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天井
居間のソファで目が覚める。
窓から朝の日差しが届いている。
すぐそこの床に、大の字になっているアズがいた。
「おはよ。なにしてるの」
天井から目線を外さず、アズは言う。
「む」
「われは普段、下や横や正面を見ている」
「そこには扉や床や壁があるな」
右足をぴん、と伸ばして壁を示す。
「だがどうだ、われは」
右手で真っ直ぐに天井を指さした。
「天井をしかと見ていたことはないのだ!」
「われを雨や雪から守り、日差しも防ぐ。なのに、われは天井のことを知らん」
「なので、今日は一日、天井を眺め観察することにしたのだ」
ふんっ、と鼻を鳴らして、ぱたぱたと腕を振る。
「……そう」
夕方。アズは変わらず天井を見上げている。
本も読まずに、ただ見続けているようだ。
「アズ、もうすぐ夕飯だけど」
キッチンから声をかける。
「……む」
曲げ伸ばししていた足の動きが止まる。
「そこにいたら食べられないよ」
「……天井は、もういいぞと言っている気もするな」
アズはぱっ、と起き上がった。
「もういいの?」
いつの間にか椅子に座っていたアズが答える。
「何も変化はなかった。音も声も聞こえん」
ちら、と天井を見る。
「天井に思いを馳せるのは、雨漏りしてからでよさそうだ」
そう言って、僕に向き直る。
「で、夕飯はなんだ」




