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宝剣の塚守  作者: ディーディー
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05 雷(いかづち)の紋章

「ジル、いますか!?」




一晩帰ってこなかったヴィンスさんが帰ってくるなり厨房に飛び込んできた。


夕飯の準備にとりかかろうとしていた僕は、びっくりしてヴィンスさんの腕をつかんでしまった。


「よかった!昨日帰ってこなかったから、心配してたんですよ!まったく、どこに行ってたんです!?」


僕が大声を出したのでヴィンスさんも目を丸くしていた。


「ジル、それじゃまるでお母さんみたいよ。」


と、苦笑する笑顔は、年相応の女の子の顔だったので安心する。





ヴィンスさんは僕の手を引っ張ると外に出るように促した。


表に出ると、玄関先に立派な馬車が停まっていて、野次馬に取り囲まれていた。


僕の姿を認めると、男性が馬車の中から降りてくる。確か、昔会った、母の兄だったような気がするが記憶が定かではない。


「…叔父さん、ですか?」


「ジル、元気だったか?」


背の高い壮年の男性がガシッとハグしてくる。


黒髪に緑の目は、母にも自分にも似ている。あまりにも久ぶりにあったので、何を話したらいいのかもわからず戸惑っていると、叔父のほうから切り出した。


「昨日、こちらのお嬢さんがうちを訪ねていらしてな。お前の近況をいろいろ教えてもらったよ。まったく、もう少しまめに手紙をくれてもいいんじゃないか?」


いや、そうは言われましても、あなたも同じようなものでしょうに。


「すみません」と苦笑していると、頭を軽く小突かれた。


「あの子、かわいいと思ったら、やっぱ娘っ子だったか!」とヴィンスさんを取り巻くように男どもが集まり始めたのを、「あー、ほらほら部外者は寄るんじゃない」とイースが蹴散らしている。


叔父は懐から小さな包みを取り出すと、僕に押し付けた。


「これは?」


「昨日、こちらのお嬢さんの話を聞いた母ちゃんが、…まあ、お前のばあちゃんがだな、お前に渡せって言うから持ってきた。」


「え?わざわざ済みません。」


「いいってことよ、おかげで俺は今日はリリアスで温泉三昧だ。じゃあな!」


まるで嵐のようにやってきた叔父さんは、嵐のように去っていった。


「昨日は、ジルさんのおばあさまの家に泊めていただきました。勝手なことをしてすみませんでした!」


ヴィンスさんが頭を下げたままの姿勢で固まってしまったので、僕もどうしたらいいかわからず固まっていると、イースが僕たち二人の肩を叩いて家の中に入らせた。





「私は、ジルさんとイースさんのことを調べてたんです。ごめんなさい。」


食卓につくと、イースが珍しく飲み物とつまみを用意してくれた。


「夕飯の準備はしてやるから、そいつの話を聞いてやんな。」とイースが言ってくれたので、言葉に甘えてそうすることにする。


「で、何かわかったの?」


僕について調べても何も面白いことはないだろうに、と思いつつも聞いてみると意外な答えが返ってきた。


「はい、実は、あなたのおばあさまの家の暖炉にここの廟にあるのとよく似た紋章があって、そこにも…」


ヴィンスさんが指さす先にある、おばあさまからの贈り物を開いてみると、何か半球状のものが出てきた。


平らな部分に、不思議な紋章が描かれている。嵐の夜に見られる雷のような形だ。


添えられた手紙には「お前が必要だと思ったら使いなさい」と書かれていた。







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