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包丁
「アズって包丁で指を切ったこと、ある?」
ふと思ったので聞いてみた。
部屋の隅から隅へ転がっていたアズが、回転をやめる。
「む」
「……伝記には、魔女を切り殺した剣は聖剣になったと書いてあった」
「が、われの家にそんなものがあると思えん」
「それに」
横になったまま、指をつい、と動かす。
僕の手の包丁が浮いて、とん、とん、とゆっくりまな板を叩く。
「われは料理で手を使わん」
「……それ、絶対僕が包丁もってる時にやらないでね。あぶないから」
アズは指をおろした。
包丁はことんと鳴って、まな板の上にある。
「ふむ」
アズが頷く。
「では、ヤマダが料理を炒めているときだけにする」




