ごめん
二人の間に、重苦しく、ひどく気まずい沈黙が流れる。
数日前、健人は彼女に対して「誰だよアンタ」「関係ねぇだろ」と冷酷に言い放ち、完全に突き放したのだ。
美有はその拒絶に絶望して道路に飛び出し、死にかけた。
お互いに、その事実が頭から離れない。
健んは美有の視線から逃げるように、静かに目を伏せた。
「……すまない」
いつも感情を見せない健人の口から、掠れた謝罪の言葉がこぼれ落ちる。
「俺が、あんなことを言ったから……アンタを、こんな目に遭わせた。全部、俺のせいで――」
「ううん……」
美有は弱々しく首を横に振った。
点滴の管が微かに揺れる。
「私、が……ちゃんと、前を見てなかったから……。健人に、あんな風に言われて……ショックで、周りが見えなくなっちゃって……」
美有の言葉は、健人の胸をさらに締め付けた。
やはり、彼女を追い詰めたのは自分だったのだという現実が、重くのしかかる。
謝りたいことは山ほどあるのに、自分が殺し屋という闇の世界の人間である以上、これ以上どう言葉をかければいいのかが分からない。
美有もまた、健人が自分の知っている優しい幼馴染ではなく、本物の「人殺し」になっていたという衝撃を抱えたまま、どう接すればいいのか戸惑っていた。
再会をずっと望んでいたはずの二人の間に、今は決して超えられない、冷たくて深い境界線が横たわっている。
「なんか、いざっていうとき、何話せばいいか分からなくなるよね」
「はは、そうだ……な」
「………」
心電図の電子音だけが、気まずい空気の流れる深夜の病室に、寂しく響き続けていたのだった。




