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宝剣の塚守  作者: ディーディー
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07 解放

その後のことはよく覚えていない。


でも、毎日少しずつ書いていた日記とも言えない備忘録が残っている。


おばあちゃんから預かったものがあったような気がするけれど、何だったのか思い出せないんだ。


テントを張って廟の前に泊まり込んでいた連中は、波が引くように去っていった。


廟の中には大きな岩があって何かが刺さっていた形跡があるものの、それが何なのかは、誰も覚えていなかった。


でも僕の備忘録には、伝説の宝剣を抜く腕試しをしにたくさんの人がやってきた、と書いてあるから、きっとそうなのだろうな。


長いことオールドホーントに滞在していたヴィヴィアンさんは、家からお姉さんが迎えに来て、一緒に帰っていった。どうもお父さんがお姉さんと恋人の結婚を許してくれたらしく、ヴィヴィアンさんも嬉しそうだった。


それからしばらくお客さんがまったく来ない日が続き、イースが一人で旅に出たいというのでたくさん食べ物を持たせて見送った。


今までずっと塚守をしていたが、宝剣がなくなったのでお役御免になったと言っていたな。


僕はおばあちゃんの家にしばらく居候させてもらっていたが、叔父さんから「若いもんはチャッチャと働け!」とどつかれ、隣の領国の経営再建チームに組み込まれて派遣されることになった。


派遣先でヴィヴィアンさんに再会するとは思わなかったけど。


だって!領主さまの三番目のお嬢さんなんだよ!早く言ってよ!きっと失礼なことたくさんしちゃってるよ、とほほ。





それでも久しぶりにヴィヴィアンさんとゆっくり話す機会があったので、お茶を飲みながら聞いてみた。


「ヴィヴィアンさんは、その、宝剣のこと、覚えてます?」


「はい、覚えてますよ~!だって、私はあの剣が欲しくてあの場所に行ったんですから。」


「剣はなんで消えちゃったんですかね?」


「うーん、私にもよくわからないんですけど、おばあさまから預かったのが鍵でしたから、剣は扉だったのかもしれませんね。物としての剣はなくなったけど、イースさんは存在しているし。」


「ああ、僕よりいろいろ覚えてて羨ましいな。」


その時、頭の上から聞き覚えのある声が降ってきた。


「なんだ、俺の噂話か?」


「イース!」

「イースさん!」


「よう、元気だったか?息子よ!」


イースがにかっと白い歯を見せ、笑いながら立っている。


「父さん、どこ行ってたんだよ!まったくなんの便りも寄こさずに~!」


「わるいわるい。久しぶりに自由を満喫してました。遺跡巡りしてたんで、ほれ、お土産!」


「うわ!いらないし!」


担いでいた頭陀袋からは、なんだか趣味の悪いチープな土産物がザクザク出てきた。


「お前らが鍵と剣を合わせてくれたんで、みんな解放されて喜んでたぞ!」


「みんなって誰?」


「んー、ご先祖様かな?」


「イースはなんで消えなかったの?」


「え?だって俺、宝剣の精霊ではあるけど、それって大きな木の葉っぱの1枚みたいなもんだ。それに宝剣ならここにあるぞ?」


イースがにやっと笑って自分を指さすと、確かにその姿の中に半透明の宝剣が見え、ジルとヴィヴィアンは顔を見合わせて微笑んだ。


ヴィヴィアンの肩には、小さな小太りの小人が載っていて、イースと挨拶をしている。






何かが変わったようで、変わっていないのかもしれない。


変わっていないようで、何かが変わっているのかもしれない。


人も精霊も、こんなふうに不思議に関わっている世界の物語。











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