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オオカミっ子!力狼丸くん  作者: ケンタシノリ


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2/12

第1部(2)新しい赤ちゃんの名前は力狼丸

 赤ちゃんが生まれてから2ヶ月が過ぎた頃のことです。

 赤ちゃんは、ミキエのおっぱいをいっぱい飲んで少しずつ成長していきました。この頃から、赤ちゃんは手足を使って4本足で歩くようになりました。

 4本足で歩くことができるといっても、まだ生まれてから2ヶ月の赤ちゃんにとって、動ける範囲は巣穴の中を動き回る程度のものです。それでも、早く外の世界が見たいという好奇心が赤ちゃんの心の中で芽生えてくるのもまた事実です。

 ハヤゾウとミキエは、獲物を見つけるために朝から森の中へ出かけています。その間、赤ちゃんはずっと巣穴の中でお留守番です。でも、赤ちゃんは留守番をするよりは、どうしても外へ行ってみたいという気持ちがあります。

 「ぼくだって、お外に出たいよ」

 赤ちゃんは、とうとうガマンできずに巣穴の外へ4本足で歩きながら出ることにしました。しかし、巣穴があるところは丘の斜面です。巣穴から出ようとした赤ちゃんは、斜面に足を取られてしまい、そのまま斜面を転げ落ちてしまいました。

 「うっ、ううっ…」

 斜面から転げ落ちた赤ちゃんは、目から涙を浮かべて涙を流しました。しかし、大声で泣き出すということはありません。赤ちゃんは、少しずつガマン強くなっているのです。

 こうして、初めて外の世界に出た赤ちゃんは、4本足で森の中をゆっくり歩き出しました。赤ちゃんが4本足で歩くにはまだまだ不安定であり、前へ転んでしまうことが何度もあります。それでも、赤ちゃんにとって、森の中を歩くのは初めての大冒険です。周りの風景も初めて見るものばかりなので、赤ちゃんもワクワクしています。


 「う~ん…。今日はあまり獲物には恵まれないなあ」

 その頃、1人の男性が狩猟をするために森の中へ入っています。男性は、袖なしの丈の短い茶色の着物を着ており、着物の下には青色のふんどしをつけています。そして、男性が左手に持っているのは、狩猟に使うための火縄銃です。

 男性は、森の中でイノシシ狩りをしていますが、最近は大きなイノシシがなかなか出現してくれないので少々焦っています。

 そんな中、男性は森の中にある山道から4本足で歩いている動物らしきものを目撃しました。男性は、すぐに火縄銃を構えると、その動物らしきものに狙いを定めました。

 「パンッ! あ~っ、せっかく獲物を狙って撃ったのに外してしまったなあ」

 男性は、狙いを定めた獲物に向かって撃ちましたが、獲物である動物らしきものはそのまま動き続けています。男性は、せっかくの獲物を取り逃がしてしまい残念そうな表情となっています。

 そのとき、4本足で歩く動物らしきものの姿がはっきりと見えるようになりました。その姿を見た男性は、かなり驚いている様子です。

 「人間の赤ちゃんか? どうしてこんな森の中にいるんだ?」

 人間があまり立ち入らない森の中で、赤ちゃんが歩くことは普通に考えてあり得ないことなので、男性が驚くのも無理ありません。しかし、男性がさらに驚いたのは、その赤ちゃんの手足です。

 「この赤ちゃんは人間でしょ? なんで手足だけオオカミの手足になっているの?」

 男性は、赤ちゃんの手足だけがオオカミの手足になっているのを見て、自分は夢でも見ているのかと思わず目をつぶりました。しかし、再び目を開けても、赤ちゃんの手足がオオカミの手足である事実に変わりありません。そうするうちに、赤ちゃんが男性の目の前にやってきました。

 赤ちゃんは森の中を歩くうちに、初めて人間の男性に出会うことになりました。その男性の顔を初めて見た赤ちゃんは、大きな目とかわいい笑顔を見せています。男性は、赤ちゃんのかわいい笑顔を見ると、すぐにその赤ちゃんを抱きました。

 「キャッキャ、キャッキャ」

 「この赤ちゃんは、おれの顔を見るたびに笑顔で喜んでいるぞ! もしかしたら、赤ちゃんはおれを父親だと思っているかもしれないな」

 赤ちゃんは、自分を抱いている男性の顔を見ながら笑顔で喜んでいます。男性は、その赤ちゃんが自分を父親だと思っているかもしれないと感じました。

 「とりあえず、家へ戻ってから面倒を見るとしようかな」

 男性は、家に戻って赤ちゃんの面倒を見ることにしました。赤ちゃんを自分の手で抱きかかえると、男性はそのまま自分が暮らしている家の方向へ戻ることにしました。

 「おっ、ぐっすりと眠っているぞ。森の中を歩き続けたから、疲れちゃったのかな?」

 男性に抱かれて安心した赤ちゃんは、そのままぐっすりと眠りの中へ入りました。これを見た男性は、ずっと4本足で歩き続けたから疲れてしまったかなと赤ちゃんを抱きながら家へ連れて行きました。


