?神、復?
翌朝、激しい雨が止んだばかりの東京。
健人のスマートフォンに、一件の音声ファイルが届いた。
発信元は大村志人。
胸に嫌な予感を抱えながら再生ボタンを押すと、スピーカーから聞こえてきたのは、激しい爆破音、市川の絶叫、そして――聞き覚えのある、あの忌まわしい女の笑い声だった。
『……健人、アジトが、多島絵里に襲撃された……。市川が、死んだ……。奴の狙いは、お前だ……』
志人の声は途中で激しく途切れ、ノイズの後に重い沈黙が訪れた。
「……っ!」
健人の頭の中で、何かが完全に弾け飛んだ。
手元にあったスマートフォンの画面が、彼の凄まじい握力によってみしみしと音を立ててひび割れていく。
普通の生活。美有との約束。誰も傷つけない誓い。
そんな綺麗な言葉は、目の前で大切な仲間を無残に殺されたという現実の前に、一瞬で消し飛んだ。
自分の代わりにイチゴオレを飲むと言ってへらへらと笑っていた市川の顔が、志人が最期に遺した掠れた声が、健人の胸の奥底にある「死神」の血を、かつてないほどの激しい怒りとともに呼び覚ます。
「多島……絵里……っ!!」
健人の瞳から完全に光が消え、深い闇のような冷酷さが戻ってきた。
彼はクローゼットの奥に封印していたはずの黒い上着を掴み、机の上に置いてあった銃を手に取った。
もう、誰にも止められない。
美有との約束を破ることになるかもしれない。それでも、仲間を奪ったあの女を、この世に生かしておくわけにはいかなかった。
健んは一度も後ろを振り返ることなく、部屋の扉を強く閉めた。
復讐の炎を再びその身に宿し、少年は再び、血と煙の待つ地獄の戦場へと足を進めていったのだった。




