刺激
街の露店で、トウガラシに似た種子を買った。
店主は「こいつは辛いぞ。少し使ってから調整してくれ」と言っていた。
帰ってから、居間にいるアズに声をかける。
アズは枯葉をつまんで、くるくる回している。
「アズ、これ見たことある?」
小指ほどの大きさの、乾燥した赤い実。
紐で結ばれているそれを、アズに見せた。
「ぬ」
「……それを料理にいれるのか」
アズは露骨に嫌そうな顔をする。
「われはそれに似た実を、かじったことがあるが」
「あまり好かん」
味を思い出したのか、渋い顔をする。
「あ、食べたことあるんだ」
「……われの分には、いれてくれるな」
僕がつまんでいるトウガラシを、手でしっしっ、とする。
香草と塩をまぶした鶏肉を焼いて、自分の方にだけ刻んだトウガラシをふりかける。
「できたよ」
テーブルに並んだ皿をアズが見比べる。
「われの分に、かけてないな?」
「ないない。はい、いただきます」
アズはフォークの先の鶏肉をじっと眺めて、おそるおそる口に運んだ。
「んむ」
アズは小さく頷いた。
こちらの世界のトウガラシは、辛味よりも酸味が強いようだ。ぴり、とくる辛さが美味しい。
アズは僕の鶏肉をちらちらと眺めている。
「……食べてみる?」
フォークに一切れ刺して、アズに向ける。
「む」
少し考えて、アズはそれをぱくりと食べた。
「……」
「からい」
「が、悪くないな」
そう言ってグラスの水を飲む。
「ふ」
「悪くない」
もう一度言って、キッチンに吊り下げてあるトウガラシを見た。
「まだ」
「すこし、からいな」
アズはそう言って、また水を飲んだ。




