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僕の異世界攻略日記  作者: サメ


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第10話 異世界到着

眩しかった。

何も見えない。


身体が浮いているような感覚と、どこまでも落ちているような感覚が、同時に襲ってくる。


風もない。


音もない。


時間の感覚すら曖昧だった。


(これ、いつ終わるんだ……)


そう思った瞬間。


ドサッ。


「いってぇ!」


思い切り尻を地面へ打ち付けた。


土だ。


湿った土の感触が手のひらに伝わる。


鼻をくすぐる草の匂い。


木々が風で揺れる音。


どこかで鳥が鳴いている。


恐る恐る目を開けた。


そこは森だった。


見上げるほど高い木々が何本も立ち並び、木漏れ日が地面を照らしている。


「……」


優馬はゆっくりと立ち上がった。


湿った土に尻餅をついたせいで、唯一の持ち物であるパンツが少し湿っている。


辺りを見回す。


右を見ても森。


左を見ても森。


前も後ろも森。


「……森だ」


分かっていた。


分かっていたが、それ以外に表現しようがなかった。


異世界へ来た。


その実感より先に浮かんだ感想が、それだった。


「本当に来ちゃったんだな……」


思わず空を見上げる。


青い。


地球と変わらないくらい、青い空だった。


「感動してます?」


後ろから女の子の声がした。


優馬は反射的に振り返る。


そこには、一人の少女が立っていた。


肩まで伸びた金色の髪。


透き通るような白い肌。


青い瞳。


十四、五歳くらいに見える、小柄な少女だった。


黒を基調にした服装に身を包み、整った顔立ちをしている。


控えめに言って、美少女だった。


「……誰?」


少女は目を丸くした。


「えぇっ!?」


大げさなくらい驚いている。


「私ですよ、私!」


「いや、知らないです」


「さっきまで一緒にいたじゃないですか!」


「……」


優馬は少女をじっと見つめた。


金色の髪。


青い瞳。


人間の少女。


どう見ても、さっきまで隣にいた骸骨とは別人だ。


数秒考える。


そして、一つの答えに辿り着いた。


「……骸骨?」


「そうです!」


少女は満面の笑みで頷いた。


「サポーターです!」


「……」


優馬は少女と自分を見比べた。


ちゃんと服を着た金髪美少女。


そして――パンツ一丁の自分。


「……なんで君は服着てるの?」


「支給品です!」


「俺は?」


「ありません!」


即答だった。


「なんで?」


「ルールです!」


「納得できるか!」


思わず叫ぶ。


少女は困ったように笑った。


「私も最初に確認したんですよ?」


「確認はしてくれたんだ」


「はい でも『現地調達も経験だから』って」


「あいつ……」


脳裏に、無駄に豪華な服を着た王の骸骨が浮かんだ。


どう考えても、あいつの仕業だ。


「それより」


少女が辺りを見回した。


「まずは服を探しましょう」


「そうだな」


「あと、食べ物」


「そうだな」


「水もですね」


「そうだな」


「お金はありません」


「知ってるよ!」


転移直前の爆弾発言は、まだ耳に残っている。


少女は少し申し訳なさそうに笑った。


「大丈夫です!」


「根拠は?」


「気合いでなんとかなります!」


「なんで骨のくせに体育会系なんだよ」


「もう骨じゃありませんよ」


「そうだった」


優馬は深くため息をついた。


改めて周囲を見る。


森。


どこまでも続く木々。


地球でも、こんな場所に来たことはない。


人の声もしない。


道らしきものも見当たらない。


「……本当にゼロからなんだな」


「はい!」


少女が元気よく答える。


「ちなみに」


「ん?」


「私は餓死しません!」


「いいな」


「でも、食べるのは好きです!」


「じゃあ俺の分まで食うタイプ?」


「はい!」


「最悪だ」


少女はケラケラと笑った。


その笑い声につられて、優馬も少しだけ笑ってしまう。


不思議だった。


知らない世界。


知らない森。


所持金ゼロ。


服もない。


普通なら、絶望してもおかしくない状況だ。


なのに。


なぜか、不思議と嫌な気はしなかった。


むしろ――。


少しだけ、胸が高鳴っている。


四十年間、こんな感覚を抱いたことがあっただろうか。


何が起こるのか分からない。


どこへ行くのかも分からない。


それでも、自分で決めて来た。


誰かに命令されたわけでもない。


世界を救えと言われたわけでもない。


ただ、自分の人生を始めるために来た。


優馬は森の奥へ目を向けた。


「よし」


一度、深く息を吸う。


湿った土と草の匂いが、肺いっぱいに入ってくる。


「まずは生き残るか」


「はい!」


少女も笑顔で頷いた。


こうして。


田中優馬、四十歳。


元ゼネコン経理のサラリーマン。


パンツ一丁、所持金ゼロ。


そして、名前のないサポーターを連れて。


優馬の異世界生活が、本当の意味で始まった。



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NEXT GOAL『生き延びる』

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