誰かを殺すためだけにあるのか
(俺の人生は、ただ誰かを殺すためだけにあるのか……)
美有は言っていた。
私のことは忘れてもいいから、普通の生活に戻って、と。
普通の生活にはもう戻れない。
それは志人や市川と共に生きる今、百も承知だった。
けれど、ただ憎しみに身を任せてターゲットを消すだけの存在でいることが、本当に自分の生きる意味のすべてなのだろうか。
兄を失いながらも、自分の意思でこの闇の中で生きると決めた志人の姿。
そして、自分の無事をずっと祈り続けてくれていた美有の存在。
健人は静かに目を閉じた。
復讐の炎が消えたわけではない。
けれど、今の彼の胸の中には、ただ壊すだけではない、何か別の強い思いが確実に芽生え始めていた。
誰かを守るため、あるいはこの大切な仲間たちと明日を迎えるため。
夜が明ければ、また美有の様子を見に行こう。
健人は上着のポケットから冷たい銃を取り出し、その感触を確かめながら、新しく動き始めた自分の運命の歯車を、ただじっと見つめていた。
翌朝、夜明けとともに健人は再び病院へと向かった。
アジトで数時間の仮眠を取ったものの、頭は冴え渡っていた。
まだ美有の意識が戻ったという連絡はない。
油断できない状況であることに変わりはなかったが、どうしても彼女のそばにいたかった。
特別な集中治療室(ICU)のフロアに上がると、まだ人の少ない廊下のベンチに、一人の女性がぐったりと座り込んでいるのが見えた。
美有に少し似た、少し大人びた面持ちの女性。
親戚かつ義理の姉である、美晴だった。
美有を育てた親戚のおばさんの娘。
健人が近づく足音に気づき、美晴がゆっくりと顔を上げた。
赤く腫れた目が健人の姿を捉えた瞬間、彼女の瞳に大きな驚きが走った。
「……嘘、健人君……? 健人君なの……!?」
美晴は勢いよく立ち上がり、健人のもとへ駆け寄った。
「美晴さん」




