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蜂
アズが寝室から出てこない。
朝食も昼食もとっていない。
「大丈夫?」とドア越しに声をかけても、
「うむ」としか返ってこない。
心配になって、寝室のドアを少しだけ開けて覗く。
「む」
床に座ったアズと目が合った。
「……なにしてるの?」
羽音がする。ぶぶぶぶ、と重い音。
アズの周りを1匹の蜂が飛び回っていた。
アズは慌てるでもなく、ただ飛び回る蜂を眺めている。
羽がアズの顔に当たる。足の指に止まる。
「アズ、それ蜂だよ」
僕が小声で言った。
「見たらわかる。蜂だな」
「……僕はこわいよ、それ」
アズは「……む?」と呟く。
「だからドアを閉めておった」
「……それは感謝するよ、ありがとね」
「その蜂は、アズの友達……?」
ぶぶぶ。アズの頬をのぼる。
ちょっとくすぐったそうな顔をした。
「……検討中なのではないか」
「窓あけてたら、そのうち出ていくと思うよ。逃がしてあげな」
及び腰の提案にアズは首をちいさく振って答える。
「いや、そうではない」
「みてみろ」
指さした寝室の窓の外側に、作りかけの蜂の巣と数十匹の蜂が見えた。
「うわ」
思わず口に出した僕を見て、アズは言う。
「この蜂は来客なのか、それとも同居なのかをまだおしえてくれんのだ」