 「おさえ、ただいま帰ってきたぞ」

 「山兵衛さん、お帰りなさい。今日はどうだったの?」

 「今日は、獲物が1匹も取れなかったなあ…」

 山兵衛は、赤ちゃんを抱きながら家へ戻ると、妻のおさえが山兵衛の帰りを待っていました。おさえの服装は、山兵衛と同じように袖なしの丈の短い着物を着ています。

 おさえは、森の中へ狩猟へ行ってきた山兵衛に獲物が取れたか聞いてみました。しかし、山兵衛はがっかりした表情で獲物が取れなかったことをおさえに言いました。

 「そんなにがっかりしなくてもいいのよ。森の中に獲物がいつもいるとは限らないからね。それに、山兵衛さんといっしょに家の裏側にある丘の斜面に畑を作っているから、食べ物には困ることはないよ」

 おさえは、畑でいろんな野菜とかイモとかを作っているから、食べ物には困らないと山兵衛にやさしく接しながら言いました。

 「それはそうと、森の中で赤ちゃんが迷い込んだんだけど」

 「もしかして、山兵衛さんが抱いている赤ちゃんのこと?」

 山兵衛は、自分が抱いている赤ちゃんをおさえに手渡しました。おさえは、ぐっすりと眠っている赤ちゃんの笑顔を見ながら微笑んでいる様子です。しかし、おさえがその赤ちゃんの手のひらと足を見て、急に驚いた表情を見せました。

 「この赤ちゃんの手のひらと足って、オオカミの手のひらと足なの?」

 「おれもその赤ちゃんを見たときに、他は人間なのに、手足だけオオカミそっくりだったからびっくりしたよ!」

 おさえがびっくりしたのは、赤ちゃんの手のひらと足だけがオオカミそっくりだったからです。それは、山兵衛がその赤ちゃんを初めて見たときと同じような驚き方です。

 しかし、ここは険しい山々と山林に囲まれているため、人間が立ち入ることがほぼ不可能な場所なのです。そんな中で、どうして赤ちゃんが森の中にいたか、2人は不思議そうに感じています。

 「ここへくるためには、途中の険しい山道を通らないといけないからね」

 「その山道も、何度も落石があるから通ることができないからなあ。この森の中に住んでいるのも、おれたち2人しかいないし」

 森の中に住んでいる人間は、山兵衛とおさえの夫婦2人だけなのです。2人が住んでいる家は、森の中で空がはっきりと見える丘の手前にあります。しかし、その家は掘っ立て小屋みたいなものであり、外観が少しボロボロになっています。

 「まさか、オオカミがこの赤ちゃんを生んだとか?」

 「それはあり得ないと思うけどね。手のひらと足はオオカミそっくりだが、それ以外は人間の赤ちゃんと全く同じだぞ」

 おさえは、オオカミがこの赤ちゃんを生んだのではと言うと、山兵衛はオオカミが人間の赤ちゃんを生むというのはあり得ないと言いました。

 「山兵衛さん、この赤ちゃんをいっしょに育てたいなあ」

 「この赤ちゃんは、おれのことを父親だと思っているみたいだからね。それに、おれにとっても、この赤ちゃんの顔を見たらとてもかわいいし」

 おさえは、自分の手で抱いている赤ちゃんを見ながら、山兵衛にいっしょに赤ちゃんを育てたいと言いました。山兵衛も、赤ちゃんが自分のことを父親だと思っているみたいと笑顔を見せながら言いました。

 「あたしは赤ちゃんが亡くなってから、もう一度赤ちゃんを生みたいと空を見上げながら願っていたの。この赤ちゃんは、あたしの願いをかなえてくれた新しい命なのよ」


 実は、山兵衛とおさえとの間に男の子の赤ちゃんが1人いました。半年前に生まれた赤ちゃんは、2人にとって喜びもひとしおでした。2人は、この赤ちゃんが元気いっぱいに成長して欲しいと願っていました。

 しかし、2人の願いはもろくも崩れ去ってしまいました。2ヶ月ほど前に、その赤ちゃんは突然の高熱にうなされ続けました。そして、山兵衛とおさえの祈りも届くことなく、数日後に赤ちゃんは息を引き取りました。おさえは、冷たくなった赤ちゃんに横たわったままでずっと号泣し続けました。山兵衛も、死んでしまった赤ちゃんを見て、涙をこらえることができませんでした。


