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オオカミっ子!力狼丸くん  作者: ケンタシノリ


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第1部(3)生みの親と育ての親の初めての出会い

 山兵衛は、腹掛けをつけた力狼丸を抱きながら外へ出ました。家の外へ出ると、すっかりと夕暮れ空となっていました。

 「もう夕方になったら、少し寒くなってきたなあ」

 「キャッキャッ、キャッキャッ!」

 秋から冬へ入る時期ということもあり、山兵衛は外へ出ただけで少し寒さに震えています。しかし、山兵衛に抱かれた力狼丸は笑顔を見せながら喜んでいます。力狼丸にとっては、山兵衛の家の周りにある風景を見るのが全て初めての経験なのです。

 すると、森の奥から山兵衛の家へ向かって2匹の動物の影が少しずつ大きくなってきました。その動物の影を見た力狼丸は、自分を抱いている山兵衛の目の前で足をバタバタさせました。

 「うわっ、うわわっ!」

 山兵衛は、力狼丸が足をバタバタさせたのに驚いてしまい、両手で抱いていた力狼丸を地面へ落としてしまいました。しかし、地面へ落ちた力狼丸は、すぐに4本足になってそのまま動物の影がある森の中へ入ろうとします。そのとき、力狼丸の耳に何か声が聞こえてきました。

 「大きな巣穴にいたはずの赤ちゃんがいないけど、まさか森の中を歩いて行ったとかはないよなあ。赤ちゃんは今まで巣穴の外へ出たことがないし」

 「でも、今までも赤ちゃんはしきりに巣穴の方向ばかり見ていたからね」

 森の中からは、どこかで見たことがあるオオカミが2匹現れました。力狼丸が向かっているのは、そのオオカミが現れたところです。

 「お~い! 力狼丸くん、どうして森の中へ行くんだ!」

 山兵衛は、森の中へ4本足で歩いて行く力狼丸のことがどうしても心配になって、すぐに後を追いかけました。すると、森の中へ入った山兵衛は驚きを隠せない光景を目にすることになりました。

 「巣穴の中にいなかったから森の中を探していたら、ここまで自分で歩けるようになったのか! 元気で頼もしい男の子として成長するのが楽しみだなあ」

 「自分の力で歩けるようになって、あたしもうれしいわ」

 山兵衛が驚いたのは、力狼丸がオオカミ2匹と普通に接しているのを見たからです。でも、力狼丸にとってはオオカミのハヤゾウとミキエの間に生まれた赤ちゃんなので、普通に接して当たり前と考えているのです。

 力狼丸は、ミキエのお腹についているおっぱいを目にすると、そのまま4本足でミキエのお腹の下へ潜りこみました。ミキエは、力狼丸が自分のお腹の下へ潜ったのを見ると、思わず微笑む表情を見せました。

 「ふふふ、あれだけ森の中を歩けるようになっても、まだ赤ちゃんだからおっぱいを飲むのは当たり前なんだね」

 「チュパチュパチュパ、チュパチュパチュパ」

 力狼丸は地面に座り込むと、ミキエのおっぱいを飲み始めました。おさえのおっぱいを飲むときと同様に、力狼丸はミキエのおっぱいを元気いっぱいに飲み続けています。

 「力狼丸くんって、人間のおっぱいもオオカミのおっぱいも飲んでいるとは…。おれは夢でも見ているのか?」

 山兵衛は、力狼丸がオオカミのおっぱいをおいしそうに飲んでいるのを見ながら戸惑っています。力狼丸は、手足こそオオカミそのものですが、それ以外は人間と変わりありません。しかし、外見がほとんど人間である力狼丸がオオカミのおっぱいを飲んでいるのは確かであり、これを見た山兵衛は自分が夢を見ているのかと思い始めました。

 力狼丸がミキエのおっぱいを飲み終えると、ハヤゾウとミキエは山兵衛のいるところへ向かいました。オオカミが近づくにつれて、山兵衛は自分がオオカミに襲われるかもしれないと思いました。

 しかし、山兵衛が狩猟に使っている火縄銃は、家に置いたままということを思い出しました。そうかと言って、ここから家のほうへ逃げようとしても、オオカミに背中を見せたら襲われるリスクが高くなります。

 そのとき、女性らしき声が山兵衛の耳に入ってきました。しかし、その声はおさえとはまた違った声でした。

 「あなたの名前がだれなのかは分かりませんが、この子をお世話してくれて本当にありがとうね」

 山兵衛の目の前にやってきたのは、オオカミのミキエです。そして、力狼丸が少し遅れて4本足で歩いてきました。ミキエが山兵衛に言ったのは、力狼丸をお世話してくれたことへの感謝の言葉です。

