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僕の異世界攻略日記  作者: サメ


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第19話 それはまるで少年の頃のような

ハクを先頭に、一行はさらに森の奥へと歩き始めた。


目的は探検。


ただ、それだけだ。


「いやぁ、いいなぁ」


優馬は両手を頭の後ろで組みながら歩く。


「異世界を探検してるって感じがする」


「楽しそうですねぇ」


ルシアが笑う。


「そりゃ楽しいだろ」


長い間。


会社と家を往復するだけだった人生。


休日はスーパーへ行き、ビールを飲んで寝る。


そんな生活を送っていた自分が、今は異世界の森を歩いている。


それだけで、不思議と笑みがこぼれた。


見たことのない木。


見たことのない花。


見たことのない鳥。


「……平和だな」


「ですね」


「もっとこう……魔物とか出てくると思ってた」


「ゲームなら、スライムくらいはいますよね」


「最初の森だしな」


二人は周囲を見渡す。


しかし、見えるのは揺れる木々と小鳥だけ。


魔物の気配は、まるでない。


もっとも、その理由を二人はまだ知らない。


先頭を歩くハクの気配を察知した魔物たちが、揃って距離を取っているだけだということも。


風下からハクの匂いを嗅いだ何かが、遠くで小さく鳴いて逃げていく声が、一度だけ聞こえた気がした。


「今の、鳴き声か?」


「風の音じゃないですか?」


「そうかもな」


「安全な森なんだなぁ」


優馬はすっかり安心していた。


「良かったですね」


ルシアも頷く。


二人とも、完全に勘違いしていた。


「……ん?」


優馬が道端に落ちていた何かを見つけた。


真っ直ぐ伸びた、ちょうどいい棒だった。


長さは一メートルほど。


握りやすい太さ。


「おっ」


持ち上げる。


「いい感じ」


ブンッ。


軽く振る。


風を切る音が響いた。


「似合ってますね」


「だろ?」


優馬は嬉しそうに肩へ担ぐ。


「男って、こういう棒好きなんだよ」


「子どもみたいですね」


「男は何歳になっても少年なんだ」


「なんか名言っぽく言ってます」


「実際そうだからな」


石斧もある。


投石用の石もある。


そして、新しく棒も手に入った。


「武器が増えた」


「一本の棒ですけどね」


「ロマンがある」


「ロマンなんですね」


「ロマンだ」


二人で笑った。


歩き続けること二時間。


「そろそろ昼飯にするか」


「賛成です!」


川で捕って焼いておいた魚。


昨日見つけた野菜。


少しだけ木の実。


そして岩塩。


即席の弁当だ。


「いただきます」


「いただきます!」


ハクにも野菜を差し出す。


ブルルッ。


ハクは美味しそうに食べ始めた。


優馬も魚を頬張る。


「うん」


「やっぱり塩ですね」


「文明だ」


「まだ文明じゃありません」


「俺の中では文明だ」


ルシアが笑う。


「次は何が欲しいです?」


「そうだなぁ」


優馬は少し考える。


「醤油」


「ありません」


「味噌」


「ありません」


「マヨネーズ」


「ありません」


「夢がないな」


「ないですねぇ」


二人で笑い合う。


食事を終え、再び歩き始めた。


しばらくすると、それまで続いていた獣道が少しずつ広くなってきた。


「ん?」


「歩きやすくなりましたね」


「誰か使ってるのかな」


優馬は棒を肩に担いだまま、先へ進む。


さらに進む。


木々の間から、灰色の何かが見えた。


「……あれ?」


優馬は足を止めた。


自然の岩ではない。


妙に真っ直ぐだ。


しかも、四角い。


「人工物?」


ルシアも目を細める。


「……石壁でしょうか」


二人は顔を見合わせた。


そして、木々をかき分ける。


一歩。


また一歩。


視界が開けていく。


そこにあったのは――。


森に飲み込まれた、巨大な石造りの建造物だった。


崩れた柱。


蔦に覆われた壁。


半分以上が土に埋もれた石像。


そして、その奥へと続く、大きく口を開けた入り口。


「……遺跡、だ」


優馬は思わず息を呑んだ。


異世界へ来て初めて見る、人の手で造られた建物。


しかも、誰が、いつ、何のために造ったのか分からない。


胸の奥が高鳴る。


「探検って……こういうことだよな」


優馬は自然と笑みを浮かべていた。


その顔は、自分でも気づかないほど無邪気だった。


まるで。


少年の頃、誰かが作った秘密基地を見つけたときのように。


「行こうぜ、ルシア」


「はい!」


ハクが先に歩き出す。


優馬とルシアも、その後を追った。


未知の森。


未知の遺跡。


何が待っているのかは、まだ誰にも分からない。


ただ一つだけ。


優馬は今、心の底から楽しかった。

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