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僕の異世界攻略日記  作者: サメ


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第15話 森での出会い

翌朝。


焚き火の上では、今日も魚が焼けていた。


「……また魚か」


優馬は串を眺めながら、小さくため息をつく。


焼き魚は好きだ。


好きなのだが、三日続けば話は別だった。


「贅沢な悩みですねぇ」


向かいでルシアが笑う。


「三日前は『生きるために食べる』だったのに、今日は『飽きた』ですもん」


「人間って慣れる生き物だからな」


魚を一口食べる。


もちろん不味くはない。


でも。


「肉が食いたい」


「分かります」


「野菜も欲しい」


「分かります」


「果物も欲しい」


「すごく分かります」


「あと塩」


「あぁぁぁ……」


ルシアは天を仰いだ。


「塩って偉大ですよね」


「日本人の食卓って、恵まれてたんだな」


「お味噌汁飲みたいです」


「やめろ、思い出さすな!」


「じゃあ卵かけご飯」


「朝定食食いてぇ!」


二人で笑いながら魚を食べ終える。


優馬は串を置いて立ち上がった。


「よし。今日は食料探しだ」


「探索ですね!」


「魚以外に食べられるものを見つける」


「賛成です!」


出発前に、優馬は川辺へ向かった。


丸くて握りやすい石を一つ拾う。


もう一つ。


さらにいくつか。


「何してるんです?」


「護身用」


毛皮で作った簡単な袋へ石を入れていく。


「槍より投げやすいし、そこら中に落ちてるからな」


石を手の中で転がす。


大きすぎても投げにくい。


小さすぎても軽い。


自然と、一番しっくりくる大きさの石だけを選んでいた。


「そんなに持つんですか?」


「十個くらいあれば安心だろ」


「なんかコントロールもいいですしね」


「俺もビックリしてる」


準備を終えた二人は、森の奥へ歩き始めた。


昨日まで生活していた場所を離れるにつれ、木々は少しずつ密度を増していく。


見たことのない木。


見たことのない花。


見たことのない鳥。


「こうして見ると、本当に地球とは違うな」


優馬が辺りを見回していると、突然、大きな獣が視界に入った。


「……ライオン?」


思わず足を止める。


二度見した。


「いや、ライオンじゃないな、あれ」


全身を黒褐色の体毛に覆われた巨大な獣。


体格はライオンより一回り大きい。


背中にはコウモリのような翼。


そして尻からは、サソリのような長い尾が伸びていた。


「あれ、ライオンに羽と尻尾が生えてないか?」


「私も実物は初めて見ましたけど……」


ルシアが目を細める。


「あれ、たぶんマンティコアです」


「たぶん?」


「たぶんです」


「そこは断言してほしい」


「初めて見るので!」


マンティコアはこちらには目もくれず、低く唸りながら一点を見つめていた。


視線の先。


木々の間、少し開けた場所に、一頭の白い馬が立っていた。


真っ白な毛並み。


引き締まった身体。


長いたてがみ。


「馬?」


「ですね」


「食われるぞ!」


優馬は反射的に腰袋から石を取り出した。


距離は二十メートルほど。


投げる。


そう判断した、その瞬間だった。


マンティコアが地面を蹴った。


白馬へ飛び掛かる。


「危な――」


言い終わる前だった。


白馬が一歩だけ前へ出る。


そして。


ドンッ!


鈍い衝撃音が森へ響いた。


次の瞬間。


マンティコアの巨体が真横へ吹き飛んだ。


何本もの木をへし折りながら転がり、最後は大きな岩へ激突する。


動かない。


静寂が戻った。


「…………」


優馬は握った石を見る。


そして白馬を見る。


また石を見る。


「……え?」


「……え?」


ルシアも同じ顔をしていた。


「今、何した?」


「分かりません」


「蹴った?」


「たぶん前脚です」


「たぶんか」


「速すぎて見えませんでした」


優馬にも見えなかった。


いや。


見えなかったというより、見たはずなのに理解できなかった。


白馬は何事もなかったようにマンティコアを一瞥すると、ゆっくりこちらへ顔を向ける。


透き通るような青い瞳。


優馬と目が合った。


敵意はない。


警戒しているようにも見えない。


ただ、こちらの存在を確認しているようだった。


「……綺麗な馬だな」


優馬が呟く。


白馬はしばらく優馬を見つめていた。


そして、森の奥へ歩き始める。


「あ……」


優馬は思わず一歩踏み出した。


しかし、すぐに足を止める。


「追いかけるんですか?」


「いや」


優馬は首を横に振った。


「野生動物だろ」


「そうですね」


「縄張りもあるだろうし、むやみに追いかけるのはよくない」


「確かに」


白馬の姿が木々の向こうへ消えていく。


その直前。


一瞬だけ、白馬の背中で何かが揺れた気がした。


「……今、翼みたいなの見えなかったか?」


「え?」


「いや……気のせいかもしれない」


優馬は目をこすった。


木漏れ日の加減かもしれない。


「……また会えるかな」


「どうでしょう」


「でも、なんとなく、また会える気がするんだよな」


「勘ですか?」


「勘」


「当たるといいですね」


その場を離れ、二人はさらに森の奥へ進んだ。


食べられそうな木の実を見つけては、ルシアが知識を披露し、優馬が味見をする。


苦かったり、渋かったり、意外と甘かったり。


そんなことを繰り返しながら、日が傾き始めるまで探索は続いた。


拠点へ戻る頃には、腰袋には木の実がいっぱいに詰まっていた。


「今日は収穫ありましたね!」


「まあまあだな」


「マンティコアも見れましたし!」


「おお、異世界って感じがした」


「あの白馬もすごかったです!」


「だな」


優馬は森の奥へ目を向ける。


さっきの光景が、まだ頭に残っていた。


一撃でマンティコアを吹き飛ばした脚力。


そして、何より。


あの静かな青い瞳。


「……また会えたらいいな」


優馬は小さく呟いて、焚き火の準備を始めた。


森での思いがけない出会いが3日目の異世界を彩った。

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