ?」


「ああ」


優馬は考える。


自分には軍事経験なんてない。


でも、大事な話は…


「ちなみに、その指南役って、お金もらえるのか?」


グスタフがニヤリと笑った。


「当然だ。滞在中の報酬として、多少ではあるが支払おう」


「やる」


即答だった。


「優馬さん……」


ルシアが呆れたように見る。


「お金の話になった瞬間、判断が早すぎません?」


「だって、俺、財布すら持ってないんだぞ」


優馬は真顔で答えた。


この世界に来たときから、財布なんて持っていない。


当然、この世界のお金も一枚も持っていない。


冒険者になるにも、何かと金が必要になるだろう。


「それなら、しばらく城に泊めてもらえて、飯も食えて、仕事をすれば金ももらえる」


優馬は頷いた。


「悪くない話だろ」


「……まあ、そうですね」


ルシアも納得したようだった。


エミリアが嬉しそうに笑う。


「では、決まりじゃな!」


「おう」


グスタフが満足そうに頷く。


「決まりだ。貴様には、しばらく我が国の兵士たちを見てもらう」


「分かった」


こうして優馬とルシアは、しばらくの間、アルヴェリア王城に滞在することになった。


そして優馬は、兵士たちの訓練を見守る指南役を引き受けることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。