 「おさえにとっては、この赤ちゃんが亡くなった力狼丸りきろうまるの生まれ変わりということになるなあ」

 「山兵衛さん、この赤ちゃんに力狼丸という名前をつけてもいいかな?」

 「力狼丸という名前は、亡くなった赤ちゃんの名前だったけど」

 「だって、この赤ちゃんが力狼丸くんの生まれ変わりだと思うし、オオカミの手のひらと足を持っているからぴったりじゃないかな」

 おさえは、赤ちゃんに力狼丸という名前をつけたいと山兵衛に言いました。この力狼丸という名前は、元々亡くなった赤ちゃんにつけていた名前です。

 でも、おさえにとっては自分が抱いている赤ちゃんが力狼丸の生まれ変わりだと思っています。そして、赤ちゃんにはオオカミの手のひらと足を持っていることも、力狼丸という名前にピッタリだと考えたのです。

 「おさえがそう考えているなら、おれも赤ちゃんの名前は力狼丸でいいと思うぞ」

 「それじゃあ、今日から赤ちゃんの名前は力狼丸くんに決定ね!」

 山兵衛は、おさえが力狼丸という名前をつけたいという気持ちを知ったので、自分も赤ちゃんの名前に力狼丸をつけてもいいと言いました。こうして、オオカミの手のひらと足を持った赤ちゃんの名前は力狼丸に決まりました。

 すると、しばらく眠っていた力狼丸が目を覚ましました。力狼丸は、自分が抱かれているおさえの目の前で元気な泣き声を上げました。

 「もしかして、おっぱいがほしいのかな?」

 おさえは、力狼丸が大きな泣き声を上げているのを見て、すぐに着物の中から片方のおっぱいを出しました。力狼丸はすぐにおさえのおっぱいをくわえると、ゴクゴクと元気よくおっぱいを飲み続けています。

 「チュパチュパチュパ、チュパチュパチュパ」

 「おっ、力狼丸くんはおっぱいをいっぱい飲んでいるな。あれだけ飲んでいるから、よほどお腹がすいていたんだな」

 おっぱいを飲み終えた力狼丸は、満足した様子で笑顔を見せました。おさえは、自分が抱えている力狼丸を再び山兵衛に手渡しました。山兵衛は、力狼丸を両手で抱きながら、かわいい笑顔を見ようと自分の顔を近づけました。

 しかし、山兵衛の顔が力狼丸に近づいたそのときのことです。

 「ジョパジョパ、ジョパジョパジョパ~、ジョバジョパジョパパ~」

 「うわっ、おしっこがおれの顔に命中しちゃった」

 力狼丸は、山兵衛の顔面に見事なおしっこ噴水を大量に命中させました。山兵衛も、自分の顔にいきなりおしっこをかけられてびっくりしています。

 「ふふふ、山兵衛さんの顔に力狼丸くんのおしっこがかけられちゃったね」

 「ははは、力狼丸くんは赤ちゃんだし、さっきおっぱいをいっぱい飲んだから、おしっこがいっぱい出ちゃったみたいだな。まあ、おしっこをするのは子供にとって元気な証拠でもあるからなあ」

 おさえは、おしっこをかけられた山兵衛の顔を見ながら微笑んでいます。山兵衛も、おしっこがいっぱい出ちゃった力狼丸を見ながら、おしっこをするのは元気な子供のシンボルであると照れた顔つきで言いました。

 「おさえ、力狼丸くんに何か着せてみようかな」

 「山兵衛さん、もしかして亡くなった赤ちゃんがつけていた、これのことかな?」

 山兵衛は、力狼丸に何か着せてみようとおさえに言いました。おさえは、木の引き出しの中から何かを探していると、亡くなった赤ちゃんがつけていた青色の腹掛けが見つかりました。

 「おおっ、この青い腹掛けか! この腹掛けは力狼丸くんにぴったり合うと思うぞ」

 山兵衛は、おさえが出してきた青い腹掛けを見ました。その腹掛けには中央部に模様が描かれているものです。この腹掛けが力狼丸にぴったりと思った山兵衛は、おさえから青い腹掛けをもらいました。

 「青い腹掛けを力狼丸くんの首の後ろと腰の後ろをひもで結んだら、力狼丸くんの体にこの腹掛けがぴったり合ったぞ!」

 「腹掛けをつけたときの力狼丸くんも、元気でかわいいね」

 山兵衛は、力狼丸の体に青い腹掛けをつけると、力狼丸の体にその腹掛けがぴったりと合いました。おさえは、腹掛けをつけた力狼丸を見て、元気でかわいいと明るい笑顔で言いました。

 「力狼丸くんが、これから病気もせずに元気に育つといいなあ。それに、腹掛けが小さいから、力狼丸くんが成長したら新しい腹掛けを用意しないといけないぞ」

 山兵衛は、おさえが生んだ赤ちゃんをすぐに亡くしたこともあり、力狼丸が病気をしないで元気に育つことを願っています。そして、力狼丸がつけている腹掛けは赤ちゃん用の小さいものなので、力狼丸の成長に合わせて新しい腹掛けを用意する必要があるとおさえに言いました。

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