創?の?力
激しい雨が上がり、異様な熱気だけが立ち込める廃ビルの一角。
かつて地下隠れ家と呼ばれたその場所は、見る影もなく焼き尽くされ、黒焦げたコンクリートの塊と化していた。
その中心で、健人は銃口を真っ直ぐに前方へと向けていた。
視線の先にいるのは、黒いレインコートを纏った女――多島絵里。
彼女は市川の命を奪ったその場所で、退屈そうに自分の爪を眺めていた。
「あはは! やっと来た、健人君。遅いよ、待ちくたびれちゃった」
絵里は健人の姿を見るなり、身体を震わせて不気味に笑い始めた。
その瞳には、人間らしい感情が一切存在しない。ただ純粋な悪意と楽しさだけが濁った膜のように張り付いている。
「多島絵里……!!」
健人の咆哮とともに、戦闘の火蓋が切って落とされた。
健人が引き金を絞ると同時に、物陰から大村志人が飛び出す。
志人は激しい襲撃を生き延び、傷だらけの身体でありながらも、冷徹な目で絵里の隙を狙っていた。
健人は自身の能力を全開にし、絵里の周囲の空間そのものを「無効化」しようと意識を集中させる。
今までどんな強力な能力者も、健人のこの力の前には無力化されてきた。
しかし。
「『拒絶の盾』」
絵里が低く、歌うようにそう唱えた瞬間。
何もない空間から、突如として真っ黒な巨大な盾が出現し、健人の放った弾丸を完全に弾き返した。
「なっ……!?」
健人の目が見開かれる。無効化が発動しない。いや、発動するよりも早く、「新しい物質」が空間に誕生しているのだ。
多島絵里の持つ真の能力。それは炎の操作などではなかった。
『創造の力』――彼女が口にした言葉、唱えた概念を、何もない空間から文字通り「何でも」創り出してしまうという、神の領域に近い絶対的な能力だった。
あの実家を焼き尽くした炎も、彼女がただ「炎」と唱えて創り出した副産物に過ぎなかったのだ。
「無駄だよ、健人君。君の力は『あるものを消す』だけでしょ? 私は『ないものを創る』の。どっちが強いか、バカでもわかるよねぇ?」
絵里はケラケラと不気味な声を上げて嗤った。




