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僕の異世界攻略日記  作者: サメ


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第26話 次なるステージ

次の日の昼。


「できたぞー!」


村のおじさんが、大きな木箱を抱えてやって来た。


優馬は勢いよく立ち上がる。


「待ってました!」


箱の中には、綺麗な飴色に燻された魚がぎっしりと並んでいた。


燻製独特の香ばしい香りが広がる。


「おぉ……」


優馬は一本手に取り、じっと眺めた。


「これが燻製か」


「食べてみるかい?」


「このまま食べられるんですか?」


「もちろん!」


一口かじる。


「……」


「……」


優馬はしばらく無言で噛み続けた。


そして――


「うまっ!」


噛めば噛むほど、魚の旨味が出てくる。


塩気もちょうどいい。


「これ、本当に保存食ですよね?」


「そうだよ」


「めちゃくちゃ美味いじゃないですか」


村のおばさんが笑った。


「そりゃ、作りたてだからね」


「街へ着く頃には、もっと味が馴染んでるよ」


「最高だ……」


優馬は満足そうに頷いた。


ルシアも一本受け取る。


「美味しいですね」


「魚生活の集大成だな」


「もっと早くに燻製を知りたかったですね」


「だな」


二人は顔を見合わせて笑った。


◇◇◇


旅支度は順調に進んだ。


燻製した魚を袋へ詰める。


水袋を用意する。


村人たちは、干した果物や木の実まで分けてくれた。

なんと、毛皮の下に着る布の服まで譲ってくれた。


今までは、パンツの上に毛皮というワイルドな山賊スタイルだったが、マイルドな山賊スタイルにバージョンアップだ。


「そんなに色々もらっていいんですか?」


優馬が驚く。


村長は穏やかに笑った。


「あなたは、あの子達の恩人です。これくらいしか返せませんが」


優馬は少し困ったように笑う。


「十分すぎますよ」


食料の入った袋を持ち上げてみる。


「これなら、街まで食べるものには困らなさそうですね」


「ええ」


村長が頷く。


「冒険者になったら、またこちらにお立ち寄りください」


「もちろんです」


村長は懐から一枚の紙を取り出した。


「それと、これを」


「ん?」


紙には、この世界の文字が書かれていた。


優馬は紙を受け取ったものの、そこに何が書かれているのかは分からない。


「……ルシア、これ何て書いてある?」


「えっと……」


ルシアが紙を覗き込む。


「街の冒険者ギルド宛ての紹介状ですね。今回のことを書いてあります」


「紹介状?」


「はい。今回の件を説明して、優馬さんをよろしくお願いします、と」


「そんなのまで?」


優馬は少し驚いた。


「受け取ってください」


村長が笑う。


「ありがとうございます」


優馬は両手で大切に受け取った。


「……文字、読めるようになったほうがいいな」


「そうですね」


ルシアが笑う。


「これから街に行くなら、覚えたほうが便利ですよ」


「だよなぁ」


優馬は紹介状を眺めた。


今は何が書いてあるのか分からない。


でも、これからこの世界で生きていくなら、いつまでもルシアに頼りっぱなしというわけにもいかない。


「よし。いつか勉強しよう」


「いつか、なんですね」


「まずは冒険者になるのが先だ」


「なるほど」


ルシアは笑った。


◇◇◇


準備が終わる頃には、村人たちが外へ集まっていた。


「もう行くのか」


「また来てくれよ」


「街まで気を付けてな」


子どもたちも駆け寄ってくる。


「お兄ちゃん!」


「ありがとう!」


優馬は二人の頭を優しく撫でた。


「今度は二人だけで森に入るなよ」


「はい!」


「約束します!」


レックとミーナは元気よく返事をする。


優馬は二人の顔を見て、安心したように笑った。


「それならよし」


レックが少し照れくさそうに口を開く。


「お兄ちゃんも、頑張ってね」


「おう」


「冒険者になるんでしょ?」


「そうだな」


優馬は笑う。


「まずは街に行って、冒険者ギルドに登録だ」


「頑張って!」


「応援してる!」


「ありがとう」


優馬は二人に手を振った。


◇◇◇


荷物を背負う。


黒い大剣も背負い、布の服の上から狼の毛皮を羽織る。


改めて自分の格好を見下ろしてみる。


「……やっぱり山賊っぽいな」


「今さらですか?」


ルシアが笑った。


「でも、ちょっとマシになりましたよ。肌の露出が減って」


「だよな」


優馬は苦笑する。


隣にはハクが並び、ルシアも笑顔で立っている。


準備は整った。


優馬は村を見渡した。


ほんの数日前まで、こんな生活をするなんて想像もしていなかった。


森で目を覚まし。


魚を獲って。


家を作って。


ルシアと出会い。


ハクとも出会った。


そして、この村ではレックとミーナを助けることになった。


短い時間だった。


それでも、少しだけ名残惜しい。


村長が前へ出る。


「どうか、お元気で」


「皆さんも」


優馬は深く頭を下げた。


「本当にお世話になりました」


村人たちも一斉に頭を下げる。


「気を付けて!」


「立派な冒険者になれよ!」


「また遊びに来い!」


優馬は照れくさそうに笑った。


「はい!」


「必ずまた来ます!」


そう言って、歩き出そうとした。


その時。


「優馬さん!」


大きな声が響いた。


振り返る。


ミーナが満面の笑みで手を振っていた。


「頑張ってください!」


優馬も大きく手を振り返す。


「ありがとう!」


「頑張る!」


その隣で、レックも大きく手を振っている。


「俺も、いつか冒険者になるから!」


「おう!」


優馬は笑った。


「その時は負けないからな!」


「はい!」


二人の元気な声が響く。


ハクが一歩前へ出た。


「ブルルッ」


「お前も挨拶?」


「ブルルッ♪」


村人たちから笑い声が上がる。


「本当に賢い馬だな」


「また来てくれよー!」


ハクは嬉しそうに尻尾を揺らした。


優馬は笑いながら歩き出す。


目指すは、冒険者ギルド。


そして、その先にある街だ。


「よし」


優馬は青空を見上げた。


「行こうか」


ルシアが元気よく拳を上げる。


「次の目的地は街です!」


「目標!」


優馬も笑う。


「文明を手に入れる!」


「おー!」


ハクも、


「ブルルッ!」


と鳴いた。


一人と一体と一頭は、笑いながら街への道を歩き始めた。


森で始まった異世界生活は、ここから新しい段階へ入っていく。



⸻


NEXT GOAL『冒険者になる』

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