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「におい」 「盗み見」
雨に濡れたアズの髪は、若葉と落ち葉の間のにおいがする。
柔らかで、すこし乾いている。
いつも着ている生成りのシャツは、木とポプリのにおいがする。
深く吸い込まないと分からない、枯れた木のうろの奥、乾燥した花とハーブ。
短い綿製のズボンは、土と柔らかな野草のにおいがする。
おしりの部分だけが少しだけ薄く毛羽立っている。
乾いたアズの髪は、夕焼けの入口のようなにおいがする。
かたくて、やわらかいあかいろの髪は、折れない。
ヤマダの日誌
“きょうは はたけを さわったから つちの におい では ないか”
*
『盗み見』
「アズ、僕の日記読んだでしょ」
添削のようなアズの文字。
そこを開いて見せつけた。
「別に変なこと書いてないけど、読んだなら読んだっていいなよ」
アズは手元の本と、目の前の日記を見比べる。
「……本は読むものだろう」
「そしてそれは日記だ」
「ならば、追記しても問題なかろう」
「それに」
「われは読んだ本に向かって「読んだぞ」と報告したことはない」




