↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の異世界攻略日記  作者: サメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/38

第34話 神獣の真価

エミリアは、目の前の男を見ていた。


信じられない。


三体の精霊による同時攻撃。風の刃、炎の槍、雷の閃光。普通の人間なら、避けることすらできないはずだった。


それなのに。


目の前の男は、避けた。


ただ、それだけだった。


「……」


エミリアは目を細める。


男の動き。反応。身体能力。どれも普通ではない。しかし、攻撃を受ける気配もない。


「まだじゃ」


エミリアが呟く。


「もう一度じゃ!」


三つの光が一斉に動いた。


◇◇◇


優馬は困っていた。


「いや……なんで?」


目の前の少女。どう見ても十歳くらいだ。


その周囲に浮かぶ三つの光。精霊か何かだろう。

異世界だし。


そして、その精霊たちが攻撃してくる。


「ルシア」


「はい」


「これ、話し合い、失敗した感じですか?」


「完全に失敗していますね」


「まだ一言も話してすらいないけどなぁっ!」


優馬は迫ってきた炎を横へ避ける。その直後、足元から風が吹き上がった。


「うわっ!」


身体が浮く。


しかし、空中で身体を捻り、そのまま着地する。


「……」


エミリアの目が大きく開く。


「今のを避けるか」


次は雷。


優馬は身体を横へ投げ出す。


続けて炎。


避ける。


風。


避ける。


雷。


また避ける。


何度攻撃しても、当たらない。紙一重でかわされる。


「……」


エミリアは眉を寄せた。


「馬鹿な。なぜ当たらぬのじゃ」


「いや、こっちも聞きたいんだけど!」


優馬は叫びながら炎を避ける。


「なんで攻撃されてるの? 俺、何かしました?」


その言葉に、エミリアの動きが一瞬止まった。


だが、すぐに精霊たちへ視線を戻す。


「……お主」


エミリアは優馬を睨む。


「本当に何者なのじゃ」


「それ、こっちの台詞なんだけど……」


優馬がぼやいた、その時だった。


「うりゃぁぁ!」


背後から声が響いた。


「え?」


優馬が振り向く。


そこには、白銀の鎧を身につけた女騎士がいた。


手には抜き身の剣。


そして、その切っ先は真っ直ぐに優馬の首へ向かっている。


「ちょっ――!」


優馬は咄嗟に身を屈めた。


剣が頭上を通り過ぎる。


「何であんたまで!?」


「姫様に対する無礼、見過ごすわけにはいかん!」


「いや、俺が何したんだよ!」


優馬が叫ぶ。


しかし、女騎士は止まらない。


「姫様の御前で騒ぎ立て、精霊の攻撃を避け続けるなど、到底許されぬ!」


「いや、それは避けるだろ!」


再び剣が振り下ろされる。


優馬は横へ飛ぶ。


その直後、炎が横切った。


「うわっ!」


「動くな!」


「無茶言うな!」


前から精霊。


後ろから女騎士。


優馬は完全に挟み撃ちにされていた。


「ルシア!」


「はい!」


「何とかして!」


「私は戦いません。頑張ってください」


「ですよね!」


優馬は炎を避け、雷をかわし、女騎士の剣を身をひねって避ける。


そのたびに床や壁が破壊されていく。


「姫様!」


女騎士が叫ぶ。


「この者、只者ではありません!」


「分かっておる!」


エミリアも驚きを隠せない。


精霊たちの猛攻を避けながら、女騎士の剣までかわしている。


それでも、優馬は一度も攻撃を返さない。


「……」


エミリアの魔力がさらに膨れ上がる。


「姫様、本気になられるのですか!」


女騎士が叫ぶ。


「当然じゃ!」


エミリアの周囲に、風、炎、雷の精霊たちが集まっていく。


三つの力が、これまでとは比べものにならないほど膨れ上がっていく。


「この国を守るため、父上たちが帰ってくる場所を守るため……中途半端な力では足りぬのじゃ!」


「承知しました!」


女騎士も剣を構える。


「ならば、私もお力添えを!」


「いやいやいや!」


優馬が叫ぶ。


「何でそっちも乗り気なんだよ!」


「覚悟!」


女騎士が再び斬りかかる。


優馬は身体をひねってかわす。


その瞬間、目の前から炎が迫った。


「うわっ!」


優馬は咄嗟に横へ飛ぶ。


そこへ雷。


「危なっ!」


さらに風。


「ちょっ、待って!」


前後左右から次々と攻撃が飛んでくる。


優馬は必死に避け続ける。


そして、女騎士の剣が再び首へ迫った。


「――っ!」


優馬は反射的に身体を沈める。


剣が頭上を通り過ぎる。


「いい加減にしてくれ!」


優馬は黒い剣の柄を握った。


まだ鞘すら用意されていない、むき出しの黒い刀身。


女騎士が再び踏み込んでくる。


「姫様に無礼を働いた者は――!」


「だから、何もしてないって!」


ガキィン!


