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宝剣の塚守  作者: ディーディー
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06 宝剣の鍵

「何これ?どういうこと?」


僕の理解の範疇を越えている。まったくさっぱりわからない。


「ジルさん、説明しますので、私に力を貸してくれませんか? お願いします。」


「ええと、よくわからないから、話を聞いてから検討させていただきますね。」


ヴィンスさんが真剣すぎる視線を僕に向けてくるので、たじろぎながら答える。この目に弱いんだよな。





「これは、宝剣の鍵です。そして、使えるのはそれを持っている人が誰かを助けたいと心から思った時だけなのだそうです。」




「…!?」




「本当ですってば!」


僕が何も言えずに固まっていると、ヴィンスさんはそう言ってほほ笑んだ。


「なんでそんなものが、おばあちゃんちにあるんだろう?」


「だから!その紋章を見ればわかるでしょ? 王様の縁者ってことですよ。王様の直系じゃないかもしれないけど、古代の王朝が滅んだ時に生き延びた人もいたんだと思いますよ。」


「…そうなの? 全然、実感ないけど。」


「そうなんです。」


ヴィンスさんには申し訳ないけど、頭がフリーズしてしまって何も考えられない。


「ちょっと、頭を冷やしてきます。」


なんとか立ち上がると、ふらふらと外に出る。


思い切り息を吐ききると、夕暮れ時のひんやりした空気が肺に流れ込んできた。






「坊主、じゃなかった、嬢ちゃん、この短い間によく鍵を見つけたな!褒めてやるよ。」


厨房から出てきたイースは、大きな手でヴィヴィアンの頭をぐりぐりなで回した。


「ちょっとー!お嬢様に気安く触らないでくださいな!」


小人のメアリが姿を隠しながらも抗議する。


「あなたは…」


言いかけたヴィヴィアンの口に人差し指が当てられた。


「おっと、そこまでな!つづきは夕飯食ってからのお楽しみにしようぜ。」


周りに人がいることを憚ってか、会話が中断されたので、ヴィヴィアンは立ち上がって夕飯の支度を手伝うために厨房に入る。


「嬢ちゃんは、いい子だな。」


料理をしながら、イースが話しかけてくる。


「いい子ではありませんよ、私は。結局自分のことばかり考えてる卑しい人間です。」


自嘲しながらも手早く準備を始めるヴィヴィアンは、それでもホッとしていた。


自分にできることは全部やった。


あとは彼次第だ。


「あいつはな~、ホントは寂しがり屋なのに、欲のない振りをするのがうまいんだよ。」


「イースさんは、よく見てますね!」


「まあ、息子みたいなもんだな。ここに来たときはけっこう大きくはなってたけどよ、子育てなんて、貴重な体験させてもらったよ。」


その声には愛情が溢れていたので、ヴィヴィアンも思わずにっこりしてしまった。


まったく!なんて人間くさい精霊だろう!






食事が終わると、宿泊客たちは早々とそれぞれの部屋に引き上げていった。


外で野宿している連中も、今日はなぜか静かだ。


イース、ジル、ヴィヴィアンの三人は、夜の沈黙の中、廟の中に集った。


「じゃあ、鍵と人と精霊が揃ったところで聞くぞ? ジル、お前はヴィヴィアンの願いを叶えたいか?」


「え!? ちょっと待って! 精霊って何!?」


「だからぁ、鍵だろ? 人だろ? 精霊だろ?」


イースは、ジル、ヴィンス(ヴィヴィアン)、自分の順に指をさした。


ヴィヴィアンも「うんうん」と無言でうなずいている。


今日は本当に、わからないことだらけだ。


「…イースって、精霊なの?」


「そうだぞ!偉大なる宝剣の精霊だ!どうだ、まいったか!」


「聞いてないし!まいってないし!」


拳を握って、倒れてしまわないように踏ん張って立つ。


「自分の育ての親が精霊だなんて思わないだろ、普通!」


「そうか? じゃあ、なんで俺はお前と出会った頃のままなのかな~?」


そう言われてみればそうだった。


普段はまったく気にしていなかったけど、イースは、10年ほど前に初めて出会った時と変わらず30代半ばの年齢に見える。


「僕のこと、操ってたのか?」


「いいや? 意図的にはしていないな。俺の存在が不自然に思われないような力が自動的に働いているんだ。」


「なら、いいよ。」


俯く僕の頭をイースが撫でる。


「僕は、ヴィンスさん、じゃなくてヴィヴィアンさん?の願いも叶えてあげたいし、僕の願いも叶えたいよ。そんなんでもいいの?」


「いいぞ~!人間の望みなんて、昔からたった一つだからな。」


「僕は伝説にあるように、世界を手にするなんてことは必要ないけど、みんなが自由に豊かに自分らしく生きられればそれでいい。」


「…私もです。」


ヴィヴィアンが頷いた。








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