上を
ソファで目覚めて、伸びをする。
外に立っているアズが窓から見えた。
直立で、首を曲げ、ただ上を見ている。
「おはよう、アズ」
窓を開けて声をかけた。
「ん」
こっちを見ずに返事をする。
「アズはなにしてるの?」
アズは真っ直ぐに腕を上げて、空を指さす。
「葉」
「葉がおちるのをみていた」
ショウロウの木だ。寒い時期に芽吹き、暖かい時期に枯れる、不思議な生態をしている。
その枝の先、一枚だけ残った真っ黒な葉が揺れている。
「樹葉はその木の、一年の移り変わりを示しているのだろう」
「あの一枚が落ちれば、この木にとってひとつが終わり、また始まる」
「……ずっとみておったが」
眩しそうに目を細める。
「なかなかにしぶとい」
にや、と笑う。なぜか楽しそうだ。
「朝ごはん、どうする?」
僕の問いかけに「むぅ」と唸る。
観察と食事で悩む。実にアズらしい。
「そこの窓は開けたままでよいか」
「ここ?別に構わないよ」
「ならば、そこに座っていただこう」
目線は葉っぱから離さないまま、ゆっくりと後ずさりするように、窓枠に座った。
カリカリに焼き上げたベーコンと葉野菜を、パンに挟みこんだ。
紙で巻いて持てるようにする。
「はい、どうぞ」
「んむ」
受け取って、すぐにかぶりついた。
目線は変わらず上を向いている。
「これは、たべやすいな」
窓枠から出たアズの足が、ぶらぶらと揺れる。
アズのかかとが壁に当たる。
とん、とんと小さく鳴っている。
「逃さないように、ちゃんと見ててね」
「……まかされた」
また一口、かぶりついた。
「またなにかを見ているときは」
飲み込んで、初めて僕を見た。
「このかたちで、たのむ」
頷いて、自分の朝食の準備をする。
昼飯はどのかたちで食べてもらおうかな、と思った。




