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「におい」 「盗み見」


雨に濡れたアズの髪は、若葉と落ち葉の間のにおいがする。

柔らかで、すこし乾いている。


いつも着ている生成りのシャツは、木とポプリのにおいがする。

深く吸い込まないと分からない、枯れた木のうろの奥、乾燥した花とハーブ。


短い綿製のズボンは、土と柔らかな野草のにおいがする。

おしりの部分だけが少しだけ薄く毛羽立っている。


乾いたアズの髪は、夕焼けの入口のようなにおいがする。

かたくて、やわらかいあかいろの髪は、折れない。


ヤマダの日誌


“きょうは はたけを さわったから つちの におい では ないか”



『盗み見』


「アズ、僕の日記読んだでしょ」

添削のようなアズの文字。

そこを開いて見せつけた。

「別に変なこと書いてないけど、読んだなら読んだっていいなよ」


アズは手元の本と、目の前の日記を見比べる。


「……本は読むものだろう」

「そしてそれは日記だ」

「ならば、追記しても問題なかろう」


「それに」

「われは読んだ本に向かって「読んだぞ」と報告したことはない」


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