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寝床
「ヤマダ」
食器棚の上で、横に伸びてきっているアズが呼ぶ。
「この英雄譚に“旅立ちの前に、男女が寝床を共にする”という記述がある」
「なぜ、寝る?」
「狭いだろうに」
確かにアズの寝床は狭い。
寝なくていいアズは狭い寝床に色んなものをおいている。
「そこが狭いのは、ものが多いからだと思う」
「む」
パッと見ただけで、本、何かの剥製、本、本、葉っぱ、本、折れた杖に、本。
「今は英雄譚の話をしておる」
「それに、われは眠らん。ここは寝床ではなくわれの、ものお」
「……」
「われの巣だ」ふん、と鼻息を1つ。
「それは大変、お過ごしやすそうで」
僕は手をひらひらさせる。
アズは僕の寝床、居間のソファを一瞥した。
少し同情するような顔。
「……交換はしてやらんぞ」




