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僕の異世界攻略日記  作者: サメ


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第21話 山賊、完成しました

「ただいまー!」


優馬は拠点へ戻ると、黒い剣を壁へ立て掛けようとして、少し考えた。


壁に立て掛けて倒れたら危ない。


結局、床に置いた。


ゴトン。


「ふぅ」


肩を軽く回す。


「やっぱり、ちょっと重いな」


「お疲れ様です」


ルシアも荷物を降ろしながら笑う。


「遺跡探検、楽しかったですね」


「宝は全部持っていかれてたけどな」


「数百年遅かったですから」


「せめて銀貨一枚くらい残しといてほしかった」


「それは無理でしょう」


二人は顔を見合わせて笑う。


すると、優馬の視線が黒い剣へ向いた。


「そうだ」


「どうしました?」


「試しに使ってみる」


優馬は黒い剣を持ち上げた。


ズシッ。


「……うん」


普通の剣より重い。


普通の剣なんて持ったことはないけど。


それでも、持てないほどではない。


「ちょっと重いな」


優馬は肩へ担ぎ、そのまま軽く振ってみる。


ブォン。


ゆっくりと風を切る音が響いた。


「でも、このくらいなら慣れれば普通に使えそう」


ルシアは黒い剣を見つめた。


「本当に持てるんですね」


「ん?」


「いえ。私なら、こんな重い物は持ちたくないです」


「そうか?」


「ちょっと持ってみてもいいですか?」


「どうぞ」


ルシアは柄を握った。


「よいしょ……」


ぴくり。


「……」


もう一度。


「ふんっ!」


ぴくり。


「…………」


「どうだ?」


ルシアは静かに手を離した。


「持てません」


「やっぱり?」


「はい」


「まあ、無理するな」


「ありがとうございます」


ルシアは剣を見ながら首を傾げた。


「これ、何なんでしょうね?」


「さあ?」


優馬も首を傾げる。


「見た目は剣だけどな」


「はい」


「とりあえず、使えるか試してみるか」


優馬は近くに落ちていた枝を一本拾った。


「切れるか試してみよう」


枝を立てる。


スッ。


黒い剣を振り下ろす。


ゴッ!


枝が勢いよく吹き飛んだ。


「……」


「……」


切れていない。


「もう一回」


ゴッ!


また吹き飛ぶ。


「切れないな」


「切れませんね」


三回。


四回。


何度試しても、枝は切れずに吹き飛ぶだけだった。


「見た目は剣なのにな」


「不思議ですねぇ」


優馬は剣先を眺める。


「刃はあるよな?」


「あります」


「あるのに切れない」


「切れません」


二人はしばらく黒い剣を眺めた。


「……」


「……」


「鈍器?」


優馬が真顔で言う。


ルシアは吹き出した。


「剣ですよ!」


「いや、切れないなら鈍器だろ」


「それはそうなんですけど」


「殴る分には強そうだし」


「発想が力技なんですよ」


優馬は笑いながら剣を肩へ担いだ。


「護身用なら十分だ」


「そうかもしれませんね」


ルシアも黒い剣を見る。


「でも、本当に何なんでしょう?」


「さっぱり分からん」


二人にも、この剣が何なのかは分からなかった。


◇◇◇


夕方。


今日も魚を焼いて、野菜を添える。


仕上げに岩塩を振る。


「いただきます」


「いただきます!」


ハクも人参もどきを美味しそうに食べている。


「異世界生活も、だいぶ慣れたな」


「そうですね」


ルシアが頷く。


「生きるだけなら、もう困りませんね」


「……うん」


優馬は空を見上げた。


異世界へ来たばかりの頃は、生き延びるだけで必死だった。


服もなかった。


食べ物もなかった。


火を起こすことさえ一苦労だった。


それが今では、寝る場所があり、食べ物があり、服も一応ある。


まだまだ原始的ではあるが、少しずつ生活らしくなってきた。


「顔でも洗うか」


優馬は川へ向かった。


水面を覗き込む。


そこには、異様な自分が映っていた。


狼の毛皮をまとい。


腰には石斧。


手には、なんかいい感じの棒。


そして、髪は伸び、髭も結構生えている。


「……」


優馬は固まった。


「……誰だ、この山賊」


後ろからルシアが覗き込んできた。


「どうしました?」


「これ」


優馬は水面を指差す。


「俺だよな?」


「はい」


「……山賊じゃん」


ルシアは真顔で頷いた。


「どう見ても山賊です」


「そんなに?」


「そんなにです」


優馬は肩を落とした。


「街に行ったら捕まりそう」


「事情を説明する前に囲まれそうですね」


「なんかイメージしてたのと違う」


「でも」


ルシアは少しだけ優しい声で言った。


「服は欲しいですね」


「……だな」


優馬も苦笑する。


「ちゃんとした服。そして、お金」


「どちらもありませんね」


二人は顔を見合わせ、同時に笑った。


「うーん」


優馬は黒い剣へ視線を向ける。


「まあ、なんとかなるだろ」


その言葉には、不思議と根拠のない自信があった。


異世界へ来て、まだ数日。


優馬は今日も、山賊みたいな格好で笑っていた。

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