聖女と呼ばれた僕
夢を、、、見ていた。
ジメジメと湿気がある薄暗い場所……空も、地面も、境目がわからない。
そこに――鎖で繋がれていた小さな少年がいた。
銀髪?不釣り合いなほど赤い目で年は六歳くらい?
………なのに、その目だけが、異様に鋭い。
少年は、ただ、こちらを睨んでいる。
怒ってる?悲しんでいるようにも見えた。そう思った瞬間、胸がちくりと痛んだ。
少年の片目には、黒い眼帯が巻かれている。
見えないはずのその奥からも、確かに“感情”が向けられていた。
小さな少年が微かに口を開いたので、僕はなんて言っているのか聞き取ろうとした。
【お前をいつか殺してやる】
そう、はっきりそう言われた気がした。
次の瞬間、白い世界が、音を立てて崩れた。
うん、、、なんだか、眩しい。
目を開けると、知らない高い天井があった。
白く、滑らかで、やけに豪華な模様……。
「……え?」
声を出した途端、現実だと理解する。夢の感覚が、急速に薄れていくのに、胸の奥のざわつきだけが、消えない。
体を起こすと、冷たい床の感触に、自分の周囲には、青白く光る魔法陣のようなものが浮かんでいた。
そして――人??何人もの大人が、円を描くように立っていた。日本、、、ではない。けれど服装が、、教科書や映画で見た江戸時代?な感じの雰囲気の和装のようなものを着ている人達が沢山集まって僕を見て喜んでいた。
「せ、成功したぞ!聖女様が帰ってきた!」
「サクラ様だ!やはり生きておられたか!」
……聖女?サクラ?
「……ふふ。成功されたようですね」
静かな声が響き渡り、僕の目の前に現れたのは、青い髪に眼鏡をかけた男性だった。
落ち着いた佇まいで感情の起伏が、ほとんど読めないが僕は恐る恐るその人に尋ねた。
「……あ、あのここ、どこですか?」
男性は一拍置いてから、答えた。
「ここは、月の国、月華国。そして私は、この国の宰相でキリシタン・ゼファーです。‥‥サクラ様、、、まさか私をお忘れましたか?」
そう名乗り、深く、自分に頭を下げる宰相と名乗る外国人……言葉の意味はわかるのに、現実味がない。
「えっと……すみません、夢の途中みたいで……」
「はは、夢ではありません」
即答だった。
「【あの時】、消えていった貴女を心配しました。ようやく、ようやく、呼び戻す方法を見つけて、、、サクラ様はこの国が必要とした存在です」
僕はこの異様な雰囲気に飲み込まれないように、慌てて首を振った。
「ええ。あれから十何年経ってますからね、無理もありません。可憐な姿は変わらずでーー」
「違います!」
「「………」」
「僕、男です」
キリシタンという、謎の男は白目をむいて倒れていく。
——その一言で、全てが狂い始めた。