 「おれがオオカミからお礼を言われるということは、まさか…」

 「実は、この子はわたしのお腹から生まれた子供なのよ」

 「ええ~っ、力狼丸くんは本当にオオカミの赤ちゃんだったの?」

 ミキエは、自分が力狼丸を生んだことを山兵衛に言いました。山兵衛は、オオカミであるミキエが力狼丸を生んだのが本当だったことに驚きを隠せませんでした。

 そこへ、もう1匹のオオカミであるハヤゾウも山兵衛の前へやってきました。

 「おれは、この赤ちゃんが急に巣穴からいなくなったことに気づいたから、この森の中をくまなく探したんだ。そしたら、お前さんが赤ちゃんを見つけてお世話をしてくれたということを知ったんだ」

 山兵衛は、普通なら人間を襲うことも多いオオカミが感謝の言葉を述べたことに戸惑っている様子です。もちろん、力狼丸をお世話したことへの感謝は山兵衛にとってもうれしいことです。

 でも、山兵衛の前にいるのは、本来どう猛なはずのオオカミです。それなのに、オオカミは山兵衛の目の前では決して襲おうとはしません。むしろ、オオカミにとっては、山兵衛を自分たちの恩人と見ているような感じです。

 そこへ、家から出てきたおさえが急いで走ってきました。おさえは、山兵衛と力狼丸が外へ出たまま帰ってこないので、心配になって外へ出てきたのです。

 「山兵衛さん、目の前にオオカミがいるのよ! 早く逃げて!」

 「おさえ、このオオカミたちは大丈夫だぞ!」

 「山兵衛さん、本当に大丈夫なの?」

 おさえは、山兵衛の目の前にオオカミがいることに気づいたので、早く逃げるように言いました。しかし、オオカミの気持ちを感じ取った山兵衛は、おさえに大丈夫だと答えました。おさえは、山兵衛の言葉に戸惑いながらも、すぐに山兵衛のいるところまで行きました。

 すると、山兵衛とおさえの目の前に、力狼丸が4本足で歩いてきました。そして、すぐにおさえの右足にしがみつくと、そのまま元気な泣き声を上げました。

 「力狼丸くん、もしかしてこのことかな?」

 おさえは、すぐにしゃがみ込んでから両手で力狼丸を抱きかかえました。そして、着物の中からおっぱいを出すと、力狼丸はそのおっぱいを元気に飲み始めました。

 「チュパチュパチュパ、チュパチュパチュパ」

 「あれだけ人間に愛されているのであれば、おれは人間にある思いを伝えたいと思っているんだけど、ミキエはどう思う?」

 「ハヤゾウさんの思いは、わたしも同じ考えだと思うの。そのほうが、赤ちゃんのためにもなるわ」

 オオカミたちは、力狼丸がおさえのおっぱいをおいしそうに飲んでいるのを見ながら、ある思いを山兵衛たちに伝えたいと考えています。それは、人間からも愛情を持ってお世話されている力狼丸のためにもなると思ったからです。

 力狼丸がおさえのおっぱいを飲み終えると、おさえは力狼丸を抱きながら立ち上がりました。すると、オオカミたちは、山兵衛とおさえに自分たちの思いを伝えようと口を開きました。

 「おれとしては、この赤ちゃんをおまえさんたちの手で育ててほしいんだ」

 「えっ、おれたちがこの力狼丸くんを育てるということですか?」

 「この赤ちゃんはオオカミのお腹から生まれたけど、手足がオオカミになっている以外は人間の男の子と全く同じなんだ。そう考えると、おれたちオオカミが育てるよりは、人間の手で育てた方が赤ちゃんのためにもなるんだ」

 ハヤゾウは、力狼丸を山兵衛たちの手で育ててほしいと言いました。力狼丸は、オオカミのミキエのお腹から生まれた赤ちゃんですが、オオカミと同じなのは手足だけであり、それ以外は人間の赤ちゃんと変わりありません。そう考えたとき、ハヤゾウは人間の手で育てたほうが力狼丸のためにもなると言いました。

 山兵衛は、最初にオオカミから力狼丸を育ててほしいという言葉を聞いたときにびっくりした表情を見せました。それは、力狼丸が人間の子供ではなく、オオカミの子供であるという事実を受け入れないといけないからです。しかし、その後のハヤゾウの言葉を聞いて、山兵衛は力狼丸を人間の子供としても、オオカミの子供としても元気いっぱいに成長してほしいと思うようになりました。

