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水分
「ヤマダ、おまえは人間だな?」
そう言ったアズの手には、
『じんたいのふしぎ 新訂版』がある。
「……多分そのはずだけど」
アズが本と僕を交互に見る。
「汗」
アズが自分の頬に手のひらを当てる。
「涙」
僕の目を指さす。
「人の顔に指さすのは良くないよ」
「む」
指をとじる。
次にアズが言った言葉は、僕の予想を超えていた。
「……尿」
言い慣れていないからか、
「にょー」と聞こえた。
「なぜこんなおもしろそうなことを言わんのだ?」
「われは魔術師だ。“赤髪の魔女”だ」
「汗もかかんし、ほとんど涙も出ん」
「もちろん排出行為もせん」
アズが本を置いて僕を真っ直ぐに見る。
「興味があ」
「だめ。やだ」
すぐに言う。
「むぅ」
しぶしぶ、と言った顔で読書を再開した。
アズは、僕が「いやだ」と言えば無理強いしない。
ただ、それ以降。
トイレに行く僕を、時々目で追うようになった。




