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遺物
「ヤマダ!とんでもない!おい!!」
術式隔室からアズの大声が響く。
「どうしたの?」
「大変なのだ!少しはおまえも慌てろ!」
アズは見たことのない表情をしている。
「……どうやらわれは罪を犯してしまったらしい」
「どういうこと?」
「前の家主の杖をだな……」
両手を出す。
折れて分割された木製の杖が、アズの両手に握られている。
「踏みつけたのだ……」
何百年前かに居なくなった家主を想像する。
「……僕が家主の魔法使いで、もし今帰ってきたら」
「杖を壊したことよりも部屋がまるっきり違うことに怒ると思うけど」
元・魔法研究室だったであろう、アズのいる部屋を見て言う。
「……」
アズは杖を見て、僕を見て、部屋を見て、また僕を見た。
「それは……たしかにそうだな」
素直に頷く。
「われ、今日は……本を読んでも面白いと思えんかもしれん」
杖を見つめるアズの頭を撫でる。
「もう亡くなってるだろうし、大丈夫だとは思うけど、もしそうなったら一緒に謝るよ」
アズは少し考えて、
「む。……いや」
「よし、そのときは先に!まずヤマダから……しっかりと謝るのだぞ!」
と言ってにっと笑った。