 山兵衛もおさえも、力狼丸をすくすくと元気に育ってほしいと願っています。特に、おさえは赤ちゃんをすぐに亡くしたこともあり、力狼丸を新しい子供として大切に育てたいという強い思いがあります。

 「ところで、この赤ちゃんの名前が力狼丸ということだが、これほど元気な子供にぴったりな名前は他にはないぞ! 力狼丸くんが成長するのをおれも楽しみにしているぞ」

 「オオカミさん、力狼丸くんを元気いっぱいの子供に育てるようにがんばるからな!」

 ハヤゾウは、力狼丸が元気な子供にぱぴったりな名前であると大絶賛するとともに、力狼丸が名前通りに元気にすくすく育つのを楽しみにしています。山兵衛は、ハヤゾウに力狼丸を元気な子供に育てるようにがんばると言いました。

 「そうだ、お前さんにはまだおれの名前を言っていなかったな。おれの名前はハヤゾウと言うんだ。よろしくな!」

 「わたしはミキエという名前なの。力狼丸くん、これからもわたしたちのところへきてね。だって、力狼丸くんはわたしたちの子供だもの」

 「キャッキャッ、キャッキャッ」

 ハヤゾウとミキエは、それぞれ自分の名前を力狼丸に伝えました。力狼丸は、まだ生まれてから2ヶ月の赤ちゃんなので、まだ自分でしゃべることができません。しかし、自分の生みの親であるオオカミの言った言葉に、力狼丸はキャッキャッと明るい笑顔を見せながら感じ取りました。

 「おさえがいつも抱いていると、力狼丸くんも明るい笑顔を見せているなあ」

 「力狼丸くんの顔を見ると、とてもかわいいでしょ。力狼丸くんを抱いたら、かわいくて元気な赤ちゃんということが分かるよ」

 山兵衛は、おさえが抱いている力狼丸の明るい笑顔を見ています。力狼丸を抱いているおさえも、力狼丸のかわいい顔を見ながら目を細めています。

 おさえは、自分が抱いている力狼丸を山兵衛に手渡しました。山兵衛に抱かれた力狼丸は、青い腹掛け1枚だけの格好で元気な笑顔を見せています。山兵衛も、力狼丸の様子を見ながら一安心しています。

 すると、力狼丸はキャッキャッと笑顔を見せながら、足をバタバタさせています。力狼丸のあまりの元気さに、山兵衛が力狼丸を必死に抱きかかえているそのときのことです。

 「ジョパジョパ、ジョパジョパ、ジョジョジョジョジョ~」

 「うわわっ、どうしておれの顔におしっこをするんだよ! わわわっ!」

 「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」

 力狼丸は、再び山兵衛の顔面に大量のおしっこを見事に命中させました。人間であるおさえのおっぱいとオオカミであるミキエのおっぱいをそれぞれいっぱい飲みすぎたので、力狼丸は元気いっぱいのおしっこを噴水のように出てしまいました。でも、力狼丸にとって、おしっこがいっぱい出るのは元気な赤ちゃんであるシンボルです。

 「力狼丸くんはおっぱいをいっぱい飲んだから、おしっこがいっぱい出ちゃったね」

 「ははは、力狼丸くんはおしっこもいっぱい出るし、これなら元気で強い男の子に成長するぞ!」

 ミキエは、おしっこがいっぱい出ちゃった力狼丸を見ながらやさしい笑顔で見守っていると、ハヤゾウも力狼丸が元気で強い男の子に成長することに期待しています。

 「おしっこがいっぱい出るのは、元気な子供にすくすくと成長する前触れなんだね」

 「力狼丸くんが元気いっぱいなのは頼もしいけど、おれの顔におしっこを命中させるのは勘弁してよ~」

 「キャッキャッ、キャッキャッ!」

 おさえは、オオカミ2匹が言っていたことを聞いて、力狼丸を見ながら、おしっこをするのは元気な子供に成長する前触れと目を細めています。山兵衛も、力狼丸が元気いっぱいであるのが頼もしいとうれしそうです。でも、さすがに力狼丸のおしっこが大量に顔面に命中されたこともあってか、山兵衛は力狼丸におしっこ噴水の命中だけは勘弁してほしいとつぶやきました。

 そんなこととは露知らず、力狼丸は山兵衛やおさえに満面の笑顔を見せています。力狼丸が見せた満面の笑顔は、オオカミのハヤゾウやミキエにも伝わっています。

 力狼丸は、生みの親であるオオカミと育ての親である人間のやさしい愛情を受けて、すくすくと成長していきました。そんな力狼丸たちの前に、やがて地獄からの闇の勢力が現れるとは、このときにはまだ知るよしもありませんでした。

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