黒い剣と白銀の剣が激しくぶつかった。


次の瞬間。


「なっ――!」


女騎士の身体が大きく弾き飛ばされた。


白銀の鎧ごと宙を舞い、天井にバウンドし、その勢いのまま床へ叩きつけられる。


「……」


女騎士は、その場で動かなくなった。


「え?」


優馬は目を丸くする。


「……大丈夫か?」


返事はない。


ルシアが女騎士を確認する。


「気絶しただけのようですね」


「よかった……」


優馬はほっと息を吐く。


だが。


「まだじゃ!」


エミリアの声が響いた。


三つの精霊が、限界まで力を高めていた。


風。


炎。


雷。


三つの属性が渦を巻き、一つの巨大な魔力へと変わっていく。


「行くぞ!」


エミリアが叫ぶ。


「全力じゃー!」


空間が震える。


城全体が揺れ始めた。


優馬は、その圧力に思わず息を呑んだ。


「……これ、避けられるか?」


ルシアは迫り来る魔力を眺めながら、いつもの調子で答えた。


「うーん……避けちゃうと、多分、建物自体が壊れちゃうと思いますよ」


「気楽に言うなよ!」


「でも、それくらい魔力が高まってますよ」


「そうか……」


優馬は目の前の少女を見つめた。


どこぞの戦闘民族が気を高めてる様子とそっくりだ。


これまでの攻撃とは明らかに違う。


多分、避けること自体はできる。


だが、避ければ攻撃はそのまま後ろへ抜ける。


ここは王城の中だ。


まともにぶつかれば、建物そのものが無事では済まない。


「……」


優馬は覚悟を決めて、手の中の剣の柄を握り直す。


「じゃあ、受けるしかないか」


その時だった。


横にいたハクが、ゆっくりと前へ出た。


「え?」


いつもなら優馬のそばで眠そうにしている小さな白馬。


そのハクが、優馬の前に立つ。


「ハク?」


呼びかけても、ハクは振り返らない。


ただ、エミリアたちの方を静かに見つめている。


すると。


ハクの身体から、淡い青白い光が漏れ始めた。


「……なんだ?」


優馬が目を細める。


光が少しずつ強くなっていくにつれ、小さかった体が元のサイズに戻った。そして、


「……え?」


ハクの背中が、淡く輝いた。


白い毛並みの下。


肩甲骨の辺りから、何かが浮かび上がってくる。


「まさか……」


優馬が一歩近づく。


その瞬間。


ハクの背中から、一対の白い翼が生えた。


「……ハク?」


優馬が呟く。


それはまるで、身体の内側から押し出されるように、ゆっくりと伸びていった。


純白の羽毛が光を受けて輝き、その翼がゆっくりと開いていく。


「翼……」


優馬は言葉を失った。


今まで眠っていた何かが、目を覚ましたようだった。


翼が大きく広がる。


その瞬間、強い風が巻き起こった。


優馬の服が大きくはためく。


「うわっ!」


思わず腕で顔を覆う。


風が収まる。


優馬が顔を上げる。


そこにいたのは、さっきまでの小さな白馬ではなかった。


白い毛並みが光を帯び、たてがみが風もないのに大きく揺れる。


「……ハクさん?」


優馬の声に、ハクがゆっくりと振り返る。


その瞳は、いつもの眠そうなものではない。


青く澄んだ光を宿していた。


優馬は息を呑む。


「……これが」


ルシアも、しばらく言葉を失っていた。


そして、ぽつりと呟く。


「神獣……」


その言葉に反応するように、ハクの翼が大きく広がった。


青い光が、その身体を駆け抜けていく。


エミリアも目を見開いていた。


「……天馬」


目の前にいるのは、ただの白馬ではない。


伝説に語られる神獣。


天を駆ける白き獣。


その姿だった。


優馬は、しばらくハクを見つめていた。


「……お前、そんなだったのかよ」


ハクは何も答えない。


ただ静かに、迫り来る巨大な魔力を見つめて、

たてがみが揺れる。


そのハクを目掛けて、三体の精霊が、最大の力を放つ。


「アルヴェリア・ブレイク!」


巨大な魔力が迫る。


優馬は叫んだ。


「ハク!」


次の瞬間。


青く光るたてがみが大きく揺れた。


白い光が広がる。


衝撃。


爆音。


城全体が震える。


魔力と神獣の力がぶつかり合う。


床が砕け、壁に亀裂が走る。


エミリアは、その光景を見ていた。


自分の最大攻撃。


それを、天馬は真正面から受け止めている。


「……」


「なんじゃ……」


これほどの力。


これほどの存在。


全力を使った反動で、エミリアの視界が揺れる。


「強すぎるのじゃ……」


小さく呟いた瞬間、身体から力が抜けた。


「姫様!」


ルシアの声が響く。


優馬も慌てて駆け寄った。


「え?」


エミリアの身体が、その場に崩れ落ちる。


優馬が咄嗟に受け止める。


「気絶した?」


その直後、エミリアの周囲に浮かんでいた三つの光も、ふらふらと揺れ始めた。


『……つかれた』


『もう……むり……』


『パフェ……』


三つの精霊は、エミリアの身体の周りへ集まるように降りていく。


そして、そのまま光が弱くなった。


「……」


三つとも、エミリアの周囲にふわりと落ち、完全に動かなくなった。


「こっちも気絶したのか?」


ルシアが精霊たちを覗き込む。


「どうやら、そのようですね」


優馬は腕の中のエミリアを見る。


その周囲には、力尽きた三つの精霊。


少し離れた場所には、黒い剣で吹き飛ばされて気絶した女騎士。


そして、その前には巨大な白い天馬。


「……」


優馬は周囲を見回した。


壁には大きな亀裂。


床はところどころ砕けている。


「……これ、俺が悪いのか?」


「どうでしょう」


ルシアが周囲を見渡す。


「少なくとも、最初に攻撃してきたのは姫様たちですね」


「だよな」


優馬は少しだけ安心した。


そして、腕の中のエミリアを見る。


「とりあえず、この子をどうすればいいんだ?」


その場に残ったのは、気絶した姫と精霊たち、そして女騎士。


さらに、そのすべてを受け止めた巨大な天馬。


状況をまったく理解できていない優馬は、ただ呆然と立ち尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。